レッドデイヴィスが毎日杯を勝ち、重賞連勝を達成した。
御存知の通り同馬はセン馬。しかもデビュー前に去勢されたという珍しいケースだ。
去勢については諸説あって、アメリカ人のように躊躇なく去勢してしまう文化もあれば、成長期の去勢はその後の成長を妨げるという説もある。
しかしいずれにしても日本ではセン馬自体がかなりの少数派であり、レッドデイヴィスの成功がPOG云々ではなく今後の日本競馬に変化をもたらす可能性もある。
そもそも、中央競馬にはどのくらいのセン馬が存在してきたのだろうか?
世代ごとに中央競馬における出走数を見てみると、1988年産まではひと世代あたり300出走以下だったが91年産で1054出走と4ケタになり、98年産からは1500出走以上に。2000年産の1870出走をピークにその後は数字が落ち着きつつあるが、いずれにしても昭和の時代よりはだいぶ増えているようだ。
重賞勝ち馬は障害も含めて平成以降で障害やカク外も含め47頭。中央在籍馬&平地に限定すると23頭。レガシーワールド、マーベラスクラウン、トウカイポイントがG1ホースとなっている。
以上が日本のセン馬事情だが、ここでふと考えた。深い理由がなくても去勢してしまう国と違って、日本で去勢に至るというのは(疾病でも無い限り)よほど気性に問題があるということだろう。
それだけ難しい馬をうまく調教し、結果を出している調教師は、それだけ腕があると言える……かもしれないという仮説を考えたのである。
話の導入に用いたレッドデイヴィスにしても、管理しているのはリーディングトレーナーの音無師。あながち的外れな仮説でもないように思う。
そこで、去勢後にレースに出走させた回数が50回以上ある調教師を対象に、1走あたり賞金の順位を調べてみた。
現役調教師に限ると、1位は白井師で470万円。以下、中村均師、藤沢和師、森師、音無師、加藤敬師、鶴留師、松田博師、西園師となる。
分母が50出走以上と小規模なので重賞級を出すと必然的に上位に食い込むことにもなっているが、それにしても、納得のいく顔触れなのではないだろうか。引退調教師も含めると、戸山為夫師が藤沢和師と森師の間に入ってきたりもする。
もちろん、馬というのは気性的にややこしくならずに済めばそれにこしたことはない。しかし、血統など先天的な要素からそうなってしまうこともあるだろう。
その状況において、去勢するという判断そのものや、その後の扱いにおいては調教師・厩舎の力量が結果に対して影響してくる。そう考えると、先述した調査結果はなかなか興味深い。
POGではまさか「セン馬になりそうな馬狙い」をすることは無いだろうが、仮に困難な状況になっても打開策を見つけてくれる厩舎を探す作業において、セン馬の動向に注目してみるのも面白いことだと思う。
※次回は4月15日(金)の更新となります。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。