今回は、私が赤本で推した馬を中心に、ノーザンファーム勢に触れていきたい。
今年意識したのが、デビューの早い馬にこだわらないこと。むしろ秋デビュー組を中心に据えることを意識した。最近はPOG媒体が増えて早期デビュー馬の情報が厚くなり、昔とは逆に早いタイプが過剰人気になりつつあるからだ。
しかし、ノーザンファーム勢の中から、私の予想以上に早い移動を見せる馬がいた。
おすすめ10頭の2位となった母ヴァンドノワールと、同9位の母オールザウェイベイビーである。POGとは別件で5月中旬にNFしがらきへ行ったところ、ちょうどこの2頭が到着したところだった。
このうち母オールザウェイベイビーのほうは早い移動もあるかなと思っていたし、新潟デビューも囁かれて各地ドラフトで人気沸騰のようなので、皆さんのほうがむしろ情報はよく御存じだろう。
意外だったのが母ヴァンドノワール。大型馬だし、時間のかかるタイプかと思っていた。
この原稿を書くにあたって取材したところ、6月上旬現在、まだNFしがらきの環境に馴らしながら少しずつ時計を詰めていっているところで、具体的にいつ入れてどこを使うという話にはなっていないとのこと。535キロという馬体なので、焦らずじっくりやるようだ。それでも橋口師の目が届きやすいところにいるというのは、指名した身としては安心感がある。
続いて早来にいる馬たち。おすすめ10頭の4位に挙げた母エヴリウィスパーは、週2回F15秒までという進み具合。この時期は速い時計とか移動とかの要素がある馬ばかり話題になるが、こういう、普通に乗り込んでいる馬を素直に評価していればいいと思う。現在490キロ前後。
産地馬体検査原稿で大プッシュした母アドマイヤグルーヴも、ほぼ同じ進み具合。周回と坂路を1日おき、週2回坂路で15秒。シンボリクリスエスにしてはすっきりして見えるのは、顔が母系の影響で小ぶり、かつ品があるからではないかとのこと。
立たせての見栄えだけでなく、坂路でも後躯の推進力がしっかり前に伝わる走りで、身体能力の高さは間違いないという評価を受けている。あとは競馬に行って気性の悪さが出ないようなら、期待に応えてくれそうだ。現在480キロ前後。
同じく産地馬体検査で私が急にプッシュしはじめた母ティエッチマンボは、やはり牧場でも高い評価を受けているとのことだった。ダイワメジャー産駒は骨も太く筋肉のボリュームがある一方で、それが重苦しい印象に繋がることもある。この馬の歩きが柔らかく見えるのは、皮膚が薄く筋肉が柔らかいからだろうという牧場評をいただいた。進み具合は前2頭と同じくらい。現在の馬体重は520キロ前後。
同じオーナーの母プロモーションにも触れておこう。父同様晩成タイプということで坂路ではハロン16秒あたりと微妙に時計差があるが、それを不安視する必要はなく、この時期の2歳馬としては普通の範疇だろう。
調教進度として進んでいる組ではないため動きでアピールしているわけではないが、馬っぷりの良さはノーザンファーム生産のハーツクライで一番という評価をする人もいる。ドラフト人気はあまりないと思うので、これからドラフトという人は下位で狙ってみても面白いだろう。現在の馬体重は510キロ前後。
▼筆者:須田鷹雄
1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。