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矢作芳人調教師インタビュー後編

  • 2011年05月05日(木) 12時00分
ヘニーハウンド、グランプリボスという強力な同期に割って入るのが、キョウエイバサラ。ダートでデビューし、初芝はなんと2走前の重賞アーリントンC。そこで2着に健闘し、潜在能力の高さを強烈にアピールしました。この馬の活躍には、矢作調教師の特別な思いがあったんです。

◆師が選んだキョウエイバサラ

:NHKマイルに向けて、グランプリボスの状態はいかがでしょうか?

矢作 :ニュージーランドTを使った後、ちょっと体が固くなったんですけど、あとは問題なくきています。ずっと厩舎で調整してきているんですが、非常に元気で。毎日、元気いっぱいです。

:グランプリボスはパワーがあふれていますね(笑)。調教での先生の評価はいかがですか? 折り合い面を重点にやられていると思うのですが?

矢作 :これはぜひ書いてほしいというか、久保(公二)助手をクビにしまして(笑)。

:えっ!?

矢作 :乗るところだけですけどね(笑)。朝日杯FSの前もそうしたんですけど、ベテランの渋田(康弘助手)に任せることにしました。彼は、折り合い面に関して教育するのが非常にうまいんです。それで今は毎日、渋田を乗せています。

:そうだったんですね。

矢作 :公二は悲しい顔をしていますけどもね(笑)。でも、今回はちょっとシビアにいこうと。それが、GIに向けての俺の一番の策かなということです。

:渋田助手の調教と久保助手の愛情あるお世話を受けて、グランプリボスは本番へ向かうんですね。

矢作 :春はここを目標としてきました。その目標に向けてステップを踏んできましたし、今回、この後にイギリス遠征も考えています。そのためにもやっぱり、勝ちたいですね。ここはとにかく勝ちにこだわりたいなというふうに思います。

:久保助手は、前回のインタビューで「香港に行きたい」とおっしゃっていました。

矢作 :そうそう、暮れの香港ですね。で、「古馬になったら、やっぱりスプリンターだな」「秋はマイルCSじゃなくて、スプリンターズSに行くか?」って言ったら、何か悲しそうでした。「香港マイル、香港マイル」って言っていましたね。

:香港なら、スプリントもありますよね。

矢作 :そう言ったんですけど、いろいろ理由があって香港マイルに行きたいみたいです。それはスーパーホーネットの雪辱ということもあるでしょうね。でも、スプリントにしてもマイルにしても、その辺りに良いレースがあまりないので、当然、香港も入ってくると思いますね。

:国内でのレースだけでは限られますもんね。そして残る一頭が、キョウエイバサラです。デビューから6戦ダートを使ってきて、前々走で初めて芝のレースに出走。しかも重賞のアーリントンC(11/2/26、阪神芝1600m)で、2着にきました。

矢作 :みんなにだまされてダートを使ってきたんですけど(笑)。乗った人間がみんな「ダート、ダート」って。「ヨーロッパの、芝のマイルの血統だよ」って言っても、「ダートです」って言うから。まあ、だまされていた調教師が悪いんですけど(笑)。それで思い切って芝を使ってみたら、結果が出たと言いますか。

:しかも、いきなり重賞で2着ですもんね。それまでのダートでも成績は良かったですし、この馬も能力が高そうですね。

矢作 :この馬は安かったんです。正直、あまり予算が無い中で、ニューマーケットまで買いに行って。自分の双馬眼が試される馬だなと思いました。この馬が走ったら、俺はやっぱり馬を見る目があるんだなって。

:しっかり結果を出してくれていますね。

矢作 :そうですね。まあまあ、一応の成果を出してくれているので、非常にうれしいです。ただ、現状ではやっぱり決め手というもので、上記2頭には劣るものがあるので。逆に折り合い面とか、そういう他の馬が心配な部分が無いのでね。器用にうまく立ち回れる競馬をして欲しいなと思います。

:前走のニュージーランドT(11/4/9、阪神芝1600m)が16着と負けてしまいましたが、あれはやっぱり枠でしょうか?

矢作 :あれはもう、枠順が全てですね。18番枠ではあの馬の良さは全く出ないです。

:じゃあ前走は度外視していいですね。

矢作 :はい。NHKマイルもやっぱり内枠が欲しいですね。

:最後に先生の今後の目標を伺いたいのですが、今年もスタッフの皆さんはマカオ旅行を楽しみにされているそうで。去年は賞金10億円が条件でしたよね。

矢作 :ふふふ(笑)。今年はちょっと条件が厳しいんですよ。出走回数以外で何か日本一になること。賞金で日本一か、勝ち鞍で日本一か、あるいはJRA賞の優秀技術調教師受賞、その3つのどれかです。

:今年は条件が何個かあるんですね。でも…厳しいですよね。

矢作 :厳しいと思います。

:毎年だんだんと目標が上がっていますね。厳しい条件ですが、今年も皆さんでマカオに行かれて、ぜひ先生のバンジージャンプを。

矢作 :そうですね。今年は新人が入ったので、バンジージャンプを飛ばさなきゃいけないですから、どうしても行かないとね。

:新人のためにもマカオへ。矢作厩舎は結束力の面でも、成績の面でも順調にきていますよね。

矢作 :これで順調じゃないって言ったら怒られるんでしょうけどね。でも、欲深いんでね、俺は。まだまだ、全く満足していないです。

:やっぱり先生は上を上を目指されているんですね。今後、狙っていきたいものは何ですか?

矢作 :もっともっと内容の充実でしょうね。世界制覇を目標にしていますから。海外に出て行って勝ちたいです。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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