スマートフォン版へ

東田幸男調教助手インタビュー中編

  • 2011年06月01日(水) 12時00分
3歳の4月デビューと、やや遅いスタートとなったダノンヨーヨー。しかし、古馬になって破竹の4連勝。一気にGI・1番人気までの存在となりました。

◆ヴィクトリー最強伝説

:ダノンヨーヨーが若馬だった頃のお話を伺いたいのですが、デビューが3歳の4月(3歳未勝利、09/4/12、阪神芝1600m、2着)と、ちょっと遅かったですよね。

東田 :ええ。この馬ね、全体的に体質が弱かったんですよ。大きい馬ですし、ある程度馬が出来てくるまでは、慎重にならざるを得なかったんです。

:ではしばらくは、体質の不安もありつつだったんですか?

東田 :そうでしたね。また、気性面でもイライラしたりして。何せ、走ることに集中していなかったんです。

:何に気を取られちゃうんですか?

東田 :あらゆる物です。物は見る、それから、真剣に走らない。そして、追い出すと右左して、叩くと余計に行ってしまうとか。だから競馬も乗り辛かったと思います。俗に言う「競馬に行って危ない馬」という印象でしたね。

:デビューから春3戦して、8か月の休養を挟みました。この時というのは?

東田 :やっぱりちょっと脚元にきたんです。今無理をすると良くないなということで、間を空けました。おまけに、ゲートも悪かったんですよね。ゲートの中で立ち上がったり、もぐろうとしたり。その休養が良かったんでしょうね。戻ってきて、精神的にはまだまだでしたが、何せ体と脚元が良くなっていましたよ。

:その辺りからは成績面でも、堅実に結果を出していきましたよね。

東田 :そうです。まだまだ真面目には走っていなかったので、だからこそ期待を持ちましたよ。ちゃんと真面目にまっすぐ走れば、重賞は獲れるだろうなと思っていました。

:そこで破竹の4連勝に入っていくわけですけれども、4連勝で一気に重賞・富士S(10/10/23、東京芝1600m)まで優勝。

東田 :そうですね。何と言うか、その時点でもまだ半信半疑だったんですけどね。ただ、その4連勝の時、上がり3ハロンで絶対に33秒台の脚を使っているんですよね。しかもコンスタントに使っています。この馬は「相当な器だな」と思いましたね。

:それだけの能力ですと、GIもという期待を持ちますね。次走の安田記念は昨年のマイルCSのリベンジでもありますが、現在の状態はいかがですか?

東田 :至って順調ですね。順調にメニュー通りにきていますよ。

:GIということで、何か特別にトレーニングしていることなどあるんでしょうか?

東田 :いや、何も特別なことはしていません。普段通りのことをやるだけです。馬も変わらずにきています。その、変わらないことが良い。これが大事です!

:変わらないことが大事と。ダノンヨーヨーは我が強いタイプということですが、今まで音無厩舎が管理した馬で、似たようなタイプはいましたか?

東田 :そうですね、我が強いということで言うと、リンカーンは強かったですね。でも最高と言ったら、ヴィクトリー(07年皐月賞)ですね。あの馬はもう、今までの馬の中では最強です。リンカーンも我が強かったですが、ヴィクトリーは輪をかけてすごかったですよ。

:ヴィクトリー、レースが終わった後もかなりパワフルでした。

東田 :そうでしょう? ヴィクトリーは本当に我が強くて、それでいて走りましたからね。走らないで我が強い馬はたくさんいるんですよ。そっちの方が多いんです。要するに走る方向に行かないんですよね。だからヴィクトリーはすごかったんです。

:GI馬ですもんね。

東田 :そう。あと少しでも真面目に走れていたら、まだ大きいところを獲っていたんでしょうけど。最後の方は、自分で辞めていましたからね。そういう我の強さが悪い方向に出てしまったんでしょう。真面目に走っていたらGIももう1つ2つ勝てた馬だと思うんですが、何せ真面目に走らない。

:しっかり走れば獲れるのに。

東田 :そうそう。だから、皐月賞の時だけは真面目に走ったんですよね。そこで獲ったから「もういいや」と思ったんでしょうかね(笑)。

:「1個でいいや」って(笑)。

東田 :そうそう。こっちはそうは思っていないのにね(笑)。だからあの馬に関してはね、もう少し上手いやり方があったら、もう少し走らせられたのかなという馬だったのかもしれないですね。これは結果論ですけど、そういう反省点もありますよね。

:その経験が、ダノンヨーヨーなど後の馬たちに活かされていくんでしょうね。ダノンヨーヨーは安田記念が2度目のGI挑戦となりますけれども、意気込みをお聞かせください。

東田 :去年のマイルCSはものすごくチャンスではありました。でも、あの頃に比べるとマイル路線のメンバーはそう変わっていないでしょう。だからその辺は心配していないです。今度は直線の長い東京になりますが、富士Sで勝っていますしね。

:ということは余計気合いが入りますね。

東田 :ね。でも、こればっかりは人間が気合い入ってもしょうがないんです。馬にすがるのが一番良くないんですよ。人間が固くなっていたら、馬だってそうなってしまいますから。だから、リラックスして臨めばいい。能力を出し切れば、良い結果が出てくると思っていますよ。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング