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年末の明暗

  • 2003年01月06日(月) 12時16分
 12月29日大井「東京大賞典」はゴールドアリュールの完勝だった。絶好の4番枠。スタートは必ずしもよくなかったが、すぐ行き脚がついて同型を難なくさばいた。道中悠々とマイペース。パドック、返し馬、夏のJDダービーとは別馬のような落ち着きで、はたしてレースもスムーズに折り合いがついた。直後にJRAビワシンセイキ、少し離れてカネツフルーヴ。地方馬は御神本コアレスハンターが何とか先団に取りついている程度で、おおむね気押されたような雰囲気で前に行けない。1000m通過63秒2の超スロー。こうなっては一人舞台が見えてしまう。十分脚を余して4コーナー。最後ビワシンセイキが差を詰め、リージェントブラフが伸びてきたが、ひやりとさせるまでは至らない。まったく危なげない勝利だった。

東京大賞典(サラ3歳以上選定馬、定量、統一G1、2000m良)

○(1)ゴールドアリュール (55・武豊)  2分5秒6
△(2)ビワシンセイキ   (57・横山典) 1.1/2
△(3)リージェントブラフ (56・吉田豊) 2.1/2
△(4)ネームヴァリュー  (55・佐藤隆) 1.1/2
▲(5)ベルモントアクター (56・石崎隆) 1
……………………………………………………………
△(8)トーホウエンペラー (56・小林俊)
◎(9)カネツフルーヴ   (57・松永幹)

単150円 馬複740円 馬単960円
3連複1390円 3連単4090円

 2分5秒6。砂が厚めで気持ち時計のかかる馬場だったが、それにしても自身JDダービー2分4秒1、帝王賞カネツフルーヴ2分3秒7だから物足りない。何よりレースが終始平板に流れ、さあクライマックスという場面がなかった。交流2000mになって6年中最も緩いペースで、それでいて後続がなぜ動けなかったか。武豊マジックというだけでは説得力が薄い。本来力勝負に出るはずのカネツフルーヴ、トーホウエンペラーが、結果本調子になかったこと。ネームヴァリュー、ベルモントアクター以下、南関東馬がハナから大事に乗って入着狙いの競馬をしたこと。いずれにせよ“グランプリ”というには、内容の点でいかにも薄味すぎたうらみはある。

 ともあれ、ゴールドアリュールは“基礎体力”に優れた馬だ。あわやの見せ場を作った日本ダービー、その後何らためらいなくJDダービーに参戦し、期待通りの圧勝劇。以後、岩手ダービーGP、取って返した中山JCダート、与えられたスケジュールをすべて完璧にこなしている。ダートの名馬。その資格と可能性はむろん疑う余地がない。ただしこの日のレースに関しては、そう大きな収穫もなかったということ。次走「フェブラリーS」でもう一度試金石。改めてドバイへの道を試される。

 はつらつとしたレースをみせたビワシンセイキには勢いを感じるが、統一G1の安定勢力かとなるとまだ微妙。1月29日「川崎記念」へ向かうリージェントブラフは多頭数では常に混戦待ちの弱みがある。カネツフルーヴは、どうやら短いサイクルで体調が揺れるタイプか。地方馬ではインを突いて入着を果たしたベルモントアクターがひとまず“敢闘賞”だろう。トーホウエンペラーはこれで現役を引退。静内・アロースタッドで種牡馬の道を歩む。

       ☆     ☆     ☆

東京2歳優駿牝馬(大井12月30日、サラ2歳牝馬、定量、1590m良)

◎(1)パレガルニエ    (53・今野)  1分42秒0
○(2)ネイルアート    (53・御神本) 1
▲(3)ムギワラボウシ   (53・桑島)  1
△(4)エミネントプリティ (53・石崎隆) 3/4
 (5)フジケンルビー   (53・石井)  首
……………………………………………………………………………
△(7)バックドラフト   (53・的場文)
 (8)ダンシングチーフ  (53・内田博)
△ダイコーブリザード   (53・野崎) 中止(落馬)

単110円 馬複480円 馬単510円
3連複3070円 3連単4480円

 パレガルニエが一つ関門を通過した。ゲートに頭をぶつけ、突進気味のスタートで一瞬ひやり。しかしすぐ加速がつき、逃げるケージーローズの2番手で余裕十分に折り合った。道中空馬(ダイコーブリザード)に気を使うような場面もあったが、まずは無難に4コーナー。鞍上が軽く気合をつけると一瞬のうちに抜け出した。「問題ありません。何があっても動じないし最後まで脚はしっかり。相手が競ってくればもっと走れる」と、ほぼ手放しの今野騎手。直線先頭に立ち、そこから案外伸びなかったようにもみえたが、手綱をとった本人がその感触なら、むろん“ノープロブレム”なのだろう。スムーズにみえない手前の変え方、ソラを使うような仕草。1600m1分42秒0は水準にすぎないが、おそらくそれ以上の潜在能力を秘めている。事実レース後、池田調教師は「牡馬相手のクラシックも考えています」と明言した。

 道営から転入後2連勝のネイルアートがゴール前鋭く迫った。父カリスタグローリ。馬体、レースぶりから今後逆転のイメージは薄いが、大井(小林)で水が合った典型例だろう。同時に御神本騎手は“当たりのよさ”だけではなく“追ってのパンチ”も、徐々にアピールしつつある。ムギワラボウシは、パレガルニエと同日の川崎新馬戦を勝ったステイブルメイト。スケールはともかく競馬センスに優れ、一戦ごとに多彩な競馬を覚えてきた。池田厩舎は、こちらを牝馬路線に回す戦略もあるようだ。エミネントプリティ、バックドラフトの道営組は、ネイルアートに成長力で少し劣るか。実績上位ながらまったく芽の出ないダンシングチーフなど、やはり競走馬は環境の適否、順応性で、その運命が大きく変わる。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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