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種付料を眺めてみる

  • 2010年10月29日(金) 11時00分
 機会があって今年の種付料一覧をしみじみと眺めていたのだが、考えれば考えるほど、種牡馬の価値というのは評価が難しい。

 いや、別に我々は自分で種付けするわけではないので種付料の妥当性を考える必要はない。反対に、実際に種付けする人には、人間関係とかセール時に期待できるバリューだとか、近い血統の株を持っている・持っていないとか、さまざまな事情があるだろうから、こちらはこちらで価値=値段と解釈はできない。しかし、そういう問題を横に置いてもなお、種牡馬の評価のされ方、そしてそれに基づく産駒の評価のされ方には、不思議でトリッキーな部分があるように思う。

 たとえば、なぜ種牡馬はデビューした瞬間に種付料が高く、産駒デビューまで2年目、3年目と下がっていくのか?

 初年度が高いのは、初モノ→セリで高く売れるという合理的な理由がある。ただ、自分で走らせることを前提に馬主が手持ちの繁殖に種付けするという場合は、これにあてはまらない。

 2年目の種付け時は初年度産駒が当歳。3年目は1歳で、4年目は2歳だがまだ競走前。「走らせてみた結果が分からない」ということでは、初年度から4年目まで同じだ。

 よく言われるのが、「産駒のデキを見て評価が決まっていく」ということだ。ただそうすると、かなりの割合の種牡馬が1年目から4年目へと種付料を下げていくことの説明がつかない。

 さらに、「デキの評価」というものがだいぶあやふやだ。最近の例でいうと、今をときめく(?)ゼンノロブロイの産駒は当歳的にはそれほど人気はなかった。セレクトセールでも高くなったのはペルーサエクストラセックくらい。2年目も当歳セッションで3000万円以上は全9頭中1頭だけ。1歳セッションでは13頭中2頭だけだった。

 反対に、デュランダルやダイワメジャーあたりは、初年度人気が盛り上がり、2年目にはなぜかそれが解消されてしまっていた。

 そもそも、2歳春の評判ですら結果に直結しないわけだから、「デキの評価」というものをどの程度ファクターとして取り入れてしまっていいのかも微妙だ。

 さらに最近は、初年度産駒よりも2年目産駒が走る傾向にあるので、さらにややこしい。産駒の出だしを見て背を向けると、しっぺ返しを受けることになる。

 もうひとつ考えなければならないのが、派手な当たりを出して評価された種牡馬の扱いだ。なにしろ派手な当たりというのは絶対数が少ないので、それがどの程度の必然性に基づくものなのかは分かりづらい。

 考えれば考えるほどややこしい話だが、「紙の馬主」として「もし種付けするなら≒POGで指名するなら」を考えるなら、評価が不当に下がっていった過程の、できれば下限で注目するのがいいということになる。そこに唯一の正解が存在するかどうかは分からないが、各年度の種付料を振り返ってみると、勉強になることが多い。

筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。

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