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アクターの試練

  • 2002年11月11日(月) 15時01分
 11月6日、船橋「グランドマイラーズ」。ベルモントアクターがよもやの敗戦を喫してしまった。ノメるようなアオるような何ともタイミングの悪いスタート。おっつけながら辛うじて中団キープ。3〜4コーナー、ひとまず4番手に上がり追撃態勢をとったものの、そこからさっぱり伸びなかった。勝ったのはJRAから転入初戦ネームヴァリュー。道中3〜4番手をスムーズな折り合い。逃げるコアレスフィールドに直線中ほどで並びかけ、鞍上のGOサインと同時に素晴らしい瞬発力をみせている。1600m1分39秒0、馬場を考慮すれば水準以上の時計で、しかも余裕残しの4馬身差。結果からは仮にアクターがまともに走っても2着がやっと…が客観的かもしれない。ネームバリューはJRA・4勝すべて芝、しかしそれより何よりデビュー2連勝の潜在能力があり、牝馬路線にせよ一貫クラシックロードを歩んできた。そしてトレード直前、札幌1000万下特別を勝っている。パドックでもアカ抜けた好馬体が目につき、いかにも素質馬という雰囲気。オナーアンドグローリー×シアトルスルー、ダートでより真価が出たと考えたい。再生に絶対の自信を持つ川島正行厩舎。ここで再びその評価をダメ押しした。12月11日大井「ファーストレディ賞」が目標。ここはラヴァリーフリッグ、ジーナフォンテンらが出走予定。面白いレースが期待できる

京成盃グランドマスラーズ(サラ3歳上、別定、1600m良)

△(1)ネームヴァリュー  (52・佐藤隆) 1分39秒0
△(2)スプリングシオン  (52・佐藤祐) 4
○(3コアレスフィールド  (56・張田)  1
◎(4)ベルモントアクター (56・石崎隆) 首
▲(5)ヒミツヘイキ    (54・左海)  7
………………………………………………………………………
△(6)ユーエムアスキー  (52・椎名)
△(7)ミリオンヒット   (56・的場文)
(8)マイシーズン     (56・鈴木啓)

単540円 馬複4250円 馬単6370円
3連複14960円 3連単89310円

 アクターの敗因。トモに軽い不安が出て3か月半ぶり。しかし10キロ増でも太くはない。いつもながら筋肉の張り詰めた馬体でパドックの歩様にも活気がある。ただ事実ブランクがあったぶん気持ちがレースに向いていなかったとはいえるだろう。「ゲートを蹴飛ばした瞬間にスタートを切られ、終始リズムに乗れなかった。でもまあこれが競馬だから…」と石崎隆騎手。まさしくしかり。思えば無傷の17連勝も、80%の天才と、20%の強運がうまく噛み合った結果だった。一流とはまだ未対戦だったこと、馬群を捌いて追い込む、窮地に立ってはね返す、それだけの精神力が備わっていないこと。いずれにせよ一連キャリアを考えれば深刻な悲観材料にもならないだろう。本来競走馬は敗戦を経て強くなる。順調なら11月28日統一G「浦和記念」へ。神話が創り出せる馬かどうか、そこで改めて真価が問われる。

 スプリングシオンは道中アクターと前後する位置取りで、直線追われてじわりと伸びた。少し忙しいと思えたマイルでこの競馬なら展望は明るい。父ディンヒルの大型馬。とにかく充実一途で意外なほど器用さもある。ハナを切ったコアレスフィールドは完全燃焼の競馬。8歳の年齢からもこの時計で3着は健闘としていい。ヒミツヘイキは好位からいったんずるずる後退、それにしては最後よく踏ん張っている。ダービーGPから帰厩後、陣営は血液検査など綿密なメディカルチェックをしたと聞く。よくわからない。予想者としては無定見だが、いま同馬は“走りたくないモード”に入っている、そんな言葉しか浮かばない。ミリオンヒットはパドックから馬体、気合とも冴えず、後方のまま見せ場すら作れなかった。左回り、ハイペース1600m、舞台は整っても、やはり最後は状態…という結果だろう。

       ☆     ☆     ☆

鎌倉記念(川崎11月15日、サラ2歳、ハンデ、1500m)

◎パレガルニエ     (今野)
○ホクトエース     (鷹見)
▲スオウライデン    (森下)
△グリンゼファー    (石崎隆)
△ブラックドンカルロ  
△イーストダーリング  (金子)
△ウィンブロー     (張田)

 パレガルニエはデビューから2戦2勝。牝馬ながら相当のスケールが感じとれる。新馬900m55秒6は水準程度だが、レースぶりの余裕、好馬体を買われ2戦目「若武者特別=鎌倉記念TR」1番人気。はたしていきなり3F延長の1500mを難なく折り合い、後続に4馬身差の圧勝だった。当時1分36秒0、昨年このレース、ジェネスアリダー36秒2だから、すでに時計の裏付けができている。父シアトルダンサーII、母の父キンググローリアス、祖母に船橋クイーン賞を勝ったダービーナイト。血統構成はむしろ重厚かつ奥手というイメージで、ここをあっさりなら、12月25日の総決算「全日本3歳優駿=統一G2」にも十分な夢がつなげる。差す競馬ができればさらに本物。

 ひとまずハイセイコー記念上位組が相手だが、その序列はまだ流動的だろう。当時4着ながら馬体、走法から受ける大物感はホクトエース。左回りで行きっぷりがどう変わるか。スオウライデンは完成度の高いレース巧者で、ここも流れに応じて動きそうだ。グリンゼファーはハイペースを無欲で追い込む形が理想か。道営からの転入馬も続々東上予定で、今回その先陣がブラックドンカルロ。東京ダービーを勝ったプレザント産駒というところに興味がわく。地元川崎2番手グループでは、イーストダーリング、ウィンブロー。ともに前走若武者特別でなかなかの末脚をみせた。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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