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ライバル

  • 2003年01月13日(月) 14時06分
 02年、南関東リーディングジョッキーは、的場文男騎手(46)が獲得した。大井所属騎手としては、昭和38年松浦備騎手(現調教師)以来、何と39年ぶりのこと。16年連続をめざす石崎隆之騎手とのシーソーゲームは、それこそ元旦から大晦日まで続き、最後は361勝対356勝。きわめてハイスコアの決着となった。

騎乗数 (1着-2着-3着・勝率・連対率)
(1)的場文男1648 (361-262-215・219・378)
(2)石崎隆之1675 (356-276-195・212・377)

 大晦日のインタビュー。的場文騎手は晴れやかというより何かを噛みしめるような表情にみえた。「今年は馬に乗っているか寝ているか、それだけの毎日。よく体が続いてくれました…」。

 年間およそ120日もの開催がある大井競馬。その所属騎手は、かねて他3場で騎乗するケースが少なく、彼本人も数年前までは「自分はあくまで大井がメイン。南関東リーディングにはこだわりません」、常にそうコメントを出していた。朝の調教も含め心身とも負担が重い。が、ここ数年一転して気持ちが変わった。そのきっかけが面白い。「子供が大きくなって家族サービスとか休む理由がないですから。頼まれれば全部乗る。いつの間にかそれが普通になりました」。結局勝負師の心理とはそういうものか。勝てば頼まれ、頼まれれば勝つ、すべての神経をその一点に集中する。過酷ではあっても、ジョッキーでいる限りそれが最も理想的な回転というしかない。

 今年彼は、川崎、浦和で石崎隆之とほぼ互角の勝ち鞍をあげ、ライバルが縦横無尽に勝ちまくる船橋でも善戦した。むろん地元大井では持ち駒がそろっている。「暇があればマッサージ。唯一楽しみは風呂上がりのビールでした」。月火にオフのあるJRAジョッキーと較べると少しせつない。ただこれは、何度となく石崎隆騎手に取材して、いつも返ってきた答とおおむね同じではある。

 的場文男VS石崎隆之。外野が見た、その騎乗技術(姿勢)をひとことでいうなら、それは“動“と“静”になるだろう。可能な限り馬を前々に進め、全能力をふり絞ろうという的場文、対してレースの流れを最大限に読み、最後の勝利をイメージする石崎隆。ボクシングでいう“ファイター”と“ボクサー”そんな違いか。

 02年、それぞれハイライトというなら、的場はフレアリングマズルで勝った「マイルグランプリ」、対して石崎はプリンシパルリバーで制した「羽田盃」が思い当たる。結局02年は“ファイター”がわずかなポイント差で勝利した、そういうこと。何度か競馬場に足を運んでいただいたファンの方ならわかると思う。どちらに肩入れするかは好みによる。突進する的場、沈着に捌く石崎。性格も対称的な2人だからこそ、今年もこのライバル対決が面白い。

 ちなみに03年は、浦和、川崎終了の1月10日現在、的場13勝(1位)、石崎隆8勝(2位)でスタートした。これに、昨年川崎リーディングを獲得した今野忠成、期待通りの天才を思わせる御神本訓史、両若手がどう迫るか。もちろんさらに戦いは熱くなる。

       ☆       ☆

東京シティ盃(大井1月15日、サラ3歳以上、別定、1390m、南関東G3)

◎ラヴァリーフリッグ (56・石崎隆)
○コアレスフィールド (58・張田)
▲ハタノアドニス   (58・内田博)
△コアレスハンター  (58・的場文)
△イエローパワー   (58・御神本)
△クールアイバー   (56・森下)
△メイプルベガ    (56・金子)

 ラヴァリーフリッグは前走ファーストレディー賞2着。ゴール際ジーナフォンテンを差し返す地力をみせた。勝ち馬ネームヴァリューは続く大賞典で地方馬最着を果たしているから、ラヴァリー自身の評価も上がる。血統、脚質はともかく、カカリ気味に前へ前へ進む気性が短〜マイル向き。このメンバーで牝馬2キロ減58も、最後の競り合いで大きな恩恵になりそうだ。イメージは道中中団に構えて一気の差し。

 コアレスフィールドは前2走、笠松サラブレッドC、園田ゴールデントロフィー、統一Gで、それぞれ2、4着と健闘した。9歳という年齢は別に短距離のスペシャリスト。先行争いを自在に捌く落ち着きが出たことからも、むしろ今がピークだろう。大賞典善戦コアレスハンターは、金盃、かちどき賞、どちらかといえば中距離の方に良績があり、もまれ込む競馬で少々不安。JRA時サウスヴィグラスに1勝しているハタノアドニス、久々に態勢万全で使えるイエローパワーに、今回より妙味があるか。以下直線勝負でクールアイバー、メイプルベガ。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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