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西園正都調教師インタビュー前編

  • 2011年05月24日(火) 12時00分
弥生賞を快勝で、堂々の主役でクラシックへ乗り込んだサダムパテック。皐月賞2着の悔しさは、ダービーの舞台で! 西園正都調教師の決意に迫ります。

◆この馬クラシック獲るよ

:クラシック一冠目、皐月賞(11/4/24、東京芝2000m、2着)から振り返っていただきたいのですが、まず、レース前の状態はいかがでしたか?

西園 :自分の思い通りの仕上げで、良いコンディションで出走させることが出来ました。その前の、休み明けだった弥生賞(11/3/6、中山芝2000m)でもしっかりと勝ってくれたので、皐月賞ではもっと走れると思っていたんですけどね。まあ、相手に上手く乗られたかなという気はします(苦笑)。

:直線で抜け出すのにちょっと時間がかかってしまって、その間に池添謙一騎手のオルフェーヴルが外から先に抜けてという。

西園 :ええ。謙一は謙一で、うちの馬が相手だと思っていたから、パテックの真後ろに付けていましたもんね。真後ろにいて、パテックが動いたら動こうと思っていた。それで、4コーナーを見て動き出して、パテックが内に行って、謙一は外に行ったんですよね。

:はい。

西園 :同じくらいの脚でいけていたら、まだまだ際どかったとは思うんですけど。でも、自分としては、競馬は負けましたけど、力負けだとは思っていません。もちろん、競馬は運もあるものですけどね。

:やっぱりGIは運も必要なんですね。

西園 :そうですね。だから、結果としては仕方ないのかなと思っています。不利になった競馬の中で、よく2着にきてくれましたね。改めて、この馬の力を感じました。

:そもそも、先生とサダムパテックはどのような出会いだったんですか?

西園 :オーナーにサダムグランジュテという牝馬を買ってもらったんですけど、その時に、もう一頭牡馬もという話になりまして。オーナーご希望が白老ファーム生産の馬ということで、牧場に問い合わせたら、セレクトセールに出す予定の男馬が、この馬だけだったんですよ。

:サダムパテックだけだったんですか?

西園 :そう。だから、運命だったんでしょうね。「ぜひ、やりたいです」って、迷いなくお願いしました。

:馬をご覧になって、どんな印象だったんですか?

西園 :まだ1歳でエリシオの肌ということで、ちょっと薄い感じがしましたね。脚がひょろひょろっとした脚長の馬だな、という印象しかなかったです。で、2歳になって育成牧場に見に行ったら、「えっ? この馬?」って。「いやいや、エリシオのですよ」「えっ、こんな馬になったの!?」って。

:!?

西園 :もうね、すごい体になっていたんですよ。「よくぞここまで馬って変われるんだな」って思ったんですね。先人たちがよく言ったじゃないですか、「変わる馬じゃないと走らない」って。こういうことだったんだなって。その時から走る予感はありましたよ。

:デビューが京都の新馬戦(10/10/17、京都芝1600m)でしたが、入厩してからの調教でも能力が見えましたか?

西園 :ええ。初めてCWで6Fからやった時に、外を回って81秒できましたので、「この馬はやっぱり走るな」と。この馬のお母さんが、ダートの短いところで走っていたんです。それで新馬戦はダートを使おうかなとも思ったんでが、やっぱり芝の適性も見てみたいなというのもあって、芝の中距離を使ったんですね。

:結果は2着でしたが、新馬戦からもう33秒台の末脚。そして、すぐに未勝利戦(10/10/30、京都芝1600m)を勝って、3戦目で重賞の東京スポーツ杯2歳S(10/11/20、東京芝1800m)も勝利と。

西園 :未勝利戦が強かったので、勝った後に「次走は東スポ杯2歳Sに」という話が上がったんです。「1勝馬だしな」という気持ちもあったんですが、良い勝ち方だったので格上げ挑戦でもいいのかなと思って使いました。それで蓋を開けたら1番人気で、ぶっちぎって勝ったんですよね。その時に「うわ、本当に走るんだ」と思って。

:先生もびっくりされたくらい?

西園 :びっくりしましたね。思った以上に楽勝でしたしね。ゴール前はもう流した感じで、それで1分47秒台ですからね。やっぱり強いですよ。話が戻るんですが、新馬戦は(柴田)善臣に乗ってもらったんですけど、上がって来て「先生、この馬すごい馬だよ」ってものすごく誉めてくれたんです。

:はい。

西園 :まあ、乗った馬なのもあって誉めてくれているのかなと思って、話半分くらいに聞いていたんですけど(笑)、「この馬、来年クラシック獲るよ」って言ったんですよね。

:あれほどの騎手がそこまでおっしゃったんですか。

西園 :そうなんです。よほど何か強烈に感じたんでしょうね。それには後日談もあるんです。その後の未勝利戦、東スポ杯2歳Sはスミヨン騎手でというのが決まっていたんですよね。それで同じ頃に、善臣にうちの別の馬に乗ってもらったんです。

:はい。

西園 :その馬のレース前なのに、パテックの話ばっかりするんですよ。その時にはもうスミヨン騎手に決まっていたから、申し訳ないなと思ったんですけどね。でも、彼がそれだけ誉めてくれたということは、やっぱり相当な資質を感じてくれているんだなと思いましたよね。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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