今季ヨーロッパで行われる最初のメジャーなイヤリングセール、エージェンシーフランセーズ・オーガストセールが、17日から21日までフランスのリゾート地ドーヴィルで開催された。
このコラムでもお伝えしてきた通り、アメリカにおけるマーケットが、7月のジュライも8月のサラトガも大暴落。市場の下落傾向はアメリカに限ったものなのか、あるいは世界的に波及するものなのか、その動向がおおいに注目されていたのが、ドーヴィルの市場だった。
結論から言うと、競馬関係者にとって冬の時代が到来したことを改めて認識させられる、厳しいものとなった。総売り上げ2,670万ユーロは、前年比26%ダウン。平均価格72,557ユーロは前年比29%ダウン。前年24.7%だったバイバックレートが、今年は33.7%と、すべての指標が大きく後退した。
唯一の明るい材料は、初日に登場した父インディアンリッジ、母マキシモーヴァの牝馬が、200万ユーロというドーヴィルセール歴代最高価格で購買されたこと。母がG1サラマンドル賞勝馬で、兄にG1ラフォレ賞勝馬セティエームシェル、姉にG1マルセルブーサック賞勝馬マクーンバがいるという超良血馬で、最終的にはマクトゥーム・アル・マクトゥーム殿下のゲインズボロウ・スタッドが購買した。
ただし市場の構造的に言うと、この1頭は極端な例外。指標を下げた最大の要因は、キーンランド・ジュライやファシグティプトン・サラトガの時と全く同様に、トップエンドのマーケットが脆弱だったことだ。特にここフランスでは、シェイク・モハメド殿下の購買が全くなく、クールモア・スタッドの購買もわずか2頭と、本来ならば高馬を巡って熾烈なさや当てを繰り返す『ビッグ2』が極端に買い控えたため、高馬を買う人がほとんど居なくなってしまったのである。
それでも、市場の下落がジュライやサラトガよりは小幅に終わったのは、中間層より下の価格帯が堅調だったためだ。
つまりは、馬を持って楽しもうという人の数はそれほど大きく減っているわけではなく、ただし、馬を仕入れる時は夢の実現を期待するような投機的購買を行うのではなく、ある程度現実的な予算の範囲内で仕入れを行い、そこそこの馬を持って競馬を楽しむという、地に足が付いたスタイルに変わってきたと見るべきなのだろう。
そんな中、日本人によると見られる購買は5頭。市場5番目の高値となる50万ユーロで購買された、父スウェイン、母チャンシースクワウ、兄アグネスデジタルという牡馬が、日本人によると見られる購買馬の中では最高値であった。