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朝日杯FSをPOG的に観測する

  • 2010年12月17日(金) 11時00分
 今年のGI阪神JFを優勝したのは、圧倒的な一番人気に支持されたレーヴディソール。この春、取材で訪れたノーザンファーム早来牧場の育成スタッフから、「ディープインパクト産駒に注目が集まっていますが、調教の動きではひけを取らないどころか、それ以上かもしれません」との言葉が現実となった。

 母レーヴドスカーは持ち込み馬となったナイアガラを皮切りに、これまで誕生させた産駒が全て中央競馬で勝ち上がっている。その事実だけでも凄いのだが、GII青葉賞を勝利したアプレザンレーヴ、今年のきさらぎ賞で2着に入り、牡馬三冠クラシックの全てに出走したレーヴドリアンと、クラシックに属した活躍馬も送り出している。

 兄弟に共通した武器となっているのはGI級と呼ぶにふさわしい豪快な末脚。だが、後方一気の脚質ゆえに前を捕らえきれないレースも多く、牧場での高い評価とは対照的に、重賞勝利を挙げたのはアプレザンレーヴだけとなっている。

 また、アプレザンレーヴは故障で引退を余儀なくされ、レーヴダムール、レーヴドリアン共に現役時に病気で亡くなるなど、不運が続いていたことも、この血統とGIタイトルを遠ざけていた一因となっていた。そう思うと、レーヴダムールが2着となっていた阪神JF制覇は、姉の無念を晴らしただけでなく、この血統にとって悲願のGI制覇ともなった。

 早くも来年の牝馬クラシック三冠制覇の期待がかかるレーヴディソールであるが、阪神JFのレースを見る限り、その可能性は充分にあると言える。

 兄弟譲りの末脚は勿論のこと、父アグネスタキオン譲りのひたむきさもあるのか、鞍上の仕掛けにすっと動ける反応の良さも兼ね備えている。距離は延びた方が更に末脚が爆発しそうだし、レースを使うたびに凄みが増している成長力も加味されてくれば、厩舎の先輩であるブエナビスタ級の馬ともなりそうだ。

 ちなみにレーヴディソールもブエナビスタも、同じ松田博資厩舎所属というだけでなく、ノーザンファーム早来牧場における育成厩舎も一緒。来年の秋に、同じくノーザンファームの生産馬で、今年の三冠牝馬アパパネも交えた3頭の直接対決が是非とも見てみたい。

 今週はGI朝日杯FS。現在の出走予定馬で人気を集めそうなのは、フジキセキ産駒の2頭、GIII東京スポーツ杯2歳Sの勝ち馬サダムパテックと、GIIデイリー杯2歳Sでレーヴディソールと差のない競馬をしたアドマイヤサガスとなっている。

 しかし、POGファン的には、JRAにおける2歳新種牡馬の勝ち馬頭数記録を更新したディープインパクト産駒のリアルインパクトリベルタス、そして東京スポーツ杯2歳Sで、勝ったサダムパテックの2着に入ったハーツクライ産駒のリフトザウイングスが、どんなレースを見せてくれるかが非常に気になるところでもある。

 阪神JFでもオースミマイカ、リトルダーリンの2頭の産駒を送り出したディープインパクトであるが、今回は2頭共に上位人気も望めるほどの高い評価を集めている。マイル適性という点においてはフジキセキ産駒に分がありそうだが、2歳戦から新記録となるほどの産駒が勝ち上がれたというのは、やはり父が持つ資質の高さが、万能な産駒を送り出しているとしか言いようがない。

 まだ、2勝目を挙げている産駒が少ないのを気にする声も聞かれているが、そもそもディープインパクト自身が衝撃のデビューを飾ったのが04年の12月19日。今年、同じ日に行われる朝日杯FSに産駒が出走を予定しているのだから(笑)、むしろ既に勝ち上がった産駒たちに対して、「君たちは父を超えた!」と褒め称えなければいけないだろう(笑)。

 POGの取材で牧場スタッフから高い評価を集めていたのは、先述のリベルタスやリフトザウイングス、そしてマイネルラクリママジカルポケットである。特にマジカルポケットは熱発があり、予定されていたレースを使えなかったということで評価を落とした感もあるが、元々、育成を任されていた坂東牧場では、「マイル向きのスピードを持った馬」との声も聞かれていた。

 4か月ぶりの実戦といえども、GIII函館2歳Sより距離が延びた今回は、条件的に競馬もしやすいはず。ちなみに朝日杯FSに登録こそあるものの、GIIIラジオNIKKEI杯2歳Sへの出走が濃厚とされているディープインパクト産駒のダノンバラードも、同じく坂東牧場の育成馬である。

 育成時に優れた資質を持った馬同士が鍛え合うことで、全体のレベルが著しく上がるということは、ディープインパクトがいた世代のノーザンファームや、00年の牡馬三冠をエアシャカールとアグネスフライトで制し、今年も皐月賞をヴィクトワールピサで、日本ダービーをエイシンフラッシュで勝利した社台ファームが証明している。

 もし、朝日杯FSでマジカルポケットが勝利したとするなら、ダノンバラードもラジオNIKKEI杯では、来年のクラシック制覇を期待させるような、GI級の走りを見せてくれるのではと今から夢が膨らむ。

筆者:村本浩平
 1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。

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