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日高軽種馬生産緊急対策懇談会

  • 2002年12月02日(月) 19時53分
 11月30日、不況に喘ぐ生産地(とりわけ日高地方)の現状を把握し、当面必要な緊急対策を検討するための懇談会が浦河町で開催された。

 出席者は日高管内各町の町長や農協、生産者、中央競馬会日高育成牧場、日本軽種馬協会静内種馬場など関連団体から総勢30余名。そして、はるばる東京より農林水産省生産局畜産部競馬監督課の課長と課長補佐もこの懇談会に加わった。

 地元の声を国や関係機関に訴えて緊急対策の支援を要請するというのがこの懇談会の最終目的である。

 生産地の厳しい現状を把握するために北海道日高支庁が作成した「軽種馬生産を巡る現状」と題する資料が出席者に配布されたのだが、改めてこれを見ると、我々生産者を取り巻く状況が厳しさを増していることを思い知らされる。

 資料は、「軽種馬の飼養・生産動向」に関する部分から始まっている。これによれば、全国の軽種馬生産戸数は、昭和47年の3413戸をピークに減少の一途をたどり、平成12年度には1517戸まで激減している。日高の場合は昭和49年1810戸あった飼養戸数が平成12年には1153戸となっている。これまでの約30年間(1970年代から現在まで)は、ちょうど競馬が盛り上がってきて頂点を極めた時代と言えるのだが、この良かった時代にも、確実に生産牧場の淘汰は進行していたことが伺える。

 生産頭数はアラ系の大幅な激減に伴い、日高ではアラブ種からサラブレッドに切り替える例も多く、全体としてサラブレッドの生産頭数は平成11年度からむしろ微増傾向という。その一方で、飼養形態としては預託や仔分けなどの比率が下がり、自己繁殖馬が増えつつあるともいう。

 馬主の経済状況が悪化しているため、繁殖牝馬を手離さざるを得なくなっている例が少なくないのである。

 生産者の自己馬の所有割合が増えると、その分だけリスクは大きくなる。昨今の不況は、主としてこのあたりに大きな要因がある。

 資料は中央と地方を巡る現状についても簡単に触れており、中でも興味深いのはそれぞれの馬主数の推移だ。中央、地方共に個人馬主の減少傾向が顕著で、とりわけ地方競馬の主催者によっては、馬主の確保(それはすなわち在厩馬の確保でもある)に苦慮しているところもあると指摘している。

 生産地の不況は、この双方がいわばセットになって襲いかかってきていることによるものだ。今年の暮れには、おそらく1歳馬の売れ残りが1000頭に達するという推測がある。サラブレッドの生産頭数は横ばいか、むしろアラ系の生産頭数減少により微増の傾向にあることはすでに書いた。にもかかわらず、馬を買い求める人の数が減少しているのだから、必然的に馬は売れ残ることになるのである。

 先週は、日高でも最大手の一軒として知られた早田牧場の自己破産のニュースが流れた。原因はいろいろあるのだろうが、つまるところ資金繰りが悪化したための自己破産であり、その背景には、生産地を取り巻く厳しい現実がある。

 「緊急対策懇談会」がどんな結論を出そうとも、結局は、何らかの形での「資金援助」しか、当面の支援策は考えられない。だが、これとて根本的な問題解決には程遠く、所詮は一時しのぎである。そして、「早田牧場自己破産余波」ともいうべき影響が今後年末にかけてあちこちに噴出してくるだろうとの噂で持ち切りである。今の日高はこの種の話題に事欠かない。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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