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震災から1年

  • 2012年03月10日(土) 12時00分
 東日本大震災から丸1年。このところの報道を見ていると、「まだ1年しか経っていないのに、よくぞここまで立ち直ったものだ」と感心する部分と、「復興への歩みが始まったと言えるのかどうか。課題は山積のまま。まだまだ大変だ」と思ってしまう部分とが交錯して、複雑な気持ちになります。

 1年前にも思ったことですが、厳しい状況に置かれている方々に対して、軽々しく「頑張りましょう」と言うのもはばかられるし、だからといって他にふさわしい言葉は見つからないし・・・。そこもまた、気持ちを複雑にさせている要因かもしれません。

 幸いにも仕事が与えられている者としては、粛々と日々の仕事をこなしつつ、雀の涙ほどではあっても経済活動に貢献して、広い意味での復興支援に寄与していくしかないでしょう。

 競馬に関して言えば、立ち直りは早かったと思います。JRAの中止は1週間だけ。震災当日の大井競馬の途中から中断された南関東の地方競馬も、その後1か月足らずで再開されました。

 そして岩手。被災地の真っ直中にあって存続さえ危ぶまれたものの、5月には盛岡で新年度シーズンが開幕。さらに年末から今年初めにかけては、水沢競馬も開催できました。

 これで、来月にJRAの福島競馬が始まれば、各競馬場の開催はほぼ震災前の状態に戻るわけです。先の震災が日本の国土にもたらした被害の甚大さを考えれば、「丸1年でよくぞここまで」と言ってもよさそうです。

 でも、数年のうちにかなりの高確率で起こるとされている首都直下型の大地震が実際に起きたら、その後はいったいどんな状況になってしまうのでしょうか?

 我が身がどうなるかさえわからないのに、いろいろ取り越し苦労をするのもいかがなものか、ですよね。ただ、東京、中山と南関東の各競馬場や関東一円の場外発売施設、さらに電話・インターネット投票システムの中枢施設が長期間にわたって使用不能になってしまうことは、容易に想像できます。また、例えば美浦のトレセンは無事だったとしても、美浦と開催可能な競馬場との間で人馬を輸送するルートが各地で寸断されてしまうことも考えられます。

 そこまでの状況を引き起こす大地震ともなれば、競馬だけが小さな被害を受けただけで済むわけがありません。日本そのものが重大な危機に陥るのですから。

 とはいえ、競馬の世界でも、様々な状況を想定して、震災後をどのように立て直すかついて、準備をしておく必要があるでしょう。そういう意味でも、JRAと地方競馬の連携強化は重要だと思います。

 とにかく、考えれば考えるほど恐ろしくなる警告が様々に発せられています。「想定外」という言い訳は、もう次の大震災では通用しなくなっているのではありませんか?

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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