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快速馬の再生

  • 2003年01月20日(月) 20時04分
 15日大井「東京シティ盃」。ハタノアドニスが快速馬の本領を発揮した。絶好の2番枠に恵まれ、しかも逃げ宣言のキングリファールがダッシュひと息。2番手イエローパワーは同厩舎だから、むろんそう無理はしない。3F34.4〜4F46.5秒はまず水準の流れだが、何よりすっきりした展開でプレッシャーなく走れたのがよかったのだろう。終始半馬身ほどのリードを保ち、脚を残して4コーナー。内田博騎手は、直線中ほど、後続が並んでくる前に気合を入れ、そこでいったん引き離す作戦に出た。結果的にはそれも正解。ナミ、ラヴァリーフリッグ、牝馬2頭がゴール前鋭く迫ったが、まずは危なげなく1着のゴールを切った。

東京シティ盃(サラ3歳以上、別定、南関東G3、1390m良)

▲(1)ハタノアドニス    (58・内田博) 1分25秒2
 (2)ナミ         (56・的場文) 3/4
◎(3)ラヴァリーフリッグ  (56・石崎隆) 首
○(4)コアレスフィールド  (58・張田)  3
△(5)クールアイバー    (56・森下)  1/2
……………………………………………………………………………
△(6)メイプルベガ     (56・左海)
△(9)イエローパワー    (58・御神本)

単340円 馬複2760円 馬単3700円
3連複3910円 3連単16740円

 ハタノアドニスは南関東転入6戦目で初勝利、しかしそれがいきなり重賞勝ちという快挙になった。アジュディケーティング×ヴァイスリーガルの血統、胸前と前肢が素晴らしく発達した筋骨隆々の体型からも、地方ダートで成功は納得がいく。パドックでもすべてにはつらつとして、7歳の年齢は感じさせない。「自分が乗って仕上げた馬だから今日は感慨が違います…」と高橋三郎調教師。毎朝の調教を肉眼で接していない筆者に能書きを語る資格もないが、結局“ホースマン”とはそういうものかと思い当たる。周囲はすでに半信半疑、ただし手応えは感じる、そういう馬を再生していくことが、調教師の仕事であり冥利であると。現リーディングトレーナー川島正行師も、それを積み重ねてビッグになった。能力のある馬を再生させるのは自分の天職―。正直枠順、展開の助けも大きい今回だが、ひとつ別の意味でその勝利には拍手したい。

 ただし1390m1分25秒2。昨年フレアリングマズル(24秒2)に遠く及ばず、同日C1の勝ち時計1分26秒7(ホウザングラマー)と比較しても平凡というしかない。ハタノアドニスは、なるほどかつてあのサウスヴィグラスを完封した記録があるが、相手も当時は本格化手前だった。走られてみて、あとでつける理屈というやつ。次走は2月1日、中山「根岸S」。寮馬イエローパワーも御神本騎手で臨む予定で、内田博騎手ともども両人のファイトは楽しみだが、馬の実力からすると厳しいだろう。他のレースで脈ありの馬に乗れるかどうか。

 ナミは「冬場走らない」という決めつけで評価を下げたが、どうして中身の濃い競馬をした。プラス6キロ、いつもよりパドックのイレ込みも目立たず、好位のインで理想的に末脚が温存できた。気持ち短い1390mでこの内容なら次走「TCK女王盃」につながるだろう。◎ラヴァリーフリッグは外枠で腹をくくったか思い切りがよすぎるほど前半タメた。道中はスムーズ、直線馬混みを割って猛然と伸びたが、結局わずか届かなかった。「よく走っている。運がないですね」と石崎隆騎手。仮に1番枠でも引いていたら、もう少し前々を進み直線突き抜けるイメージだったか。瞬発力身上。やはり短〜マイルがベストははっきりした。そう考えると今日を取り逃がしたのは正直痛い。

 コアレスフィールドは、元よりそうアテにならないタイプで、潜在能力はあるものの、現実に9歳の年齢を考えると走るたび評価が揺れるのも仕方ない。道中どう流れに乗るか気分優先。こと馬券的な観点からは人気のないとき、穴に一考というタイプだろう。確かに前2走統一Gを好走したが、馬自身にその“格”を当てはめる推理は、さまざまな意味で無理かとも思う。条件不利で最もいいレースをしたのがクールアイバー。明らかに忙しい1390mをまくり気味に進出したのは勢いがあればこそだろう。父ミスターシービー。本来追い込みの個性派。次走は3月5日大井「金盃」になりそうだ。

        ☆     ☆     ☆

ブルーバードカップ(船橋1月22日、サラ3歳、別定、1600m)

◎ナイキアディライト  (石崎隆)
○ブラックドンカルロ  (今野)
▲グリンゼファー    (内田博)
△アウトオブザタッチ  (的場文)
△ラビットポーズ    (田中力)
△ウツミジョーダン   (佐藤隆)
△フジケンルビー    (石井)

 ナイキアディライトはデビュー2連勝後、JRA芝に挑戦してソコソコ見せ場を作ってきた。平和賞1、2着、グリンゼファー、ブラックドンカルロのレベルが時計を含め少々疑問。03年、新星待望という観点からもここでフレッシュな期待がある。父ディアブロはデヴィルズバッグ→ヘイローと遡る新種牡馬。昨秋いきなり兵庫SC、エースインザレース、ナリタフロンテアーのワンツーを送り、鮮烈なダート適性を示した。アディライト自身、パワフルな馬体で走法も力強い。ここはおそらく徹底先行。馬券的には半信半疑の今回が狙い目とみた。実績上位馬をひとまず本線に、穴は地元2戦2勝ラビットポーズ。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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