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種牡馬シンジケート総会

  • 2002年12月09日(月) 19時52分
 毎年11月末から12月初めにかけて、種牡馬シンジケートの総会が開催される。先日は、社台スタリオン関係の各総会が行われ、私が唯一加入している「メジロマックイーン会」もこの日実施された。

 通常、特に問題がなければ所用時間はわずか20分か30分で終る。総会は、まず今年度の種付け頭数や受胎馬の状況などについての説明が行われ、続いて収支決算報告となる。

 わがマックイーンは、今年度81頭に種付けをして、55頭が受胎した。不受胎馬は17頭。残りの9頭は配合変更馬である。

 配合変更とは、文字通り種付けシーズン中に、種牡馬を変更してしまうことで、種付け料の「受胎確認後の支払い」が一般的になった最近は、こういうケースも決して珍しくはなくなった。端的に言えば、この9頭はマックイーンに見切りをつけて他の種牡馬に「乗り換えた」馬たちなのである。

 それにしても81頭という頭数はやや少ない。種牡馬の人気は、つまるところ産駒の競走成績で決まる。マックイーンの場合、初年度産駒でエイダイクイン(クィーンC)とメジロシャープ(日経新春杯3着)が出た後は、少しずつ競走成績が下降線を描き始め、とりわけ現3歳世代の成績不振が響いたかも知れない。

 この現3歳世代は合計102頭が血統登録しているが、中央・地方合わせて88頭が出走し、46頭が勝ち馬となっているとはいえ、大物がいなかったために、アーニング・インデックス(出走馬1頭あたりの平均賞金獲得額を指数にしたもの。1,00が平均)は0,62に終った。(11月24日現在)

 あくまでこれは中央・地方を合わせた数字なので、中央だけに限って言えば0,34と、かなり平均を下回る結果である。

 なお、来年の種付け料は、受胎確認後70万円、産駒誕生後で100万円に決定し、合わせて、シンジケート会員は、1株あたり10万円ずつの「負担金」を拠出することとなった。本来はシンジケート会員以外の種付け料収入(余勢株)が多ければこうはならないのだが、やむを得ないところだろう。

 ところで、同じシンジケートでも、トップクラスの種牡馬成績を誇る馬たちの総会は、大変な金額の配当収入が見込める。例えば、今年亡くなってしまったがサンデーサイレンスなどの配当金は、ものすごい金額だったはずだ。それに次いで、高い配当金を稼ぎ出した筈のブライアンズタイムは、周知の通り、早田牧場自己破産の余波を受け、シンジケート事務局のCBサービスまで自己破産となって、現在、7億円とも8億円とも言われる余勢株売却の収入が行方不明になっていると聞く。

 ブライアンズタイムの今年度の種付け頭数は156頭。種付け料は先払いで、不受胎でも返還しないという条件だったにもかかわらず、今年は社台スタリオンで相次いだ種牡馬のアクシデントの影響からかなり種付け頭数が増えたという。60株でシェアする場合、残りの96頭が余勢株での種付けだ。1株750万円だったとも聞いているので、やはり単純に掛け算をすると、7億円を超える金額になる。これがなくなってしまっているというのである。

 ブライアンズタイム会では、損害賠償を請求する方向で動いているという。あるシンジケート会員によれば、「明らかに早田光一郎氏によって不正流用されたか、着服されたかそのどちらかだ」ということらしいので、果して11日のシンジケート総会でどのような結論が出るものか注目したい。なお、1株あたりの配当金はほぼ1000万円程度はあったものと思われる。会員は、配当金を受け取るどころか逆に、種牡馬保険の保険料を全員で負担させられることになる(毎年この時期に更新する1年間の保険。掛け率は約3%)と頭を抱えている。その金額も「数千万円単位」に上るらしい。

 数億円の現金が預金口座から消えていたということで、今度は刑事事件に発展する可能性が出てきたのだが、とにかく金額が大きすぎて何だかピンと来ないくらいの話である。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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