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グランプリの実際

  • 2003年01月27日(月) 14時41分
 一週遅れの話題になるが、1月15日、NAR(地方競馬全国協会)から「2002グランプリ表彰馬」が発表された。そのサラブレッド部門―。

最優秀2歳馬   ブラックミラージュ(北海道)
最優秀3歳馬   ヒミツヘイキ(船橋)
最優秀古馬   トーホウエンペラー(岩手)
最優秀牝馬   ネームヴァリュー(船橋)
最優秀短距離馬 アインアイン(大井)

年度代表馬   トーホウエンペラー(岩手)
特別表彰    ゴールドアリュール(JRA)

 私見を少し書かせていただく。正直なところ筆者は、毎年この「グランプリ」の発表を見るたび、何やら憂鬱な気分になってしまう。どうにもピンとこない。JRAのそれも含め「最初からコンナモノイラナイ…」が本音だろうか。

 競走馬の価値とは、その成績がすべてであり、選考やら表彰とはどだい馴染まないことが一つ。較べられないものを較べる無理で、しばしば不公平な結果になることが一つ。極論すれば、一年を全力で駆け抜けた競走馬、さらにジョッキー、厩舎スタッフに対し、これはある意味、失礼にさえ思えたりする。

 そもそもNARは、ダート統一グレードが浸透した数年前から、はっきりその成績を基準に受賞馬を決定している。統一G1不出走馬はハナから対象にすらならない。それならなぜ思わせぶりの“選考”などが必要なのか。例えばG1の勝ち馬に10点を与え、以下2着5点、3着3点…、冷静客観の“ポイント制”にでもした方がよほど自然だ。難しいことではない。来年からでもすぐできる。今のやり方のどこがヘンか。いわく恣意的なもの―地域バランスとかJRAへのおもねりとか、それが“選考”に、しばしばちらついてみえることだ。

 とはいえ“最優秀”の各馬については、PRの必要性を含めべつだん強い異議もない。ヒミツヘイキは「ユニコーンS」、アインアインは「東京盃」だけが受賞理由だが、こと3歳馬、短距離馬、その部分でのインパクトの強さ、さらに他と較べた“偏差値”の意味でまず納得のいくところだろう。昨秋に船橋転入、わずか3か月の稼動で「最優秀牝馬」といわれたネームヴァリューも、少し面はゆいが東京大賞典4着(地方馬最先着)だからうなずける。

 問題はやはり「年度代表馬」だ。トーホウエンペラー。正直筆者は「どこが?」という思いを禁じえない。この馬は02年、はたしてそれほどの仕事をしたか。地元南部杯は確かに勝った。しかしあと帝王賞5着、大賞典8着、JCダート6着。例えばトーシンブリザードは、ノボトゥルー、インテリパワー相手にかしわ記念を圧勝し、加えて02年、最もハイレベルの戦いと思えるフェブラリーSを2着、王者アグネスデジタルに、感動的なまでの末脚できわどく迫った。筆者の手前勝手、南関びいきだけではないと思う。この2頭、栄光もあり挫折もあり、ごく公平にみて「02年の仕事」は互角だ。

 各部門の“最優秀馬“はともかく、“年度代表馬”はやはりハードルが高くなって当然だろう。その資格をあえてイメージ、定義すれば、JRA、NARとも、「その年を引っ張った馬」になると思う。そう考えると、天皇賞、有馬記念を制し、しかもジャパンC3着のシンボリクリスエスが、言葉の意味ではようやく水準。トーホウエンペラーもトーシンブリザードも、次点、敢闘賞がいっぱいの評価になる。

 ただし現実にNARグランプリ制定後“該当馬なし”の年はない。恥ずかしいほど低調な年でも、半ば無理やり“代表馬”をひねり出してきた。NARが例年なぜそこまで選出にこだわるのか理解に苦しむ。堂々と胸を張って推せる馬がいない以上、“該当馬なし”の結論が、むしろ関係者としてのプライドであり矜持ではないかと思う。年度代表馬―。いずれにせよ中途半端な結論、あまつさえおかしなヨイショなどは、たぶん真剣な地方競馬ファンの神経を逆なでする。

       ☆     ☆     ☆

川崎記念(1月29日、サラ3歳以上、別定、統一G1、2100m)

◎ジーナフォンテン  (張田)
○リージェントブラフ (吉田豊)
▲カネツフルーヴ   (松永幹)
△プリエミネンス   (柴田善)
△アッパレアッパレ  (武豊)

 連覇を狙うリージェントブラフはごく冷静にみて最有力。時計のかかる川崎コースがいいこと、展開不利の大賞典3着、例年冬場に調子を上げること。が筆者は、どこかこの馬に、いわれるほどの破壊力、切れ味を感じない。昨年は出遅れを強引に追い上げたハギノハイグレイドをインから満を持して差し返したもの。恵まれたとはいわないが、インパクト、印象とすると、自ら動いてねじ伏せる、ホクトベガを筆頭とするいわくダートの一流馬とはかなり開きがあるとイメージした。JCダート2着は、底力というより前崩れの展開が大きいだろう。

 一発長打はジーナフォンテン。統一Gは相手の軽いスパーキングレディカップ1勝だけだが、当時スタートミスを外からまくり、時計、着差以上の凄みがあった。本来条件がいいはずの大井「TCK女王盃」を見送ってここ挑戦は左回りの適性を含めたもの。どのみちスロー、しかも自身人気薄なら思い切ったまくりが打てる。川崎2100mとは、おおむねそんなレースができた馬に意外なチャンスがめぐってくる。

 カネツフルーヴは、母ロジータの故郷という夢舞台。いい競馬をしてほしいし、むろん力の裏付けもあるが、前走大賞典を見せられるとやはり半信半疑。体調の振幅が大きく、同時に気分屋という面が残っているか。直前の追い切りなど、ひとまず気配優先だろう。昨夏マーキュリーC(盛岡2000m)を圧勝しているプリエミネンスは、多少下り坂としてもその評価を落とせない。アッパレアッパレは、前走名古屋GPの勝ちっぷりにいかにも昇り馬らしい勢いがあった。長めの中距離がおそらくベスト。ただし武豊騎乗、人気を天秤にかけると馬券的には少し迷う。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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