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福田好訓持ち乗り助手インタビュー前編

  • 2011年05月10日(火) 12時00分
古馬となった三冠馬・アパパネが、ヴィクトリアMで5つ目のGIタイトルに挑みます。そんな可憐で強いアパパネが、心を許しているのが担当の福田好訓持ち乗り助手。競馬サークルでも有名な親密ぶりに迫ります。


◆プレッシャーだった桜花賞

赤見 :アパパネの古馬初戦となったマイラーズC(11/4/17、阪神芝1600m、4着)ですが、昨年のエリザベス女王杯(10/11/14、京都芝2200m、3着)以来、5か月の間隔が空いてのレースでしたね。

福田 :いつもの休み明けよりは良かったと思います。体も重くはなかったと思いますし。ただ、調教では仕上げ切れない部分のある仔なので。能力が高いので、調教で目一杯にやってしまうと、時計が出すぎてしまうんです。そこをセーブしながらやっていました。

赤見 :しかも、初めての古馬牡馬との対戦でしたし、前が有利な展開で差してきての4着ですから、内容としては上々だったのでは?

福田 :そうですね。56kgで休み明け、しかも熱発明けと考えれば、悪くない競馬だったと思います。レース後も順調にきています。坂路で乗り始めてからも、元気が良くて。

赤見 :当初は2月末の中山記念から復帰を予定していましたが、熱発で回避。その辺りの影響というのはどうでしたか?

福田 :そこまでではなかったと思います。あの時も、使って使えないわけではなかったくらいでしたから。ただ、去年のエリザベス女王杯が終わった後にも、ちょっと熱発したんです。その時は少し長引きまして、軽い肺炎にもかかっていました。それで、2週間くらい栗東にいたんです。

赤見 :そうだったんですね。

福田 :だから一度完璧にリセットして中山記念へということで、何もない状態から始めました。今までの休み明けは坂路主体でやっていたんですけど、あの時はポリトラックで2週続けて追ったんです。

それで調子は上がっていたんですけど、それと共に疲れも出てきたのか。1週前追い切りが終わった次の日に、ちょっと熱が出てしまったんです。症状はそれほどではなかったですが、これだけの馬なので無理はしないでおこうと。

赤見 :三冠達成した後に、すぐにエリザベス女王杯で古馬と対決でしたから、ちょっとがんばりすぎちゃったのもしれないですね。それでも3着に踏ん張るところが、さすがです。

福田 :がんばったと思います。やっぱり「三冠」に全てを持っていっていましたからね。

赤見 :先ほど、三冠それぞれへの思いを伺いましたが、一番プレッシャーだったのは、意外にも一冠目の桜花賞と。それはなぜなんですか?

福田 :クラシックの中で、獲れるなら桜花賞かなというところがあったからです。オークスは距離が持つのかどうかがありましたし、その時点ではまだ秋華賞は考えていなかったですし。

赤見 :なるほど。三冠のかかる秋華賞が一番プレッシャーだったのかなと思ったのですが、そうではなかったんですね。

福田 :そうですよね。実際はそうなんですけど…何でなんですかね。それだけ秋華賞の時は雰囲気が良かったのかな。春にいい経験をさせてもらって、ステップがちゃんと踏めていたのもありましたからね。

赤見 :春の二冠の経験が、三冠につながったんですね。桜花賞の前辺りは、3歳になっての成長ぶりも見えましたか?

福田 :体がひと回り大きくなっていました。よく食べるし、特にトラブルもなくいけましたね。トライアルのチューリップ賞(10/3/6、阪神芝1600m、2着)は負けてしまったんですが、重馬場でしたし、内容としては負けて強しだったと思います。

赤見 :プレッシャーに打ち勝って、見事に桜花賞を勝利して、次が距離延長してのオークスです。すごく印象的だったのが、アパパネの体型が変わったなと。コロンとした感じから、シュッとしたようになっていました。それは距離仕様なのかなと思ったのですが?

福田 :良く言えばそうですが、悪く言ったら食べていなかったということです。折り合いがつくような調教をしていて、ずっと坂路主体だったのを、馬場中心にしていました。それが結構きつかったのかもしれないですね。それでの体重減もあったと思います。馬もきつかった時期だと思います。

赤見 :それでも負けないのが、アパパネの強さですよね。

福田 :そうですね。オークスは正直、負けたと思っていました。みんなもそうだったと思います。ただ、レースが終わって戻って来たら、「あれ、分からないぞ」「アパパネが勝っているんじゃ?」というような雰囲気になっていたんです。だから「ひょっとしたら、分からないな」と思って。

赤見 :写真判定の間はどうでした?

福田 :長かったです。15分が1時間くらいに感じられました。それくら、本当に長く感じました。その間はずっと祈り倒していましたね。あとはどうかな? 半べそ状態だったような気もします。がんばってくれましたから。

赤見 :あの長い距離を、最後まで踏ん張ってくれて。

福田 :ええ。これで負けていたとしても、本当によく走ってくれたなという。いや、本当にがんばりました。がんばってくれましたね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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