スマートフォン版へ

矢作芳人調教師「即答!10の質問」

  • 2011年05月02日(月) 12時00分
◆矢作芳人
1961年3月20日生まれ、東京都出身。開成高校を卒業後、父の猛反対を押し切って競馬の世界へ。オーストラリアの厩舎や牧場で修行し、05年に栗東で開業。10年、グランプリボスの朝日杯FSでGI初制覇。11年4月10日、JRA史上最速で通算200勝を達成。著書に『開成調教師』(白夜書房新書)がある。




◆「即答!10の質問」
皆様の質問にお答え!

Q1.矢作先生、200勝達成おめでとうございました。この中で一番思い出深い一勝はなんですか?

 選ぶのは難しいですね…本当に。ショーストッパーという思い出の馬がいるんです。その特別勝ちですかね(高瀬川特別)。厩舎を開業して初めての特別勝ちです。

Q2.馬の癖や特徴のつかみ方を教えてください。

 ん〜、これも難しいな。基本的に俺はスタッフに任せているのでね。

 学習と経験ですね。自分で血統を学んだり、牧場時代から馬を見てきているのもありますし。

 あとは勘。勘はありますよ。適性という面に関してはですね。ただ、経験に基づいた勘だと思います。それは俺の行動全てでセオリーと言いますか。そういう勘は、意外と当たりますね。

Q3.ヘニーハウンドは、ファルコンSは厳しいかなと思っていたのですが、あっさり勝たれてしまいました(笑)。基本的な質問ですが、ヘニーハウンドのような外国馬は、日本馬と何か違うものですか?

 基本的には違わないと思いますね。まあ、素質という面に関しては、走る素質を秘めていると思って買ってくるわけですけれども、日本産馬だからどうこうということはないと思います。

Q4.グランプリボス、ヘニーハウンド、今年の3歳マイル路線は矢作厩舎が熱い。このように厩舎から複数出走させる場合、ペースや位置取りなど協力し合うみたいなことってあるんですか? 外国はそういうことがあると聞いたことがあります。

 それは一切ないです。そこはライバルです。

Q5.矢作先生と言ったら、頭のキレる先生というイメージが強いです。逆に、「こういう部下には目をかけたい」というポイントはありますか?

 熱い人間ですね。気持ちだと思います。向上心っていうのかな、「勝つ」という強い意思、そういうものに対する熱さが大事だと思っています。

 最近は熱くない若い人が多いですからね。勝手に自分の限界を決めたりして。うちのスタッフは、基本は熱いですよ。ただ、それでもまだまだ物足りないです。

Q6.ファンとの交流や、被災地へ義援金を送ったり、行動派の矢作先生のファンです。ズバリ、ご自身の性格を分析すると?

 わがままだけど人情家。義理人情に関しては非常に大事にしています。

 気が強いって思われるみたいですけど、そうでもないですよ。渋田(康弘助手)が何かのインタビューで「小心者だけど」って答えていて、「こいつ、よく分かってるな」って(笑)。

 実は小心者なんですよ。すごく気にしいですね。それこそ、普段は見ないですけど、掲示板で批判されていたりすると、それで落ち込んじゃったりします。

Q7.私は地方の馬券もよく買うのですが、今回の震災で影響を受けた南関東が心配です。矢作先生のお父様は大井の元調教師さんですよね。先生も心配されたのではないでしょうか?

 非常に心配したんですよね。特に俺が育った大井の厩舎は建物が古いから、心配ですぐに電話したんです。幸い、そういう被害は全くなかったので良かったですけどね。

 正直、同じ競馬サークルの中で、南関東は非常に厳しいですよね。何かできないかなということを探っています。

Q8.グランプリボスの久保助手の記事を読みました。先生がマカオでバンジージャンプをされたという話はびっくり。実際にやってみてどうでしたか? またやりますか?

 怖い! 怖いの一言です! がんばってテンションを上げていったんですけど…先に立った瞬間、「今から止めるって言ったらかっこ悪いよな」とか「止めさせてくれないだろうか」って、真剣に思いました。

 そうしたらあいつらが「5、4、3…」ってカウントし出したので、それで飛べたなって逆に思うんですけどね。

 またやるか? う〜ん……、一度飛んでみると、飛んでいる瞬間は快感だったので。まあ、可能性がないこともないかなと思います。誰か部下を引き連れて、そいつがビビっていたら、一緒に行ってやるというのはあるかもしれないですね。

Q9.もしも調教師になっていなかったら、起業していましたか?

 いや、いわゆる商売みたいな気持ちはないです。

 政治家になりたかったんです。政治家を志す人間というのは、少しでも国を良くしたい、地域を良くしたいって思うじゃないですか? そういう気持ちが結構あったのと、これは手前味噌ですけど、割と自分にはそういう能力があるんじゃないかなと思っていたので。

 何か、すごくかっこ良くなっちゃうから嫌なんだけど、やっぱり人に喜ばれるのが好きなんです。自分も良くなきゃ嫌なんだけど、自分も良くて人に喜ばれるのが好きなので。

 そういう意味で、小さい頃は弁護士、それから政治家になりたかったですね。生まれ変わったら目指すというか、今からも考えないでもないですけどね(笑)。

Q10.これまでで一番ピンチだったことは? それをどうやって乗り越えましたか?

 それこそさっき言った思い出のショーストッパー、その馬は、俺がセレクトセールに行っている間に死んじゃったんですよ、腹痛で。でも、セリだったから帰れなかったんですよね。厩舎のピンチっていうのじゃないけど、厩舎で一番悲しい思い出です。

 乗り越えたって、いやいや、それはもうセレクトセールに集中するしかないので。

 ただ、担当していたのが、もう定年された一番ベテランの厩務員さんで。電話口で怒られましたからね。「何でこんな大事な馬が苦しんでいるのに、帰って来ねえんだ」って。

 「俺には俺の仕事があるから仕方ねえだろう。お前はお前の仕事をやっておけ」って言ったら、電話をブチって切られて。それ、俺の得意技なんですけど、自分がやられたのは初めてでした。それくらい熱い方だったんですよね。そういうのも含めて、一番辛かったですね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング