右肩上がりだったマーケットが頭打ちの状況を迎え、産業全体をダウンサイジングする時期に来ていると言われているアメリカ。ここへ来て各牧場から発表になっている来季の種付け料にも、はっきりとその傾向が現れている。
今年のアメリカにおけるイヤリングマーケットの動向を改めて分析すると、いくかの傾向が浮き彫りとなる。各地で開催された市場を合計すると、1歳馬の平均価格は前年に比べて12%ダウン。これに対して中間価格は39%アップ。すなわち、中間価格以下は堅調だったのに、高いほうが極端な不調だったというわけだ。興味深いのが、牝馬だけの平均価格はほとんど前年と変わらないのに、牡馬だけの平均をとると19%も落ちていること。牝馬ならば、競走成績はなくとも将来は繁殖牝馬として戦力になるが、牡馬では現役時代に成績があがらないと資金回収の見込みが立たないのは確かだ。同じ投資をするなら、少しでもリスクの少ない方に廻そうという意図が働いた結果だろう。
市場における購買者の心理は、ハイリスク・ハイリターンを避け、明らかに受け身に廻っているである。
そうした心理が、来季の種付け料にもはっきりと反映されているのである。
まだ、すべての種牡馬の種付け料が出揃ったわけではないが、概算では2003年の種付け料の平均額は前年に比べて10%近く下落することが確実の情勢となっている。
そして、こちらもイヤリングマーケット同様、高い価格帯の種牡馬が種付け料を下げざるを得ない状況となっている。具体的には、2002年には6桁の10万ドルを超えた種牡馬が18頭いたのに対し、2003年はこれが11頭に減少する見通しなのだ。
差し引きマイナス7頭だが、その中身は、10万ドルから脱落した馬が3頭、新たに10万ドル以上に上がった馬が1頭、死亡した馬が5頭となっている。
脱落組は12万5千ドルが7万5千ドルになるポイントギヴン、10万ドルが8万ドルになるラーヒイ、10万ドルが7万5千ドルになるシアトリカル。
唯一の昇格組が、7万5千ドルが10万ドルになるアンブライドルズソング。
そしてこの年の間に死亡したのが、シアトルスルー、アンブライドルド、クリスエス、セイントバラード、ヌレイエフの5頭である。
イヤリングマーケット下落の要因の1つに、高値で産駒が売れる大物種牡馬が減ってきたことが挙げられているが、まさにそんな現状を如実に表していると言えよう。
ちなみに、アメリカで最も種付け料が高いのは2003年も変わらずストームキャットで、価格も前年と同じ50万ドル。びっくりするような値段だが、2002年のイヤリングの平均購買価格が97万ドルだから、これでも充分に元がとれる計算だ。
以下、30万ドルのエーピーインディー、25万ドルのダンジグと続いている。