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矢作芳人調教師インタビュー中編

  • 2011年05月04日(水) 12時00分
2戦2勝でGIに挑むヘニーハウンド。「負けてないというのは魅力」と、フレッシュなパワーに矢作調教師も期待を寄せています。そこで黙っていられないのは、グランプリボス。3月のスプリングS、4月のニュージーランドTで、惜敗続きの2歳チャンピオン。しかし、このローテーションがNHKマイルのカギに。

◆譲れないグランプリボス

:圧勝の新馬戦から4か月後、ヘニーハウンドは、ファルコンS(11/3/19、阪神芝1200m)も一気に勝利。2戦目で重賞制覇とは、すごいです。

矢作 :ひそかに期待はしていたんですけど、阪神1200mであの枠(8枠15番)はかなり不利だと思っていましたからね。「8枠はこない」とか「新馬戦を勝ったばかりの馬はこない」って言われていたみたいで、いろいろぶち破ったみたいですよ。

:ジンクスを破って、蹴散らしてきたんですね。今度は少しゲートを出るのが遅くなって、後ろからのレースになりましたが?

矢作 :何か戸惑っているうちにスタートになって、ちょっと遅れてしまったんですね。ただ、ケガの光明じゃないですけど、さっきも言ったように新馬戦の時から逃げる予定はなかったので。最初から差す競馬と思っていましたから。

:ここでやりたかった競馬ができたんですね。この時、藤岡佑介騎手から岩田康誠騎手に替わっていますが?

矢作 :これね、佑介も乗りたかっただろうけど、先約があったみたいで。しかもこっちは、1勝馬が2頭しか入れない状況でした。それでも7分の2の抽選で入って、勝っちゃうんですからね。やっぱり“持ってる”んです。

:馬主さん同様に持っていますね。そして次走、GIのNHKマイルに登場します。前走から2か月弱空きますが、状態はいかがですか?

矢作 :このローテーションは当初から予定していた通りですし、ノーザンF信楽でも速いところを積み重ねてきています。何の問題なくて、とにかく順調の一言ですよね。このままいって欲しいです。というのは、新馬戦の時に比べて、今回、レースは激しかったはずなのに、疲れが前ほどではなかったんです。

:1戦ごとに上積みがあるんですね。そういう体質面は、成長と共に良くなっていくものなんですか?

矢作 :良くなって欲しいですね。ずっと抱えたまま走ることになるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ただ、新馬戦の後よりも2戦目の疲れが少なかったということは、やっぱり少しでもそこで成長があるのかなとは思います。

:キャリア2戦でのGI挑戦というのは、経験は少ないですけど、フレッシュでもありますよね。

矢作 :俺は逆に、それを魅力だと思っています。楽しみですね。どんな競馬をしてくれるか、楽しみ。もちろんグランプリボスと比べたら、実績的にもまだまだですけど、負けてないというのは魅力ですよね。しかも新馬戦、重賞ですからね。弱いところ勝ってきたわけではないですし。

:次はどんな“持ってる”を出してくれるのか。

矢作 :そうそう。正直言って、負けてもともとですし、それくらいに思っています。グランプリボスほど勝つことを要求されてきているわけではないですので。だけど、とてつもないんじゃないかって思う部分もあります。もう、そうとしか言いようがないですね。わくわく、楽しみ。

:1600mもこなせそうですか?

矢作 :そうですね。課題的には、グランプリボスと一緒で折り合いです。でも、センスの良い馬なので、克服してくれるんじゃないかなと思っています。

:まだまだいろんな可能性を秘めている感じがしますね。そしてもう一頭が、名前の挙がっているグランプリボス。

2歳チャンピオンの活躍を期待されている方はたくさんいると思いますし、今回も人気を集めてくると思うのですが、年明け初戦のスプリングS(11/3/26、阪神芝1800m)は4着。朝日杯FS(10/12/19、中山芝1600m)を勝ってから3か月の休み明けでした。

矢作 :休み明けとしては、かなりしっかり仕上げたつもりです。負けて強しだと思いました。負けて強しというのは、想定していた中で最悪の展開だったので。本当は前に馬を置いて折り合わせたかったんですが、それが叶わなかったですので。

:やっぱり折り合い面に課題が?

矢作 :もちろん。万人が言う通り、課題は折り合いだと思いますよ。「走りたい」のが非常に強いですからね。

:そこから中1週でニュージーランドT(11/4/9、阪神芝1600m)に行きました。こちらはマイルに戻って、人気にもなっていましたが、3着というレースでした。この時もやっぱり、前半で行きたがったことが影響したんでしょうか?

矢作 :これもやっぱり、前に馬を置けなかったことが辛かったですね。スタートがいいので、仕方ないんですけど。ただ1つ言えるのは、スプリングSの後にオーナーサイドと協議して、皐月賞は断念すると。NHKマイルに絞ると。

そこでもし、ニュージーランドTを使わずに、スプリングSからNHKマイルに行っていたら、あまりにも走りたい気持ちが強い馬なので、辛かったと思います。

:走りたくてイライラしちゃう。

矢作 :そう。スプリングSからニュージーランドTの中1週というのは辛かったですけど、その後は中3週ありますからね。ニュージーランドTを使ったことが、本番のNHKマイルに向けては良かったなというふうに思っています。

:なるほど。

矢作 :ただ、負けちゃいけない馬でしたので、あの時は。

:GIホースですし、ファンの方も多いですし。

矢作 :そうですね。ファンの期待に応えられなくて、申し訳ないことをしました。その分、ニュージーランドTを使ったことでNHKマイルに良い状態で向かえると思うので、そこで取り返してください。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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