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復活の秋

  • 2002年09月23日(月) 12時26分
 18日船橋「日本テレビ盃」。マキバスナイパーが文句なしの強さで勝った。好スタート。道中逃げるキングリファールの2番手でしびれるような手応え。直線並ぶところなく先頭に立ち、最後までしっかり伸びた。1800m1分49秒6はレースレコード。雨上がり、軽い馬場にせよこれは平成10年アブクマポーロ(重1分50秒9)を現実に大きく凌ぐ。強い馬の強い勝ち方。ごく素直に客観的にみて、今日の内容は手放しで賞賛できる。昨年の帝王賞馬、そしてJBCクラシック2着馬。7歳にして復活の秋ということ。帝王賞、マーキュリーC、みちのく大賞典のふがいなさが頭によぎり、筆者は今回ノーマーク。「もうはまだ…」。古くからいわれてきた競馬格言が身にしみる。なんともいただけない予想になってしまった。

日本テレビ盃(サラ3歳上、別定、統一G2、1800m不良)

 (1)マキバスナイパー   (57・左海)  1分49秒6
◎(2)レイズスズラン    (56・江田照) 1
△(3)キングリファール   (56・佐藤隆) 1.1/2
△(4)ノムラリューオー   (54・石崎隆) 5
 (5)ミツアキサイレンス  (57・川原)  1/2
……………………………………………………………
△(6)タマモストロング   (55・小池)
▲(9)ブリリアントロード  (55・山田和)
○(10)ノボトゥルー    (57・武豊)

 「状態がつかめなかったので正直びっくり…。終わってみれば底力なんでしょう」と左海騎手。一見下り坂の年齢、レースぶりにみえながら、そこから再び巻き返すしたたかさ。ダートの名馬、思えば地方の名馬とは、今も昔もやはりそんなタイプが多い。スナイパーはこれで11月4日、盛岡JBCクラシックの出走権確保。状態しだいでその前10月14日南部杯を使う可能性もある。本来がパワー優先。直線坂をしつらえたコースにも、十分な適性がイメージできる。

 レイズスズランは浦和コースほど前半スムーズに動けず、それでも直線外に持ち出して鋭く伸びた。時計を考えても立派の一語。「よく頑張ってくれました。お疲れさま」と江田照騎手。すでに8歳、平場でスランプに陥り、一時は障害戦を走ったキャリアもある。一種不思議な名馬だったといえるだろう。これでいよいよ引退。過去形にするのが正直惜しい。

 キングリファールの3着も健闘。パドックでは前走大井と同様芝の部分を歩かせるなど落ち着かせるように努め、結果この馬なりに折り合いがついていた。統一G制覇のレベルにももう一歩で到達だろう。ノムラリューオーは好位のまま4着だが、古馬初挑戦とすると合格点。ただしこちらはすでにJRA移籍が決定済みで、レイズスズランと入れ替わりに美浦・増沢末夫厩舎へ入厩する。個人的には一度芝コースのレースもみたい。1番人気ノボトゥルーは中団からジリ下がり。馬そのものはまずまずの仕上がりとみえ、位置取りも悪くなかった。ほぼノーコメントで引き上げた鞍上。今のところ久々としか敗因が説明できず、次走への展望も白紙になった。

    ☆    ☆    ☆

トゥィンクルレディー賞(16日大井、サラ3歳上牝馬、ハンデ、1590m重)

◎(1)ラヴァリーフリッグ  (56・石崎隆) 1分39秒6
▲(2)カ コ        (55・今野)  1.1/2
△(3)メイプルベガ     (56・金子)  2
△(4)ドリームサラ     (53・的場文) 1
△(5)コンサートクィーン  (53・内田博) 2
………………………………………………………
○(6)カーディアンゴット  (56・佐藤隆)
△(7)アインアイン     (56.5・市村)

単180円 馬複1670円 馬単1960円
3連複5710円  3連単20320円

 ラヴァリーフリッグの完勝だった。道中好位のインをロスなく進み、直線内ラチ沿いを抜け出す絵に描いたような石崎流。4キロ増、「少し重かった。反応がもうひとつ」とは本人のコメントだが、水沢でひまわり賞(東日本交流)を勝ってきて中3週。カイ食いなども含め、それだけ馬に活力が満ちていたということだろう。1000m通過61秒8とやや速めの流れを、自身上がり38秒4。1590m、1分39秒6の時計も十分水準に達している。昨暮れ大井転入後、これで南関東重賞4勝。関東オークス2100mだけ3着に敗れたが、勝ち馬サクラヴィクトリア、2着スターオブブリッジのその後をみれば、けっして実績にキズもつくまい。父マーベラスサンデー、大跳びの走法はむしろ中〜長距離向きの感触。前へ前への気性がいい意味で枯れてくれば、さらに展望、選択肢も広がりそうだ。3歳世代、今年はいつになく牝馬のレベルが高い。

 好位の外めで流れに乗ったカコが2着。これまでどことなく非力なイメージがあったが、さすがに昇り調子で強いカコイーシーズ産駒。はっきりひと皮むけている。逆に大外を伸びかかって3着メイプルベガは、依然もうひとつふっきれない。2番人気ドリームサラは手応えのわりに追って切れ味を欠いた。本質的にマイルの忙しい競馬は合わないか。カーディアンゴットは道中モタモタした行きっぷりで右回りに課題を残した。

    ☆    ☆    ☆

 9月25日大井「東京盃」は、“核”の見当たらないメンバーになった。サウスヴィグラスは11月4日盛岡「JBCスプリント」に直行を決め、ノボジャックも出走態勢が整わなかった。地方側も、かつてのカガヤキローマン、ベラミロード級のスプリンターは不在で、本来条件ベストのはずのフレアリングマズルが休養している。ひとまず低レベルが前提だろう。いわく「ナンデモアリ」状況。むろん逆に馬券は面白い。

東京盃(サラ3歳上、別定、統一G2、1190m)

◎ブラウンシャトレー (安部)
○コアレスフィールド (張田)
▲ティエッチグレース (田中勝)
△フジノテンビー   (佐藤隆)
△ハタノアドニス   (桑島)
△サンフォードシチー (福永祐)
△アインアイン    (市村)
 アッミラーレ    (二本柳)
 イエローパワー
 タマモスオード   (武豊)
 カイジンクン    (森下)

 近況から人気になりそうなティエッチグレース。父カポウティの外国産馬で[6-2-2-8]の戦績は確かに立派。前走時計のかかる新潟1200m1分11秒5圧勝も評価できる。ただし例年の傾向から、このタイプは大井のダートが合うかどうかで結果一変。行ききれない場合は大敗があって不思議ない。G1実績があるサンフォードシチーも、やはり福永祐一の手綱さばきが頼りだろう。短距離ベターかどうかがまず微妙。強敵相手にせよ現状はちぐはぐなレースが続いている。

 ブラウンシャトレー◎は、前走さきたま杯が不完全燃焼とみてのもの。スタートでトモを滑らせエンジンかかったのは直線だけ。窮屈なインを伸びて3着なら内容は悪くない。大井はJDダービー、JBCクラシックの11、9着だが、折り合い不問の短距離なら変わってくる余地がある。ゴール前、横一線のサバイバルを差すイメージ。やや太めの馬体も今回きっちり絞れるはずだ。

 コアレスフィールドは船橋1000m58秒9のレコードホルダーで本質的にスプリンター。前々走サンタアニタTでベルモントアクターと好勝負をしている以上、8歳馬の衰えもないだろう。潜在スピード互角フジノテンビーは今回ノンプレッシャーで仕切り直し。JRA時サウスヴィグラス完封の星があるハタノアドニス、短距離ならイメージ以上にしぶといアインアイン。上昇馬カイジンクンがハナを切れるかどうかも興味深い。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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