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第36回浦河競馬祭

  • 2002年10月07日(月) 16時35分
 去る10月6日(日)、JRA日高育成牧場にある一周1600mダートコースを使って、伝統の浦河競馬祭が開催された。

 これは、新冠の「駒まつり」と同様、馬産地の代表的な草競馬で、この日集まった出走馬は全部で61頭。そのうちの半数が軽種馬である。プログラムに添えられた「出走馬名簿」によれば、現役時の競走名が明らかにされている馬も10頭ほどいて、中には「ワカサバロン」や「シグナスヒーロー」「カリスマサンゴッド」「ゼネラリスト」などという名前もあった。とりわけ、ゼネラリストは、すでに種牡馬になっているはずだが、10歳になった今も馬体が若々しく元気一杯で脚元の不安もないのだろう。新冠(駒まつり、9月29日)からの“連闘”でここに出走してきた。

 1日でこなすレース数は14。草競馬では予選と決勝の1日2レース出走が普通である。軽種馬はサラアラ混合で予選を実施し、それぞれの着順に応じて午後の決勝レース(シンザングランプリ、楽古岳特別、天馬街道記念に駒を進める。

 この日は薄曇りながら、深まりゆく北海道の秋にしては珍しいほどの温暖で風のない気候で、観客も例年よりかなり多い様子だった。一般の観客向けには、午後の決勝レース(2レース)の優勝馬を当てる勝ち馬投票券が(プログラムに印刷済みの馬券に氏名住所を記入)用意されており、その他のアトラクションもなかなか盛り沢山で1日中楽しめるようになっている。

 その中でも主催者が最近特に力を入れているのは「競馬グッズチャリティーオークション」。今年の最大の目玉は「タニノギムレット勝負服、武豊サイン入り」というものだった。例年、様々な競馬グッズが大量に登場するとあって、私の個人的な知人友人もこれを目当てに浦河まではるばる足を運ぶ人が多い。昨年は、遠く高知県からやってきたNさんというコレクターもいたほどだ。

 今年はタニノギムレットの勝負服が超大物で、後はやや小粒のグッズが多かったものの、しかし、アドマイヤコジーンのジャンパーやショウナンカンプの時計、そして、数々のテレカやクオカードなどが競りにかけられた。私も、友人のテレカコレクターS氏(東京都渋谷区在住)の依頼でテレカを数点落札した。

 さて何と言ってもオークションが最も盛り上がったのは勝負服がいよいよ競りに登場した時だ。このタニノギムレットの勝負服を入手しようと、100キロ離れたM町から参加してきたAさんは、毎年ここで顔を合わせるコレクターである。異様なムードで始まった競りは5000円刻みでどんどん価格が上昇し、ついに7万円を超え、最後はこのAさんの手に7万7000円で落札された。

 「予算は10万円用意していた」と言うAさんだが、4万円あたりからは50歳程度と思しきライバルの男性との一騎打ちとなり、結果的に割高の買い物になったように思う。とはいえ、Aさんはいささかの後悔もないと見え、「来た甲斐がありました」と、満足そうに帰って行った。

 新冠の「駒まつり」もそうだが、元々は「俺の馬とお前の馬のどっちが速いか一度競ってみようか」という貴族の遊びから始まったのが競馬である。その意味では馬産地で日々育成馬に騎乗している多くの人々が日頃の腕を競い合うために馬を用意して集まってきたのがこの地域の草競馬の発祥であり、それはもしかしたら、最も競馬の“原点”に近いものなのかも知れない。

 全国各地で伝統を守ってたくさんの草競馬が行われていることだろう。不勉強なのでその詳しい分布が分からないのだが、それらを目当てに旅行に出かけるのも一興だと思う。日高の草競馬へもぜひどうぞ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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