母馬の年齢と産駒の成績、というのはよく話題になるテーマだ。
高齢牝馬の仔を避けるというPOGファンは多いことだろう。確かに、ちょっと考えてみても高齢牝馬にはデメリットがある。母馬が放牧地で動かないと、初期育成の段階で運動量が不足することになる。出産前や授乳において、母馬から摂取できる栄養の面でもマイナスはありそうだ。
では、実際にどのくらい影響があるのだろうか? 特に、POGという観点での差異はどれくらいなのだろうか?
既にPOG上の評価が確定している3〜7歳の5世代において見てみよう。
まずは母が高齢の側から。なにをもって高齢とするかという問題はあるが、JRA-VANデータのある5世代24460頭(カク外除く)のうち、母が18歳時以上の産駒ということで括ると全体の約6%(1488頭)になるので、そこで線を引いてみる。
3歳春競馬までの成績でいうと、
勝馬率18.4%(地方の未勝利交流は含まず)
1頭あたり賞金:312万円
1走あたり賞金:70万円
重賞勝ち馬:2頭・3勝
お分かりとは思うが、重賞勝ち2頭のうち1頭は
アンライバルド。もう1頭は
ピンクカメオだった。
一方、母が若いほうから5〜6%をとって、同様に調べてみよう。
同じく春競馬までの成績では、
勝馬率24.4%(地方の未勝利交流含まず)
1頭あたり賞金:448万円
1走あたり賞金:95万円
重賞勝ち馬:11頭・16勝
ご覧いただいて分かるように、明らかにパフォーマンスが違う。やはり母は若いほうがいいのだ。
……が、もうひとつ考慮しなくてはいけない問題がある。若い方の調査は1783頭(18歳以上組より少し多い)を対象にしているのだが、その母の年齢は実は「5歳以下」。それだけ母が若い馬のほうが絶対数が多いということである。
先述したように率の面でも「若い組」が有利なのでその結論自体はいいが、「活躍馬の数」といった数量ベースでみると、若いサイド(一般的には母7歳時産駒とかでも若いイメージだろう)が強く見えすぎるので、そこは気をつけないといけない。
もうひとつ、高齢繁殖牝馬の中には小牧場が手詰まりであることを分かりながら後生大事に抱えているようなケースなどもある(言葉が悪くてすみません)。2つのグループを比較するならば、なんらかの形で均質などうしにする必要があるので、より精細な検討をする必要もあるだろう。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。