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園田競馬場でのナイター開催

  • 2012年02月18日(土) 12時00分
 兵庫・園田競馬場が今秋からのナイター開催実施へ向けて態勢を整えつつあります。

 14日には、同競馬場を運営する兵庫県競馬組合の定例議会で、照明の設置費用などを盛り込んだ平成24年度の予算案が可決されました。計画どおりにいけば、9月以降の毎週金曜日にナイター競馬を実施するそうです。

 計画どおりにいけば、という但し書きを付けたのには訳があります。ナイター実施に対する周辺住民の同意が、まだ完全には得られていないからです。

 ナイター反対派は、治安の悪化を懸念しています。大井や川崎などでナイター競馬が当たり前に行われているのに、何を今さら、といわれるかもしれません。しかし、園田の場合、1970年代に起きた騒じょう事件の“後遺症”がいまだに残っていて、ひとたび何かが起きれば、それをきっかけに周辺住民の反感が一気に高まり、競馬が廃止に追い込まれてしまう恐れを抱え続けているとのこと。それだけに、ナイター実施へ向けても、周辺住民の理解をどれだけ得られるかが課題となっています。

 今回の予算案可決を報じた神戸新聞の記事にも、「ナイター実施に向け足がかりができたが、工事に着手できるめどが付いただけ。今後も、一人でも多くの住民の理解を得られるよう努力を続けていく」という管理者のコメントが載っていました。

 さらに、計画どおりにナイターが実施できたとしても、それですべてがうまくいく、ということにはならないでしょう。ナイター開催の金曜日にどれだけのファンを競馬場に呼び込めるか。ハッキリ言って、今の施設にナイター照明を設置しただけでは、大きな期待はかけられないと思います。

 大阪・梅田周辺からは電車と送迎バスで20分ほどで行ける園田競馬場。新宿や渋谷あたりから大井に行くよりも便利です。この地の利を生かして、もっと多くのお客さんに来てもらうためには、大井がやったような、都会的な競馬場への変身がどうしても必要です。

 今の園田は、どこからどうやって見ても、数十年前にあった地方競馬場そのもの。私はそれで居心地がいいと思ってしまいますが、JR大阪駅周辺の変貌ぶりを目の当たりにしている人たちからすれば、近寄りがたいほどの古さを感じてしまうでしょう。そこをなんとかしなければ…。

 昔の競馬場はこんなふうだったのか、という部分を残しておいてもいいと思います。大井や川崎にもそういうところがありますし、全面改修は無理ですから。それはそれとして、カップル専用の特観席や会社の仲間とパーティを楽しみながら観戦できるスペースなどは、ぜひ作ってほしいですね。もちろん、それだけでいいというわけではないですよ。

 競馬場をリニューアルしてイメージアップを図るのも、治安対策につながるはず。ナイターを始める前にもできることです。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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