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イケてなかった馬列伝 2010-2011前編

  • 2011年06月17日(金) 18時00分
 赤本本誌に書いたように、今年は春先に開催スケジュールが変わり、未出走馬の出走機会が減ってしまったので「イケてなかった馬列伝」をお休みした。実際の事情としては、台割を作っていた時期というのが3/19の中央競馬再開を支持しただけで嫌がらせのメールを送られるような自粛ムードのさなかだったとか、そういった問題もあった。バラエティ色のあるものがはばかられるような空気だったのである。

 名物コーナーが無いことを残念がってくださる方も多くそれはありがたい限りなのだが、後で伝え聞くと、業界内では色々と噂も流されているらしい。馬主(あるいは調教師)からクレームがついて無くなったとか吹聴している向きもあるようで、ネットでもそんな噂が流れていると聞く。

 腹が立つので来年は巻頭カラーでやってやろうかとも考えたがそれは本の体裁として明らかにおかしいので断念し、かわりにダービー開催も終わったこの時期に、本コラムで「イケてなかった馬列伝」をやってみようと思う。(成績は6月13日時点)

エアジョイント
3戦0勝
父ディープインパクト
母エアデジャヴー
牡・伊藤正徳厩舎

 この世代のPOGは人気どころがよく走ったとか、ディープ産駒は分かりやすかったとか言われている。そんな中、豪快な空振りとなったのがこの馬。原因はよく分からないが、「赤本の巻頭ページに載った馬は走らない」という伝統を守るために遠慮してくれた……わけではないだろう。

ピカソ
3戦0勝
父ディープインパクト
母スカーレットブーケ
牡・藤沢和雄厩舎

 前項からの続きで言うと、私は赤本の写真ページにおける掲載順には口を挟まないことにしている。担当者を振り回しては悪いからだ。ただ、担当者が変に空気を読むというか、大きく載っている馬が未勝利に終わることを期待している読者のニーズに応えようみたいな感じになって、「冒頭5頭になにか未勝利馬を入れなければ!」と倒錯した状態になっていたような気もする。そして昨年はこれが意識して入れられた馬だったのではと睨んでいる……が、しかし6/4に2着したり、勝ち上がり寸前までいったね。あと、今年から掲載馬・掲載順は本文登場量とリンクするようになったので先述した内容のような深読みは不要です。

マギストラ
4戦0勝
父ディープインパクト
母マンファス
牝・平田修厩舎

 早期デビュー馬を上位で取りすぎた人が怒り狂ったあげく、平田師そのものまでディスりはじめているようだが、この馬についてはちょっと予感あったと思うのよね。ちなみに昨年の赤本では、良血馬に甘いキャラの本誌予想まで含めてツルツルの無印だ。あとマンファスの血統自体が過剰人気でもある。本馬の3代母あたりを基点に近親を見ても、POG的に当たりだったのはキングカメハメハとレースパイロットくらい。あとは障害のユーセイシュタインとか、だいぶ話の趣旨が変わってくる。

クロドレコー
4戦0勝
父クロフネ
母ロゼダンジュ
牡・古賀慎明厩舎

 現3歳世代のセレクトセール高額馬は、価格ベスト10のうち6頭がPOG期間内に勝ち上がるという好調ぶり(1億円クラスの馬でもそんなものよ)なのだが、やはり全部勝つというわけにはいかない。この馬はドラフトの時点で人気でもなかったのでPOG的に盛り上がる話はないが、本物のオーナーには教訓を与えてくれる1頭。この世代はクロフネが本馬とシルバーフォックス(未出走)、オメガオンリーワン、サンダーソニア、さらにフレンチデピュティがこのあとに出てくるアドマイヤスコールに加えニューディケイド、ミッキーセブンと3000万円以上馬すべて未勝利か未出走。両種牡馬とも活躍馬も出しているのだが、セール時の人気の波には注意しなければならない。

アドマイヤスコール
5戦0勝
父フレンチデピュティ
母アズサユミ
牡・友道康夫厩舎

 というわけで、この馬。正直、私は推しまくってました。すみませんすみません。お詫びに、レイザーラモンRGばりに「フレンチデピュティあるある」をバービーボーイズの「目を閉じておいでよ」に乗せて歌いあげようかと思ったのだが、「それは活字では伝わらない」「そもそもネタの認知度が低い」という観点から断念。代わりに、ふつうに書いておくことにしよう。「競馬関係者がフレンチデピュティ産駒をホメるときには、『フレンチっぽくない』って言う」。あるある〜。

(次回に続く)

▼筆者:須田鷹雄
 1970年東京都生まれ、東京大学経済学部卒業。POGの達人としても知られ、監修を務める“赤本”こと「POGの達人」(光文社刊)は、POGユーザー必携の書と言われている。netkeiba.comでは「回収率向上大作戦」も担当している。

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