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安藤勝己騎手インタビュー後編

  • 2011年05月19日(木) 12時00分
かつては公営笠松のトップに君臨し続けた安藤勝己騎手。03年に中央移籍し、まさに競馬界を代表するトップジョッキーに。現役生活35年、今年51歳となった名手の本音に迫ります。

◆かっこ悪い辞め方

:次走のオークスで二冠に挑みますが、ここまで一戦一戦で成長を見せてくれているということで、特に課題ということも?

安藤 :ないですね。一戦一戦で強くなっているし、今の状態を保ってくれれば十分じゃないかなと思いますよ。輸送も、そう気にするタイプでもないと思うし。

:これまでずっと1600mを使ってきたのは、桜花賞が目標だったからなんでしょうか?

安藤 :どうなのかな。性格的にあまり短いところというタイプでもないので、そういう距離を使っていたんじゃないかな。2000mまでは全然問題ないと思っているよ。そこから先は血統的なことも影響してくるんだろうけど、2400mはみんなが初めてですからね。余計な心配は必要ないと思っています。

:距離が変わると、どんな位置取りになるのかも気になるところですが、スタートが遅れてしまうのはタイミングなんですか?

安藤 :エルフィンSはタイミングの悪い時に切られたのもあったんですが、桜花賞は、出てはいるのに自分からピュッと行けなかった。スッと重心が下がらない感じだったんです。

:その辺は、おっとりした気性からなんでしょうか?

安藤 :自分から進んで行く感じではないですからね。位置取りに関しては、まだ自分の思ったような感じではないというのはあります。だからオークスでも、案外自分のイメージより後ろになるかもしれませんね。まあ、まだまだ完成はされていないのは間違いないので、その分の上積みはあるでしょう。

:振り返ると、2歳の夏にケガをしてしまって、デビューが12月にずれ込みましたが、そこから4戦でクラシック制覇というのは、ものすごく順調にステップアップしてきましたよね。

安藤 :そうですよね。そのケガもひどかったみたいで。それでクラシックに間に合ったというのは、素質の高さもあるだろけど、先生のレースの使い方も上手かったんでしょう。また、運も持っている。そういう点ではスター性のある馬じゃないかな。

:桜花賞、オークスを連勝というのは、過去にブエナビスタでされていますが、クラシック連勝へのご自身の中でのポイントってありますか?

安藤 :昔の桜花賞とオークスは結びつかなかったけど、阪神のマイルが外回りになってからは、直結するというか。だから今なら、桜花賞、オークスってポンポンと勝つ馬は、これから先もまだ出てきそうな気がしますね。

:そうすると、マルセリーナが桜花賞で良い競馬が出来たことも、オークスにつながるという?

安藤 :結びつくと思ってます。今はとにかく、無事でいて欲しいですね。勝つことも確かに必要だけど、まずは無事じゃないとね。本当、一番は無事だと思うよ。競馬って、そういつも勝てるものではないですから。

:そうですよね。

安藤 :オークスも勝ちたいのは当然だけど、「絶対勝つ」というようには思っていません。どんな結果になったとしても、これは競馬だからしょうがないって、腹を決めて乗っています。こっちが力んじゃうと馬にも伝わるしね。

:良い意味で、すごく力を抜いてレースに向かわれていますよね。その余裕がまた良いのかもしれません。2003年に中央に移籍されてから、9年間ずっとG1を勝ち続けていらっしゃいますけれども、何か秘訣というのはあるんですか?

安藤 :良い馬に乗ること(笑)。まあ、めぐり会わせもあるけどね。でも波に乗ることが、馬も、人間も必要だと思うよね。スランプだと、不思議と下がっていくし。

:安藤騎手でも、スランプになるんですか?

安藤 :もちろん。でもそういう時は自分でスランプと思わないようにしますね。「なるようにしかならない!」って、いつも思って。

:そこも力を抜いてですね。ここ数年、騎乗数を絞っていらっしゃるのは、長く現役を続けられるためですか?

安藤 :絞っているのか乗せてくれないのか、分からないけど(笑)。

:えっ?

安藤 :いや、本当本当(笑)。ただ、どういうのかな、ここ数年は勝ち鞍にそうこだわっていないというか。乗っていて満足できる競馬ができればいいと思っているんだよね。そう考えると、この年になったら、数をそんなに乗らない方がかえって良い成績が残せるのかなという気もしていて。

:いくつまで乗りたいなと思われますか?

安藤 :う〜ん、騎手を辞めても調教師になることはないだろうし、そう思うと、乗れるだけ乗りたいんだけどね。自分で乗っていてもう嫌だなと思ったら、辞める時かなと。あとは本当、それこそ乗せてもらえなくなったら、もう辞めなきゃしょうがないし。案外、自分で決めることじゃないかもしれないですね。そんな気がしますよ。かっこ悪い辞め方かもしれないけどね。

:そんなことは。

安藤 :(笑)。でも、それでもいいと思っているんだよ。本当、それくらいの感覚で、気楽に長く楽しくやりたいなという。馬に乗るのが楽しいうちは、出来るだけ乗りたいというのが目標だけど、本当、乗せてもらえなくなったら辞めなきゃしょうがないね。

:乗ってもらいたい厩舎はたくさんあると思います。

安藤 :いや、そんなことはない(笑)。でも、1頭でも2頭でも「乗ってくれ」という馬がいるうちは乗りたい。まあ、気楽に乗ってくれというのであればね(笑)。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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