スマートフォン版へ

西園正都調教師インタビュー中編

  • 2011年05月25日(水) 12時00分
運命のように西園正都厩舎に舞い込んだサダムパテック。小さい頃からズバ抜けた能力で師を驚かせてきた素質馬は、まさに模範生でした。

◆勝利に一番近いところ

:サダムパテックはずっと人気を背負ってきましたが、弥生賞(11/3/6、中山芝2000m)は改めて強さを見せつけたレースだったと思います。朝日杯FS(10/12/19、中山芝1600m、4着)から3か月空いていますが、その間の成長というのは感じられましたか?

西園 :ええ、成長しているなと思いました。厩舎に帰って来た時に「背が伸びたな」って、担当の厩務員と話していたんですよ。キ甲が少し伸びてね。

:レースではプラス10kgでしたが、これは馬体の成長ということですか?

西園 :そうですね。牧場から帰って来た時はプラス30kgくらいで、仕上げて行くうちに20kg減ったんです。マスコミの方に対しても「本番を見据えて今回はちょっと太め。プラス10kgくらいだと思いますよ」って言っていたんです。でも、今だから言えるんですが、本当はどれだけ変われるのかなって、自分では不安で。

:そうだったんですね。

西園 :ええ。でも、競馬に行ったら言った通りにプラス10kgだったので、あとは競馬だけだなと思って見ていたら、強い勝ち方でねじ伏せてくれて。改めて「次元を超えている馬だな」と思ったんですよね。

:改めて先生が感じた強みというのは、どういうところですか?

西園 :精神的にタフですね。この馬って「君、そこでじっとしておきなさいよ」って言ったら、本当にじっとしているような仔なんです。それですごく人懐っこいんですよね。

:カッカしないんですか?

西園 :しない、しない。競馬の時だけカーッとなるけど、終わったらもう大人しい。おりこうさんですよ、本当におりこうさん。まだ若い馬だけど、メンタル面はタフですね。また、脚もきれいですしね。みんなこういう馬だったらいいのになって思うくらいです(笑)。

:ふふ(笑)。でも、メンタル面も身体面もしっかりしているのは強みですね。

西園 :そうなんです。それと、背中は他の馬と比べて、特別柔らかいという感じもしないんです。じゃあ何で走るのかと言われると、毎日乗っている助手に言わせたら、追い切っても、競馬をしても、すぐに息が入ると。強靭な心肺機能をしているからこれだけ走るんだ、って言うんですよね。究極のスポーツ心臓なんでしょうね。

:究極のスポーツ心臓ですか。ますますダービーが楽しみです。ダービーもまた輸送のあるレースですが、それも大丈夫そうですか?

西園 :そうですね。考えたら京都、京都、東京、中山、中山、東京って、新馬戦と未勝利戦以来、関西区域で走っていないんです。だから「競馬は馬運車で運ばれて関東圏内に行くんだ」って思っているんじゃないですか。

:もう慣れたものですね。ゲートで出負けしてしまうことがありますが、何か対策はしていくんですか?

西園 :まだ体に緩い部分があるからなんでしょうね。よくマスコミの方から「ゲート練習はしないんですか?」って聞かれますけど、それはもう自然に覚えて行くことなので、無理に負荷を掛ける必要はないと思っています。それでも勝てると思ってやっています。

:ここ2戦は岩田康誠騎手が乗られていますけど、相性は良さそうですか?

西園 :相性は良いですね。この先も乗ってもらいたいなと思っています。指示に関しては、特にせず、お任せでいこうと思っています。まあ、競馬なんですから、勝ち負けは必ず付いてきます。

:はい。

西園 :岩田には「しっかりと仕上げて持って行くから、自分で悔いの残るような乗り方だけは止めてね。“こうやって乗って負けたんだから仕方ない”“こうして乗ったから勝てたんだ”って、そういう騎乗を心がけて」と言ってあります。

:ジョッキー経験のある先生だからこそ、伝わる言葉ですね。先生、厩舎としては2008年にエーシンフォワードでダービーを経験されていて、今回が2回目ということになるんですよね。

西園 :そうですね。私もそうですし、この世界にいるほとんどの人にとっても、ダービーは夢です。だからやっぱり、緊張はしますよ。口から心臓が出てきそうです(笑)。でも、緊張して臨めるようなレースじゃないと、勝ち負けじゃないということですからね。あまりにものんびりして見られるクラシックもさびしいでしょう(笑)?

:そうですね。良い緊張感で臨めるのがいいんですね。

西園 :そう。緊張して行けるということは、それだけの可能性を秘めているということ。それなら、心臓が口から飛び出してもいい、くらいに思っています。出てくるものだったら出てこいや!! ってね(笑)。

:力強いです!!

西園 :ふふ(笑)。あとはやっぱり、しっかりと仕上げることですよね。そうして緊張感を持ちつつ、出来るだけ自然体で臨みたいなと思っています。

:ダービーで再びオルフェーヴルとの対決になりますね。

西園 :まあ、相手もあることですけど、自分の馬が自分の力を発揮できることが大事です。力を発揮できたら、勝利に一番近いところにいると思っています。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング