運命のように西園正都厩舎に舞い込んだサダムパテック。小さい頃からズバ抜けた能力で師を驚かせてきた素質馬は、まさに模範生でした。
◆勝利に一番近いところ
東 :サダムパテックはずっと人気を背負ってきましたが、弥生賞(11/3/6、中山芝2000m)は改めて強さを見せつけたレースだったと思います。朝日杯FS(10/12/19、中山芝1600m、4着)から3か月空いていますが、その間の成長というのは感じられましたか?
西園 :ええ、成長しているなと思いました。厩舎に帰って来た時に「背が伸びたな」って、担当の厩務員と話していたんですよ。キ甲が少し伸びてね。
東 :レースではプラス10kgでしたが、これは馬体の成長ということですか?
西園 :そうですね。牧場から帰って来た時はプラス30kgくらいで、仕上げて行くうちに20kg減ったんです。マスコミの方に対しても「本番を見据えて今回はちょっと太め。プラス10kgくらいだと思いますよ」って言っていたんです。でも、今だから言えるんですが、本当はどれだけ変われるのかなって、自分では不安で。
東 :そうだったんですね。
西園 :ええ。でも、競馬に行ったら言った通りにプラス10kgだったので、あとは競馬だけだなと思って見ていたら、強い勝ち方でねじ伏せてくれて。改めて「次元を超えている馬だな」と思ったんですよね。
東 :改めて先生が感じた強みというのは、どういうところですか?
西園 :精神的にタフですね。この馬って「君、そこでじっとしておきなさいよ」って言ったら、本当にじっとしているような仔なんです。それですごく人懐っこいんですよね。
東 :カッカしないんですか?
西園 :しない、しない。競馬の時だけカーッとなるけど、終わったらもう大人しい。おりこうさんですよ、本当におりこうさん。まだ若い馬だけど、メンタル面はタフですね。また、脚もきれいですしね。みんなこういう馬だったらいいのになって思うくらいです(笑)。
東 :ふふ(笑)。でも、メンタル面も身体面もしっかりしているのは強みですね。
西園 :そうなんです。それと、背中は他の馬と比べて、特別柔らかいという感じもしないんです。じゃあ何で走るのかと言われると、毎日乗っている助手に言わせたら、追い切っても、競馬をしても、すぐに息が入ると。強靭な心肺機能をしているからこれだけ走るんだ、って言うんですよね。究極のスポーツ心臓なんでしょうね。
東 :究極のスポーツ心臓ですか。ますますダービーが楽しみです。ダービーもまた輸送のあるレースですが、それも大丈夫そうですか?
西園 :そうですね。考えたら京都、京都、東京、中山、中山、東京って、新馬戦と未勝利戦以来、関西区域で走っていないんです。だから「競馬は馬運車で運ばれて関東圏内に行くんだ」って思っているんじゃないですか。
東 :もう慣れたものですね。ゲートで出負けしてしまうことがありますが、何か対策はしていくんですか?
西園 :まだ体に緩い部分があるからなんでしょうね。よくマスコミの方から「ゲート練習はしないんですか?」って聞かれますけど、それはもう自然に覚えて行くことなので、無理に負荷を掛ける必要はないと思っています。それでも勝てると思ってやっています。
東 :ここ2戦は岩田康誠騎手が乗られていますけど、相性は良さそうですか?
西園 :相性は良いですね。この先も乗ってもらいたいなと思っています。指示に関しては、特にせず、お任せでいこうと思っています。まあ、競馬なんですから、勝ち負けは必ず付いてきます。
東 :はい。
西園 :岩田には「しっかりと仕上げて持って行くから、自分で悔いの残るような乗り方だけは止めてね。“こうやって乗って負けたんだから仕方ない”“こうして乗ったから勝てたんだ”って、そういう騎乗を心がけて」と言ってあります。
東 :ジョッキー経験のある先生だからこそ、伝わる言葉ですね。先生、厩舎としては2008年にエーシンフォワードでダービーを経験されていて、今回が2回目ということになるんですよね。
西園 :そうですね。私もそうですし、この世界にいるほとんどの人にとっても、ダービーは夢です。だからやっぱり、緊張はしますよ。口から心臓が出てきそうです(笑)。でも、緊張して臨めるようなレースじゃないと、勝ち負けじゃないということですからね。あまりにものんびりして見られるクラシックもさびしいでしょう(笑)?
東 :そうですね。良い緊張感で臨めるのがいいんですね。
西園 :そう。緊張して行けるということは、それだけの可能性を秘めているということ。それなら、心臓が口から飛び出してもいい、くらいに思っています。出てくるものだったら出てこいや!! ってね(笑)。
東 :力強いです!!
西園 :ふふ(笑)。あとはやっぱり、しっかりと仕上げることですよね。そうして緊張感を持ちつつ、出来るだけ自然体で臨みたいなと思っています。
東 :ダービーで再びオルフェーヴルとの対決になりますね。
西園 :まあ、相手もあることですけど、自分の馬が自分の力を発揮できることが大事です。力を発揮できたら、勝利に一番近いところにいると思っています。