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サマーセールに思う

  • 2010年09月03日(金) 11時00分
 気の早い話だが、1歳馬の話。サマーセールを見に行ってきた。

 といっても月曜日だけで、しかも雨にたたられてそれほどじっくり馬は見られなかった。ネットで指標を見ている人とそう立場に変わりはない。

 私が居た初日はとてつもない雨が降ったこともありセリ場は不景気ムードだったのだが、最終的には指標も整い、平均価格は別として、全体としては活況だったというような形で報じられるセールとなった。

 しかしセリ場の感触としては、景気の回復を感じるというムードではない。賞典費というパイが中央・地方とも小さくなっていく中で、馬だけが売れるというのはなかなか無理な話である。

 それでも一見指標が整って見えるのは、JRAの仕入れ(ブリーズアップセール用)やビッグレッドファームといった不変の部分があるほか、ピンフッカーの仕入れがあるぶん10年前20年前よりは多少なりとも売却率が整いやすい面もあるからではないかと思う。

 あるいは、売却率30〜40%ゾーンというのはこれ以上下にはなりようが無い底のようなもので、南関東がつぶれでもしない限り結局はこのあたりに落ち着くものなのかもしれない。

 それはともかく、POGファンがセリ結果を見る場合の話をひとつ。超活況とは言えないセールの結果を見る場合、たまたま2人以上の手が上がった馬と一声で落ちた馬で、見た目の差が出来過ぎてしまうということを意識して見たほうがよいと思う。

 お台価格がすべて分かっていればそれと落札価格を比べればいいわけだが、ファンの皆さんにそれは無理。ただ、値段からお台一発、あるいはそれに近いところで落ちた馬というのは類推できるだろう。

 JRAはわりと見え見えのところを競るし、BRFも通路などで競るわりには「あーこれ、片方BRFだな〜」とセリ中に分かるシーンが多いように思う。どちらも競り合いを経て落札することが多く、数字としては高いものが出てきがちだ。

 一方で鑑定人の松橋さんが「うーん」と言いつつ指をああだこうだして客と交渉した結果お台一発、あるいは値切られたところの一声で落ちたような馬は、セリ結果の見た目には安くてたいした馬ではないかのようにも見えてしまう。しかし実際には、競り合いを経た馬と極端な素質の差があるわけではない。

 もちろん、サマーセールで500万円くらいの馬をPOGで指名する機会はそう多くはないだろう。少なくともプロフィールの字面で取ることはないはずだ。

 しかし、育成場で動いているなど、他の付加価値が付いてそちらから候補馬に入ってくることはある。その際に、「所詮350万の馬だしな〜」などと考えてはいけないということだ。

 活況でないセリほど、売り手にとっては天国と地獄の差が大きくなりやすい。俯瞰する身からしたら、それぞれの価格を忘れて平等に検討することが大切だ。

筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。

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