まだ3歳三冠の第一弾が終わったばかりだが、赤本の校正作業も佳境であり、いよいよ現2歳世代を強く意識するタイミングになってきた。
そしてこの2歳世代、ひとつの問題……といっても私が勝手に唱えているだけだが……がある。それは、「シンボリクリスエス×サンデーサイレンス問題」だ。
現2歳世代が種付けされた2008年に意識を戻して非SS系種牡馬の当時を振り返ってみよう。
キングカメハメハは初年度産駒のデビュー直前で、まだ評価が定まっていなかった。
タニノギムレットとジャングルポケットは種牡馬としてはそれより2世代分先輩で、活躍馬を出してはいたが天下取りというほどのムードではなかった。
その間に位置したのがシンボリクリスエス。2008年春時点では初年度産駒が3歳春。6月末時点で48頭が62勝をあげ、活躍馬としてはサクセスブロッケンやソーマジックを輩出。飛びぬけていい成績というわけでなくても、イケる、という感じではあった。
いずれにしてもサンデーサイレンス牝馬が繁殖界に増え続けていった当時、非SS系の一流種牡馬が求められていたことは間違いない。結果として、現2歳世代についてはやたらとサンデーサイレンス牝馬にシンボリクリスエスが配合され、この配合の産駒頭数は83頭に及んでいる。
これは本世代のスペシャルウィーク産駒全体よりも多い数字。ちなみに83頭中、社台ファーム産が28頭、ノーザンファーム産駒が23頭、追分ファーム産が3頭、白老ファーム産駒が5頭と、59頭が社台グループ生産馬だ。
ところが、である。現時点までにシンボリクリスエス×サンデーサイレンスはのべ106頭が中央で走って、超のつく大物はサクセスブロッケンだけ。賞金ベースでは2位がウインペンタゴンでこれもダート馬。中央で5000万円以上を稼いだ馬は6頭だけだ。
シンボリクリスエス×サンデーサイレンスの1走あたり賞金は150万円で、これはシンボリクリスエス産駒全体の157万円をわずかに下回る。いまの日本では上質なグループに入るであろうサンデーサイレンス牝馬を相手にこの成績は正直いただけない。
これだけだと単にシンボリクリスエスを非難しているようだが、今年の2歳世代についてはそんな単純な話ではない。
まず、配合相手がさらに豪華になっている。G1牝馬や重賞勝ち馬の母がごろごろいる。さらに、馬のデキそのものは立派な馬が多い。産地馬体検査でも、見栄えにひかれて血統を見たらこの配合、というケースが多かった。
良いのか悪いのかはっきりしていれば苦労はないのだが、その間で悩まされる状況なのである。
※次回は5月13日(金)の更新となります。
筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「
回収率向上大作戦」も担当している。