ダービーに続き、安田記念へも有力馬を送り込む西園調教師。充実著しいシルポート、昨年のマイル王エーシンフォワード。気になる現況をお届けします。
◆世界で4番目のマイラー
東 :先生、ダービーのサダムパテックに続き、翌週の安田記念にも楽しみな馬が控えていますよね。まず注目なのがシルポート。初めて重賞に出走したのが昨年の5歳の時ですが、今年に入ってもう重賞2勝。すごいですね。
西園 :晩成だったんでしょうね。正直ここまで走るようになるとは思っていませんでした。今でこそ筋肉質な体ですが、最初の頃は華奢で。使いながら成長していったんじゃないですかね。
東 :使いながらということですが、戦歴が結構ありますよね?
西園 :そうなんです。条件馬でたまに丈夫な馬っていますけど、オープンでこれだけっていうのはあまりいないですよね(笑)。で、不思議なのが、普通は使って行くと疲労が溜まって休ませなきゃならないんですけど、この馬は休ませると走らなくなるんです。
東 :えっ、逆なんですか!?
西園 :逆なんです。間隔を空けると良くないんです。しかも、使っていくうちにどんどん時計も詰めてくるんです。こういうタイプは初めてです。伸びしろというか、まだ奥行きがあるかなって思っていますね。
東 :シルポートが逃げにこだわるのは怖がりだからという、意外な理由と。先ほどのレイのお話も面白かったんです。
西園 :そうですよね(笑)。すごく怖がりで、栗東に初めて入厩する時も馬運車で暴れてケガをしてしまって。やっぱり怖かったんでしょうね。人間にはすごく優しいんですけど、物や馬が嫌いなんですよ。馬の方に行かないもんね。自分が馬だって知らないのかな(笑)。
東 :あはは(笑)。でも、逃げに徹するようになって、競馬もスムーズになってきましたよね?
西園 :逃げに変換してからはスムーズですね。離して逃げるようになってからは特にです。離して逃げると、能力以上と言ったらおかしいですが、とても力を発揮するんですよね。ハイラップで行っているのに、なおかつ後ろを引き離して勝ったりし出して。
東 :先日のマイラーズC(11/4/17、阪神芝1600m)も、道中で3、4馬身離して逃げて、直線向いてまたさらに突き放して。最後は粘り勝ちでしたね。
西園 :そうですね。マイラーズCの時は、カンカンも57kgに戻っていましたし、スタートしてある程度自分のペースで行ければ、相当なところまでやれると思っていました。小牧(太)にも「ハナは主張しなきゃいけないよ。控える格好をすると、誰かに行かれてしまうから。ハイペースでも行って、それで止まったら仕方がないことだから」って。
東 :その通りのレースで、見事に成果を出してくれたんですね。今年になってからマイルの重賞2勝。すごいですね。もうマイル路線では堂々と。
西園 :ねえ。1、2位を争うだけの力を持っていると思います。でも、それまでは不思議な馬で、1400mと1800mしか勝ったことがなかったんです。1600mではずっと負けていたんですよ。
東 :本当ですね、1600mでは勝ってないです。
西園 :勝ってないでしょう? だから、マイルは嫌だなと思っていたんです。ところが、昨年のファイナルS(10/12/26、阪神芝1600m)、年明けの京都金杯(11/1/5、京都芝1600m)で、マイル戦を連勝したんですよね。「今までは何だったんだろうな」って(笑)。年齢を重ねて、息の入れ方を覚えたのかも分からないですね。
東 :「今の俺ならできる」みたいな感じなんですかね(笑)。そしてもう一頭注目なのが、エーシンフォワードです。
西園 :はい。
東 :昨年のマイルCS(10/11/21、京都芝1600m)は、ケガから復帰された岩田康誠騎手との劇的な勝利でした。その後も、遠征した香港マイル(10/12/12、香港芝1600m)でしぶとく粘って4着。また強くなったのかなという印象を受けたのですが?
西園 :そうですね。力を付けていますね。本当言うと、年度代表馬の投票でもうちょっと票が入るかなと思ったんですけどね。あの時の香港マイルのメンバーって、世界のマイルチャンピオンばっかりが集まったんです。しかも、ゲートに10分前に入れられたんですよ。
東 :えっ? 10分前ですか?
西園 :先に入れられて、それから後ろの馬が入らなくて。結局10分間入っていたんです。かわいそうでしたよ。10分も入っているから、最後の方は寝ようとしていましたからね。そういう状態でも4着にきましたのでね。僕は世界で4番目だと思いました。マイルのレコードホルダーでもありますしね。
東 :そうですよね。ダービー、安田記念と大きなレースが控えていますが、レースを前にどういう思いでいらっしゃいますか?
西園 :GIは競走馬にとって大事なチャンスですからね。まずはダービーに向けて全力投球。そして、安田記念では、3頭ともベストを尽くして良い競馬をして欲しいです。その馬達が持っている運命を自分らが握っているわけですからね。最大限の力を発揮させて、良い成績を上げさせてあげたいと思っています。