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マイルCSに欧州の強豪牝馬が2頭出走

  • 2011年11月16日(水) 12時00分
 スノウフェアリー(牝4、父インティカブ)の豪脚が今年も唸った京都競馬場に、今週も欧州を本拠地とする牝馬が2頭登場する。スノウフェアリーが鉈の切れ味をもつ末脚の持ち主なら、今週登場する2頭はいずれもかみそりの切れ味を持つ馬たちである。

 1頭は、これが3年連続のマイルCS出走となるサプレサ(牝6、父サーム)だ。一昨年がカンパニーに1馬身差の3着、昨年がエーシンフォワードから首+鼻+鼻の4着だから、京都コースの適性は証明済みで、遠征による環境の変化にも充分に対応出来る馬であることも実証されている。

 6歳を迎えた今季のサプレサだが、力の衰えは全く見えず、相変わらず欧州マイル路線の安定勢力として君臨している。

 緒戦が6月というのは前年と同様だった。昨年はロイヤルアスコットのG2ウィンザーフォレストS(芝8F)に出て8着と大敗した同馬だが、今年はロンシャンのG3パレロワヤル賞(芝1400m)に出走し、その後ドーヴィルのG1モーリスドゲスト賞(芝1300m)を勝つムーンライトクラウド(牝3、父インヴィンシブルスピリット)に1馬身半差をつけて、きっちりとシーズン緒戦をモノにしている。

 続いて7月にニューマーケットで行われた牝馬限定G1ファルマスS(芝8F)に駒を進めたサプレサ。いつものように後方待機から、ゴール前で猛然と追い込んだものの、単勝17倍の伏兵タイムピース(牝4、父ザミンダー)を捉えきれずに2着に惜敗した。スローペースになって先行馬を捕まえきれないという、サプレサの負けパターンに嵌った形となったわけだが、鞍上クリストフ・ルメールの仕掛けが遅すぎたことも確かだった。現在ではすっかり復調したものの、今季前半のルメールは調子が今ひとつで、判断の悪さから勝てる競馬を落とす場面が少なからず見られた。

 サプレサの次走は、ドーヴィルの牝馬限定G1ロスチャイルド賞(芝1600m)で、ここも良く追い込んだものの、またも2着に惜敗。ただし勝ち馬はこれが通算14個目のG1勝利となったゴールディコーヴァ(牝6、父アナバー)だったから、相手が悪かったとも言える敗戦だった。むしろ、2年前のこのレースでは5馬身あったゴールディコーヴァとの差が、今年は短首まで縮んでおり、次走のG1ジャックルマロワ賞に期待を抱かせる敗戦だったと言えよう。

 ところが、そのジャックルマロワ賞(芝1600m)におけるサプレサは、ゴールディコーヴァを鼻差捉えきれなかったばかりか、ゴールディコーヴァの1馬身前にこの路線の新星インモータルヴァーズがいたため、3着に敗退した。牡馬のトップマイラーたちは完全に封じ込めたのだから、決して悪い競馬をしたわけではないのだが、器用に立ち廻れぬうちに運にも見離されての3連敗となった。

 そういう意味で、サプレサにとって背水の陣となったのが、9月24日にニューマーケットで行われた牝馬限定G1サンチャリオットS(芝8F)だった。自身の3連覇がかかったこの一戦で、サプレサはスタート直後から馬群の中団に付けるという積極的な競馬を見せた。前半のペースは遅かったから、この作戦は大正解で、あと3Fからの追い比べになると、他馬とは1クラス違う末脚を繰り出し、後続に1馬身の差をつける余裕の勝利を収めた。

 タラレバは禁物を承知で書けば、こういう競馬が出来るのなら、少なくともファルマスSは楽勝していたはずだ。敗戦を教訓にして脚質に幅が出たと思えば、ファルマスSの敗戦も無駄ではなかったとも言えよう。

 来日後の調整はいたって順調の様子だ。関係者から何度もコメントが出ているように、単独での遠征だった昨年と異なり、今年はインモータルヴァーズという帯同馬がいることで、よりリラックスした状態を保てているのは心強い。そうであるならば、昨年以上のパフォーマンスをしておかしくないと見ている。

 もう1頭のインモータルヴァーズ(牝3、父ピヴォタル)は、サプレサの項目でも触れたように、フランスにおける真夏のマイル王決定戦G1ジャックルマロワ賞で、ゴールディコーヴァを破って優勝した馬である。ゴールディコーヴァに、全盛期に比べると多少の衰えが見え始めていたとは言え、同馬に1馬身という決定的な差を付けたパフォーマンスは衝撃的ですらあった。

 母が重賞入着馬で、おじにG1BCマイルをはじめG1・3勝のラストタイクーンがいる同馬は、09年のドーヴィル・イヤリングセールに上場され、46万ユーロという高値が付いたものの、主取りになった過去を持つ。

 2歳時の戦績、2戦1勝。8月にドーヴィルの条件戦(芝1400m)でデビュー勝ちを飾った後、ロンシャンのG3オマール賞(芝1600m)で2着となり、翌年のクラシック候補との評価を得て2歳シーズンを終えている。

 ところが、3歳初戦の条件戦(芝1600m)で4着に敗退すると、目標としていたG1仏1000ギニー(芝1600m)で、終始後方のまま11着に大敗。この段階では、シャンティーに多数いる3歳牝馬の1頭にすぎぬ存在であった。

 その彼女が、突然目覚めたのが、6月5日にシャンティーで行われたG2サンドリカム賞(芝1600m)だった。これまで同様、後方からの競馬となり、残り300m付近では他馬とぶつかるアクシデントに遭いながら、ゴール前で鋭く伸びて半馬身差で優勝。初めての重賞を手中にした。

 続いてインモータルヴァーズは、中11日というきついローテーションで、ロイヤルアスコットのG1コロネーションS(芝8F)に挑戦。初遠征というハードルも難なくクリアして、2.1/4馬身差の快勝を演じG1初制覇を成し遂げた。

 そして次走が、前述したG1ジャックルマロワ賞だったのだ。道中は後方に控え、スタンド寄りを桁違いの脚を見せて抜け出しG1連覇を果たしたインモータルヴァーズ。それは、マイル路線の新旧交代を強く印象づけるもので、少なくとも牝馬同士であればこの馬の天下が訪れたと、見た者の多くが納得させられたパフォーマンスだった。

 その後ひと息入れて、インモータルヴァーズの今季6戦目となったのが、10月15日にアスコットで行われたG1クイーンエリザベス2世S(芝8F)だった。

 当初は、9月11日にロンシャンで行われたG1ムーラン賞(芝1600m)に出走を予定していたのだが、調教中に交突(後肢で前肢を蹴ることで起こる負傷)を起こして出走を回避。改めて矛先を向けることになったのが、怪物フランケルが待ち受けるブリティッシュ・チャンピオンズデイのG1だった。

 結果は、3着。フランケルに歯が立たなかったのはともかくとして、同じ3歳世代のエクセレブレーション(牡3、父エクシードアンドエクセル)に3.1/2馬身もの遅れをとったのは、交突で11日間にわたって調教を休んだ影響であろう。

 調子さえ戻っていれば、大勢逆転が可能な能力の持ち主だけに、レースまでの調整過程と当日の気配に、充分注意を払いたいと思っている。

 シルポートが逃げて、ある程度ペースが速くなれば、ゴール前はフランス調教馬2頭の争いになる可能性もありそうだ。

▼ 合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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