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エスプリシーズの逆襲

  • 2002年12月09日(月) 18時43分
 12月4日船橋「東京湾カップ」。エスプリシーズが久々の快走で初重賞制覇を飾った。昼過ぎから本降りの冷たい雨。にわかに軽くなった馬場で、少しペースは速かったが(1000m通過60秒0)、その4〜5番手を楽々と追走し、直線あと1ハロン、GOサインとともに弾けるような伸びをみせた。「初めて乗った馬だけど、道中ずっとスムーズで追ってからの反応もよかった。走るねえ…」と森下騎手。なるほど4コーナー外から3番手に上がり、そこで彼は後ろをちらりと振り返る余裕があった。ゴール前はポーズを決めてフィニッシュだからまさしく楽勝。春シーズン、羽田盃、東京ダービーとこの馬をイチ推しにしながら結果が出ず、今回△しかつけられなかった筆者にとっては少し複雑。ともあれ今日の競馬ができれば、能力の高さは証明された。夏から秋、思い切りよく休養(放牧)させた陣営の英断、その勝利ともいえるだろう。

東京湾カップ(サラ3歳、別定、南関東G3、1800m重)

△(1)エスプリシーズ  (56・森下)  1分52秒0
▲(2)ヒミツヘイキ   (58・左海)  2.1/2
○(3)エポドス     (55・石崎隆) 2
 (4)ネオオイスター  (55・佐藤隆) 3
◎(5)ジェネスアリダー (59・桑島)  首
…………………………………………
△(6)ウエノマルクン  (55・的場直)
△(10)アルスパルパドー (56・早田)

単1190円 馬複2020円 馬単4530円
3連複1260円 3連単12360円

 エスプリシーズは、2歳時デビュー3連勝、明けて京浜盃2着。時計、レースぶりともインパクトが強く、当時クラシック最有力の評価が当然だった。が、本番で意外な失速。今思えばゲート入りに手こずるシーンも目立ち、それは馬が覚えた“ストレス”だったと推測する。今回5ヶ月の充電を経て、TRベイシティカップ(4着)から叩き2戦目。プラス11キロながら馬体の“線”など、これまでになくシャープにみえた。ひとつ転機をつかみまだまだ成長すると考えたい。この先順調なら2003年は統一Gで勝ち負け可能な役者になる。

 ヒミツヘイキは4コーナー激しい先行争いからいったん抜け出し、ようやく本来の地力をみせた。「まだ本物ではないけど走る気力は戻ってきた」と左海騎手。あの府中ユニコーンSの激走はもちろん幻で終わらせたくない。マキシムの能力はわかっている。どうしたらその気になってくれるか、そこが現場の悩みでもある。エポドスはハイペースを読んで中団から。直線インを突いた判断も正解だったが、最後案外伸びを欠いた。重賞初挑戦で3着だから凡走ともいえまいが、改めてじっくり見たパドックの印象は全体にコロリと丸みをおびた短距離体型。いずれにせよ真の評価は先送りだろう。ジェネスアリダーは出遅れを向正面から徐々に追い上げ、直線いったん前を射程圏に入れたがそこまで。ズバ抜けた能力はないだけに、結果道悪の59キロが厳しかった。

        ☆     ☆     ☆

 今回の船橋はダブル重賞。翌5日に、2歳馬の登竜門「平和賞」が行われた。25日川崎統一G2「全日本2歳優駿」に直結する顔ぶれ。続々と押し寄せる北海道移籍組=南関東の力関係も、ここで一つ答が出る。

平和賞(サラ2歳、定量、南関東G3、1600m重)

▲(1)グリンゼファー   (54・内田博) 1分40秒8
○(2)ブラックドンカルロ (54・今野)  1/2
◎(3)ステルステクニック (54・石崎隆) 首
 (4)アウトオブザタッチ (54・的場文) 1.1/2
△(5)ムギワラボウシ   (53・酒井)  1
…………………………………………………
△(6)キタノアロー    (54・山田信)
△(9)ナチュラルナイン  (54・佐藤隆)

単790円 馬複1240円 馬単2660円
3連複630円 3連単6930円

 グリンゼファーがゴール前の接戦を制し、初重賞を手にした。道悪の高速馬場を3〜4コーナーから早めに動き、直線息の長い末脚。デビュー戦(1着)以来2度目のコンビを組んだ内田博騎手の果敢なプレーがまず勝因。ハイセイコー記念3着、鎌倉記念6着、やや底を打ったイメージもあったが、父ヤマニンゼファー、うまくエンジンがかかればさすがの勝負強さを秘めている。ただ相変わらず細く写る馬体で、昇り目となると正直厳しい。次走「全日本2歳優駿」は相手しだい、脚の使いどころしだいだろう。

 インから迫ったブラックドンカルロは、道営時ローズパレードと好勝負を演じた馬で、今日の内容がそのまま力通り。父プレザントの大型馬。やや器用さには欠けるが、追い通しで伸びるパワーに特徴がある。ステルステクニックは直線入口、いったん先頭に立ったが、追い較べで鋭さを欠いた。ごく普通に考えてキャリアの問題。東京湾Cのエポドス同様、現状はやはり期待と夢が先行していたか。いずれにせよ、現在の南関東2歳馬では、鎌倉記念勝ちパレガルニエが1頭飛び抜けた存在。せんもない話だが、これが牝馬というところが何とも惜しい。

       ☆     ☆     ☆

ファーストレディー賞(大井12月11日、サラ3歳上牝馬、別定、1790m)

◎ジーナフォンテン  (57・張田)
○ネームヴァリュー  (57・佐藤隆)
▲スターオブブリッジ (54・森下)
△ラヴァリーフリッグ (57・石崎隆)
△ナミ        (57・的場文)
△メイプルベガ    (57・内田博)
△ベルモントスピネル (53・左海)

 ジーナフォンテンの前走クイーン賞は、文字通り負けて強しの2着だった。夏場を充電にあて3ヶ月のブランク。14キロ増で道中反応が遅れたが、直線エンジンかかってからは強烈に伸びている。マイペースのビーポジティヴに3.1/2馬身差ながら完敗の印象はいっさいない。上山から転入後、前々走「スパーキングLC・統一G3」制覇を含め[5-2-0-1]。ひとこと天井知らずの充実ぶりで、サバイバルの激戦に強いイメージ。大井コースは1戦1勝、ストロングゲットを一蹴している。陣営は早くからここ目標を明言していた。

 ネームヴァリューは前走京成盃グランドマイラーズでスプリングシオン、ベルモントアクターを完封。JRA時を含め初ダートだから価値がある。素直に◎という手も当然で、あとは大井コースにフィーリングが合うかどうか、目にみえない問題だけ。南関東3歳馬の比較は、無欲でカウンターを狙えるスターオブブリッジを上にみた。3キロもらって54キロなら、関東オークス、サクラヴィクトリアの2着からも狙いが立つ。休み明けナミは常識的に厳しいが、能力互角で仕上がり早。鞍上がこだわって乗ることに救いがあるか。以下、順調の強みでメイプルベガ、ひと叩きしたベルモントスピネル。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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