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上がり勝負の惜敗馬考察

  • 2010年11月12日(金) 11時00分
 ごく私的な話で恐縮だが、私が今年の赤本で○印とし、誌上ドラフトの結果おすすめ10頭にも入っていたカレンミロティック号が京都芝1800mの新馬戦でデビューし、4着だった。

 スローの前残りを後方から捲り、上がり最速という内容は見た目上悪くはない。レース前の専門紙を見るとシルシ的にはツルツルの無印状態だったので、ちょっと安堵したところでもある。

 しかし一方で、次走以降も似たような競馬、つまりスローを差し切れないようなことになるのではないかという不安も残る。1800mや2000mの2歳新馬・未勝利は上がり勝負になりやすいので、距離が欲しいものの上がり勝負は嫌という馬(血統的にキレが無いか、気性的に後ろからの競馬になりやすい馬)にとってはなかなか厄介だ。

 そこで今回は、こんな調査をしてみた。上がり勝負というものの定義は定かでないが、芝1800〜2000mで行われた2歳新馬戦のうち、良馬場でレースの上がりが34秒台までに収まっていたレースを対象とし、勝ち馬の傾向と、「いい内容に見える負け馬」のその後を観察するのである。

 該当レースは先週までの時点で118レース。やはりというか、サンデーサイレンス直仔の13勝を筆頭に、種牡馬別着度数ランキングベスト10のうち9頭をSS系が占めている。残り1頭は意外なことにシンボリクリスエスなのだが、同馬産駒4勝のうち3勝までが新潟でのもの。中央場所では東京で1勝しているのみである。

 では、そのレースで負けた馬の次走はどんなことになっているだろうか?

 まず単純に2着だった馬の次走を見ると、[41-19-10-36]で勝率は37.6%。単回収率が89%だから、ファンの見た目以上に勝ち上がっていることになる。ちなみに次走を芝に限定すると単回収率は91%なのでなおさらだ。

 このデビュー戦2着馬たちは2走目のペースに関わらず次走勝ちのパーセンテージが安定しているので、ペースうんぬん以上に単純に「順番が回る」ということになっているように思える。

 続いて、冒頭で触れたカレンミロティックのように、上がり最速をマークしつつも連対できなかった馬はどうだろうか? 後方から差を詰めただけの馬を排除するため、デビュー戦の内容を「上がり最速+3〜5着」に限定すると、該当馬は28頭で、うち既に2走目を消化している馬は26頭だ。

 その2走目は[8-4-2-12]で勝率は30.8%。さきほどのデビュー戦2着馬よりは低い勝率だが、回収率は単116%・複95%と高い。馬券で買うには面白い存在ということになる。

 比較対象として、「上がり最速ではなかった3〜5着馬の2走目」について見てみると、[41-39-36-186]で勝率13.6%。やはり同じ3〜5着であっても、上がり最速であることには価値があるようだ。ちなみにこの「上がり最速ではない3〜5着馬」の2走めはダートに限ると[7-5-2-17]で勝率22.6%。芝ダート合算の13.6%よりだいぶ高い(芝のみは12.5%)。決め手不足で3〜5着という馬は、よりパワー重視・持続力重視の条件を求めたほうが良いということになる。

 「上がり最速か否か」の違いがデビュー戦(既に忘れかけているかもしれないが、上がり勝負になった芝1800〜2000m限定)の3〜5着馬について明確な違いを示したので、もう一度同じ条件の新馬で2着だった馬に戻って、2戦目を見てみよう。

 全2着馬の次走が勝率37.6%であることは、既に記した通り。そのうちデビュー戦で「上がり最速かつ2着」だった馬の次走は[14-5-2-11]で勝率43.8%(単回収率99%)。「上がり最速ではない2着」だった馬の次走は[27-14-8-28]で勝率35.1%(単回収率85%)。ここでも上がり最速であったかどうかで、次走の成績が回収率まで含めて分かれている。

 長くなったが、いずれにしても上がり勝負だった芝中距離新馬の「上がりは速かったんだけどねえ」という馬は、2走目で評価してよいということが言えそうだ。

 ちなみに今年の2歳馬で、「芝1800〜2000m・上がり34.9秒以下の良馬場だった新馬戦で上がり最速&2〜5着」という結果からまだ2走目を消化していないのはカレンミロティックのほかにブルースビスティーがいる。2走目を既に消化したのは6頭で、その結果は[3-2-0-1]とやはり安定している。

筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。

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