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週刊サラブレッドレーシングポスト

  • 2002年10月07日(月) 13時17分
 7月のキーンランド・ジュライにはじまったイヤリングマーケットの縮小は世界的傾向で、ことにトップエンドのマーケットは極端な弱含みだから、ここも苦戦は免れないだろう。欧州最高の1歳馬市場『タタソールス・ホウトンセール』を睨んだ市場関係者の観測は、一様に悲観的なものだった。

 ところが、10月2・3日の両日に渡って英国のニューマーケットで行われた市場の結果は、総売り上げがほぼ前年並みの2822万ギニー、平均価格が前年比3.5%アップの227,580ギニー、中間価格が前年比3.2%アップの160,000ギニーと、大方の予想を覆す好況となった。主取り率が前年(21.6%)をわずかに上回る24.3%を記録したことから、必ずしもヘルシーな市場と言うわけではなかったが、現在の経済状況下では、思いもかけぬ好結果であったと言えよう。

 活況を招いた一番に理由は、8月7日付けの当コラムでも触れさせていただいたように、多くの関係者が「過去最高」と口を揃えたカタログの優秀性にあろう。また、7月の「キーンランド・ジュライ」が『血統のレベルに比べて、馬体面の出来が今一息』と言われたのに対し、ここでは血統に見合うゴージャスな馬体をした上場馬が多く、購買者側も大きな投資に充分値する市場と見たようだ。

 そんなわけで、北米の市場では買い控えが目立ったクールモア・クループもマクトゥーム・ファミリーも、ここでは例年同様の購買を展開。極上品を巡る熾烈な争いが随所で展開された。

 最高価格は、初日の終盤に登場した上場番号88番、父サドラーズウェルズ、母シャラタの牝馬。クールモアの代理人デミ・オバーン氏が210万ギニー(約4億2000万円)で購買したが、この価格はこれまでの記録を18年振りに破る1歳牝馬のヨーロピアンレコードだった。

 100万ギニー超えは2日目にも1頭出現。上場番号178番の父サドラーズウェルズ、母ダズリングパークの牝馬で、110万ギニーでシェイク・ハムダン殿下のシャドウェル・スタッドが購買した。上位2頭がともに牝馬で、『投機的購買をするなら、仮に競走成績が上がらなくとも、一流種牡馬を付けて売れば元が取れる超良血牝馬』という傾向だけは、アメリカのものを引き継いだようだ。

 そんな中、日本人によると見られる購買は3頭(平均価格13万5千ギニー)と、質量ともに前年(2頭を平均5万2500ギニー)を上回った。

 いかにもヨーロピアンタイプの個体をしているのが,上場番号18番の父レインボウクエストの牡馬。外国産馬初の日本ダービー制覇を狙いたくなる大物だ。

 日本競馬への適性が最も高そうなのが、上場番号156番の父ストラヴィンスキーの牝馬。兄に欧州マイル戦線で活躍したアルカディアンヒーロー、従兄弟に種牡馬として大成功しているヘネシーがいる良血馬だ。

 馬体面での評価が最も高いのが、上場番号192番の父セルカークの牡馬。ファーリーの肌にセルカークと、あまり日本では見られない配合で、どんなタイプに成長するか興味深い1頭である。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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