史上7頭目の三冠馬が誕生した2011年の競馬界。三冠といえば、ちょうど10年前、小牧騎手もロードバクシンとともに、その美酒を味わいました(兵庫三冠)。今回は、2011年の競馬界全体の出来事を振り返りつつ、三冠に挑むジョッキーのプレッシャーなどもお聞きしました。
■三冠のプレッシャーより、曾和先生のほうが怖かったわ(笑)
──今回は、2011年の競馬界全体のことについていろいろとお聞きしたいのですが、まずは、史上7頭目の三冠馬が誕生しました。
小牧 そうやね。でも、もっと盛り上がってほしかったなぁ。勝ちっぷりは派手なんやけどね。
──ちょうど10年前、小牧さんもロードバクシンで園田の三冠を獲られたんですよね。三冠に挑むプレッシャーを経験されている小牧さんから見て、池添騎手とオルフェーヴルの戦いはどう映りましたか?
小牧 大変だったと思う。“強い”っていうことが証明されてからは、勝って当たり前の馬になってたからね。でも、レースではなにが起こるかわからないから。自分のちょっとしたミスで負けることもあるわけでしょう。勝って当たり前の馬に乗るっていうのは、そういうプレッシャーがきついよね。
──なるほど、そうかもしれませんね。小牧さんもそうだったんですか?
小牧 もちろん、プレッシャーはありました。でも、JRAのそれとは規模が違うからね。それに、なかなか地元の馬が勝てないと言われていた、兵庫チャンピオンシップを先に勝ってたんでね。あのレースは、まさか勝てるとは思ってなかった。だから、あとは普通に競馬をしたら勝てるやろ、という思いはありましたけど。
──たとえば、岩田さんなどは園田時代、『緊張しすぎて吐いた』なんていう逸話もありますが、小牧さんは緊張しすぎて~という思い出はありますか?
小牧 僕の場合は、とにかく曾和先生に怒られるのが嫌で、いっつも緊張してたんでね(笑)。ホントに、いつもドキドキしてました。そのおかげで、中央に来てから、プレッシャーを感じなくなったくらいやわ(笑)。
──三冠のプレッシャーより、曾和先生の存在が最強だったんですね(笑)。
小牧 そう、その通りです。もう、曾和先生が恐くて恐くて…(笑)。
──競馬界全体の出来事で、ほかに印象に残ったことはありますか?
小牧 やっぱり、売り上げが下がったことかな。それはつくづく感じました。
──ジョッキーの方も、お客さんが減っていることを実感されますか?
小牧 しますね。とくに、僕の場合は小倉で感じます。今年から、賞金もだいぶカットされるみたいやしね。そういうことを聞くと、これから大変やな…と思うね。さすがに考えます。去年は、厩舎制度の変更で人員削減もあったし、調整ルームの入り時間が遅くなったのも経費削減の一貫やしね。僕はこれまで、いい時代に騎手をやってこられたけど、これからの若い子は大変やね。
──賞金にこれだけ大きなメスが入ることは初めてですよね。ジョッキーの方も、いよいよ不景気が身に沁みてくるのでは?
小牧 僕の場合は、地方から来たからね。賞金が減ったとしても、地方に比べれば全然いいので、あまり気になりませんけど。それに、これからは減っていくんだろうな…っていうのは感じてましたし。でもホント、去年はつくづく感じましたね。
──売り上げが落ちている話など、ジョッキーの方たち同士でお話されたりするんですか?
小牧 しますよ。といっても、軽くですけどね。じゃあどうすればいいか、って言っても、難しいでしょう。だんだん馬券を買わなくなってきてるからねぇ。でもまぁ、昔が良すぎたんじゃないですか。これからは、GIだけ賞金を高くするなど、海外のようなシステムになっていくんじゃないですかね。
──昨年は、東日本大震災もありましたしね。当日は、どちらにいらっしゃいましたか?
小牧 家にいました。“あ、揺れた”と思いながらテレビを見ていたら、津波が来るとか来ないとか…。で、金曜日やったんで、いったんは調整ルームに入ったんですわ。そのあとに中止が決まってね。僕、ついつい橋口先生に「明日、お忙しいようなら手伝いますよ」って、電話をしてしまってね。今思うと、なんでしてしまったんやろね(笑)。だから、中止になったとはいえ、次の日も普通に調教してましたわ。
【ユーザーからの質問コーナー】
■年末年始は、いつもどのように過ごされていますか?
小牧 大晦日は必ず、曾和先生のお宅に家族で行ってます。これは20年以上も続いている恒例の行事ですわ。で、元旦は川西の神社に初詣に行きます。それ以外は、友達を誘って温泉に行ったり、大阪で飲んでそのまま泊まったり、実家に帰ったり。子供たちは子供たちで忙しいんで、ひとりで自由気ままに過ごしてますね。まぁ、大概は飲んだくれてる感じやね(笑)。
■今でもローズバドが一番好きな馬なのですが、あまり知られていないエピソードがあれば教えてください。
小牧 今、ローズバドの子が厩舎にいるので、今日もちょうどしゃべってたんやけど、とにかくゲートがうるさかった。僕の前に松永幹夫調教師が乗っていて、「(ゲートが)うるさいよ」とは散々聞いてたんやけど、想像以上でしたわ。小さい馬やったから、ゲートのなかで自由に動いてしまうんやね。よく出遅れたわ。
【次回の太論は?】
「小さなことで、いつも幸せを感じている」と語り、公私ともども、つねに充実ぶりが伝わってくる小牧騎手。しかし昨年は、人生で初めて経験するような悲しい出来事もありました。次回は、プライベートを中心に、小牧騎手の2011年を回顧します。