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リディルにニンジンやってます

  • 2011年12月20日(火) 18時00分
競馬の世界に飛び込んで30年。数々の名馬に騎乗し、さまざまなホースマンとの出会いを繰り返してきた小牧騎手。今回は、その長い年月で培われた、ジョッキーとしての、そして人間・小牧太としての、さまざまな“こだわり”をお聞きしました。

■俺って、ひょっとしたら天才!?

──今回は、小牧さんにとってのさまざまな“こだわり”についてお聞きしていきたいのですが、まず、座右の銘、あるいは好きな言葉はありますか?

小牧 座右の銘…なんでしょうねえ。好きな言葉もとくにないなぁ。ただ、僕がよく言う言葉は、「楽しく」とか「ぼちぼち」とか(笑)。

──何事も焦らずに、というのが小牧さんのスタンスなんですね。

小牧 そうですね。大きなレースではとくに、「楽しんで乗ろう」って自分に言い聞かせるというかね。若いころは、そんな余裕はありませんでしたけど。もう、いつ(馬から)下りてもおかしくない年齢になってきてるんでね。プレッシャーを楽しみながら…と思うようにしてます。自分で自分に言い聞かせると、緊張感が和らぐような。

──実際に、プレッシャーをうまくプラスの方向に転換できていますか?

小牧 んー、まず、必要以上にやる気になったらダメだなとは思ってます。いかに平常心で乗れるかが大事。余計な力が入るのは、よくないですからね。こっちの緊張が馬に絶対伝わらないように、ゲートのなかでは空を見上げてます。

──空を見上げてる…ってなんだか素敵ですね。そんなに敏感に伝わるものなんですか。

小牧 敏感です、すごく。鈍感な馬もたまにいますけどね(笑)。ジョッキーの体全体から伝わってしまうんでしょうね。逆に、最後の直線で追うときも、気持ちが伝わるからもうひと伸びしてくれる。気持ちが大事なんですよ、馬乗りって。

レース前の弱気は禁物

──気持ちが伝わったな、って思う瞬間はわかるものですか?

小牧 うん、接戦のときとかね。「あ、ダメや…」って弱気になったときは、必ず負けると思います。追い比べになったときは、ジョッキーが気持ちをずっと強く持っていかんことには、馬もへこたれますね。道中でも、声にこそ出さないけど、つねに馬としゃべってますからね。ただ、伝わらないことのほうが多いけど…(笑)。

──続いては、ユーザーからの質問なんですが、『普段、コレにはお金をかけてる!』という趣味やこだわりの物はありますか?

小牧 やっぱり自分の体かな。あんまり物には執着がないんでね。車にしても、なんでもいいなって思うし、服も…嫌いな服は着ない、っていうくらいで。物欲がないですね。

──その点、体のメンテナンスには、お金を惜しまないと。

小牧 うん、惜しまないようにしてます。関節に良さそうなサプリメントとか、ずっと飲んでます。効いてるかどうかは…わかんない(笑)。

──続いては、“馬との付き合い”で、ポリシーやこだわりはありますか?

小牧 最初に跨がるときは、必ず周りの人に癖などを聞くこと。それは基本ですね。あと、対“馬”ということでは、最初に跨がったときに、“背中を感じる”ようにしてます。どういう背中か、っていうのが、一番気になりますからね。いい馬は、跨いだ瞬間に『あ!』ってわかりますし。

──馬房での触れ合いなどは、大切にされますか?

小牧 ここ最近は、ずっとリディルにニンジンをあげてましたけどね。言うこと聞かんかったね(笑)。

──そうでしたか(笑)。では、ジョッキーとして、“これだけは譲れない”ことは?

小牧 譲れないっていうのはないですね。でも、最近思うことがあって。「俺って、馬乗りとして、ひょっとしたら天才なんちゃうか」と(笑)。どんな馬でも乗りこなすようになってきてるな、って、自分で思うんですよ。

──余裕を持って、楽しんで乗ってらっしゃるからでしょうか。

小牧 もうこの世界に入って30年ですからね。まぁ、楽しんで乗りながらも、当然勝ちたいですよ。いい馬にも乗りたい。そういう欲はあるんやけどね。

──それは、キャリアを問わず、ジョッキーなら当然の欲ですよね。では、いろいろなタイプのジョッキーを見てこられたと思うんですが、そんな小牧さんにとって、“名手”とはどういうジョッキーを指すと思いますか?

小牧 名前を挙げれば、アンカツさんやね。やるときはやる、きちっと勝ってくるっていうね。職人というか、仕事人ですかね。そういうジョッキーに僕もなりたいですね。

──続いて、競馬から少し離れまして、“食”へのこだわりを教えてください。

小牧 最近のマイブームは、おくらです。鍋に入れたり、鉄板で焼いたり。繊維が豊富なんでね。あと、唐辛子。辛い物が好きなんですよ。でも、この2つは、体重管理という意味でもよく食べてます。

──小牧さんは、ジョッキー界のなかでもグルメで有名ですものね。すごく充実した食生活を送っていらっしゃるイメージです。

小牧 充実っていうかね、夕方5時くらいになると、早く夕飯を食べたくなって(笑)。昨夜は息子とふたりで、近所の鶏料理のお店に食べに行ったんですけどね。

──ジョッキーの方は、毎日メニューは自分で考えて、それを奥さんにリクエストする方が多いと聞きます。

小牧 小牧家もそうです。メニューを考えるのは、必ず僕やね。で、作るのは奥さん。夏も冬も鍋が多いです。

──夏も鍋ですか?

小牧 はい。子供は嫌がるんですけどね、夏は(笑)。あとは鉄板焼きとか、大ざっぱな料理が多いですね。鍋にしても鉄板焼きにしても、野菜をたくさん食べられるでしょ。こだわりといえば、そこかな。とにかく野菜をたくさん食べてますね。

──では、一男一女のお子さんがいらっしゃる小牧さんですが、父親としてのこだわりは?

小牧 子育てをちゃんとしてないからなぁ(笑)。でも、唯一言えるのは、言葉ではなくて、背中を見て育ってもらいたいな、ということです。

──小牧家では、父親は恐い存在ですか?

小牧 滅多に怒らないからねぇ。一度だけ、下の男の子には、ものすごく怒ったことがあるんやけど。だから、彼のなかでは“お父さんは怒ったら恐い”存在なんじゃないかな。娘は俺のこと、恐いとは絶対に思ってないやろねぇ(笑)。

──では、人付き合いにおけるポリシーは、なにかありますか?

小牧 相手をイヤな気持ちにさせないように接すること。「これを言うたらアカンやろ」というような、人を傷つけることは絶対に言わないように。僕ね、ケンカするのが嫌いなんです。奥さんとケンカするのも嫌(笑)。

──では最後に、お酒に対するこだわりを教えてください。

小牧 何年も前から飲んでいる、おいしい芋焼酎があってね。『元老院』っていう焼酎なんですけど、いつも広島から送ってくださる方がいるんです。それをロックで飲んでますね。おいしいです。でもねえ…ロックで飲み過ぎると、翌日残るんだわ(笑)。

【次回の太論は?】
土日は競馬、平日の朝は調教……。じゃあジョッキーって、平日の午後は何をしてるの!? というわけで、次回の太論では、ファンのみなさんが意外と知らない、ジョッキーの1週間に迫ります。
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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