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スマートファルコンの川崎記念をラップタイムで分析

  • 2012年01月28日(土) 12時00分
 25日に行われた川崎記念。スマートファルコンの勝ちっぷりは鮮やかでした。2分10秒7という驚異的なレコードタイムのおまけ付き。これがどのようにして叩き出されたのか。ちょっと興味が沸いたので、過去5年(07〜11年)の同レースと比較しながら考えてみました。

 今回のスマートファルコンがマークした200mごと(スタート直後は100m)のラップは以下のとおりです。

6.7-11.3-12.0-12.9-12.1-12.6-13.2-11.4-12.6-13.0-12.9

 スタートして100mまでのタイムは、過去5年で最速だった08、09年の6.9秒を上回るもの。あのロケットスタートは効きました。

 08〜11年のレースでは、7つめのラップ(スタート〜残り800m地点)までの間に14秒台が1つ、13秒台が2つありました。しかし今回は、13.2(残り1000〜800m)というのが1つだけ。これは、アジュディミツオーの逃げをヴァーミリアンが捕まえて勝った07年のレース以来のことです。

 その07年は、残り1000〜800mで13.8がマークされた後、ゴールまで12.3-13.3-13.0-12.6というラップが刻まれていました。一方、今回のスマートファルコンは、13.2の後が11.4-12.6-13.0-12.9。残り800〜400m地点での速さが際立っています。

 つまり、スタートしてから1コーナーに入るまでの前半900mを、ほとんどよどみのないペースで逃げ、1〜2コーナーでも極端にはペースを落とさなかったにもかかわらず、2周目の向正面(フリオーソが迫ってきたところ)でグンと加速して、その勢いで3コーナーに突っ込んでいった。それでも、ゴール前でバッタリになることなく、余裕を持って駆け抜けた。その結果が、レコードタイムに結びついたわけです。

 ちなみに、08〜11年の残り600mからのタイムは36.5〜37.7秒。今回は38.5秒ですから、ちょっとかかっちゃいました。ただ、勝負は直線に向いた時にすでに決まっていましたから、これは仕方のないところでしょう。

 今回のレコードタイム樹立には、向正面でのフリオーソの追撃が貢献しているように思えてきます。川崎を熟知しているフリオーソの戸崎騎手がスマートファルコンにひと泡吹かせようとするなら、あそこで動くしかないでしょう。その追撃を封じ込めるためにマークされた11.4というラップ。これが輝いて見えてくるのです。

 ドバイワールドCの主催者には、ぜひスマートファルコンを出走馬に選んでもらいたいですね。でも今回の優勝で、同馬がダートグレード競走を制した競馬場は、金沢、浦和、園田、佐賀、名古屋、門別、大井、船橋、川崎の計9場に達しました。わがままな期待を言わせてもらえば、同競走が行われている地方競馬場の全場制覇も狙ってほしいとも思っています(あとは盛岡と高知!)。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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