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ハーツクライ産駒ブレイクの理由

  • 2010年10月22日(金) 11時00分
 もし、タイムマシンがあるのなら、今年の春先まで戻って、「ハーツクライ産駒がもの凄く走るって!」と赤本執筆中の自分に教えてあげたい。

 2歳戦が始まってから4開催の終了時点で、ディープインパクトと勝ち馬頭数を並べたハーツクライ。その後もハーツクライ産駒は勝ち鞍を延ばし続け、ファーストシーズンサイアーだけでなく、2歳サイアーランキングでも、3年連続で2歳サイアーランキングのトップを狙うキングカメハメハ、早くも重賞馬を送り出したジャングルポケットなどを押さえてトップに立っている。

 一方、ディープインパクトもファーストシーズンサイアー、2歳サイアーランキング共に2位に付けるなかなかのスタート。でも、ハーツクライの快進撃の前に、すっかり影が薄くなった印象を受けるのは否めない。

 ハーツクライ産駒がブレイクした理由の一つには、自身のコピーではない産駒を送り出している点にある。2歳馬の取材を通してのことだが、父を彷彿とさせるすらっとした伸びのある馬体をした産駒も見られた一方で、短距離馬のようなコロンとした馬体や、全く父を出していない詰まった馬体など、様々なハーツクライ産駒の姿を目にしてきた。この辺は小柄ながらバランスに秀でているという、自分のコピーのような産駒を多く送り出したディープインパクトとは対照的とも言える。

 しかし、産駒は自身のコピーではなかったからこそ、2歳戦の早い時期から活躍を見せた産駒や、芝1000mで勝ち鞍を挙げた産駒が現れたのだろう。和合性の高さという面では、近年のサンデーサイレンス系種牡馬の中でも特筆すべき能力を証明しつつあるハーツクライ。産駒の評判も相成って、今年は繋養以来最多となる、211頭の繁殖牝馬に配合を行っている。

 一方、ディープインパクト産駒だが、直線の長い東京や京都コースに替わったことで、メイクデビューだけでなく、そのメイクデビューを取りこぼしていたような馬たちも続々と未勝利を勝ち上がってきた。そしてこれからはビワハイジの産駒であるトーセンレーヴ(牡2、池江寿)や、エアデジャヴーの産駒であるエアジョイント(牡2、伊藤正)といった話題馬たちもデビューを控えている。

 トーセンレーヴは夏にノーザンファーム早来牧場で調整されている姿を取材してきたが、春先よりもしっかりした馬体をしており、動きや軽さに加えて力強さも現れていた。騎乗しているスタッフも動きの良さを絶賛していただけに、実際にレースをする姿が見られるというのは、成長過程を追ってきた者としても楽しみでならない。

 またエアジョイントも、管理をしてきた社台ファームのスタッフから「厩舎に送り出す前は、動きだけでなく、成長力も2歳馬離れしていました」との声が聞かれていた。

 期待を上回る活躍を残したハーツクライ産駒とは対照的に、ディープインパクトの産駒は、父のイメージや母系を含めたその血統背景と共に「期待通り」の活躍が求められている。

 それは現役時のディープインパクトを彷彿とさせる産駒ということにもなるのだろうが、ディープインパクトは2歳の12月にデビューして、そこから日本最強馬へと上り詰めていった馬。父の系譜をなぞらえるなら、これからデビューする産駒たちも、本領を発揮するのはむしろこれからと言える。

 ハーツクライ産駒の好スタートは想像できなかった自分ではあるが、ディープインパクト産駒のブレークは、タイムマシンで未来まで確かめにいかなくとも大丈夫そうである。

筆者:村本浩平
 1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。

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