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母子制覇

  • 2003年02月03日(月) 14時59分
 戦い済んでウィナーズサークル。シャイなファンが多い(?)川崎競馬場としては、珍しく大きな歓声と拍手が飛びかった。「ミッキーぃ(松永幹騎手)、おめでとう!」「山本センセイ、ありがとう!」。大半が女性の声だったから、これは長い伝統と歴史を持ち、今も活発な活動を続ける「川崎競馬倶楽部」の方々かもしれない。筆者も含め地方側の人間は、交流戦ではたとえ形勢が悪くても目をつぶって地方所属馬を応援する。無償の愛か、盲目の愛か。いきおいJRA馬の勝利には、ふーんそう…。理不尽に反応が冷たくなる。しかし今回この馬は例外だった。カネツフルーヴ。言わずもがな川崎の生んだ名牝ロジータの仔である。

川崎記念(1月29日、サラ4歳以上、定量、統一G1、2100m稍重)

▲(1)カネツフルーヴ    (56・松永幹) 2分14秒8
○(2)リージェントブラフ  (56・吉田豊) 1
◎(3)ジーナフォンテン   (54・張田)  2.1/2
△(4)アッパレアッパレ   (55・武豊)  1/2
△(5)ゴールドプルーフ   (56・河端)  1/2
………………………………………………………………
△(6)プリエミネンス    (54・柴田善) 首

単480円 馬複1120円 馬単2040円
3連複7760円 3連単29190円

 カネツフルーヴは1000m通過60秒9、川崎2100mとすると前例がない大逃げだった。「とにかく気分よく走らせよう、それだけを考えた」と松永幹騎手。みるみるうち縦長の展開になり、向正面では後続を20馬身ほども離していた。上がり42秒1。とうていG1と思えないほど終いバテたが、おそらく鞍上も半信半疑、しかし何より中途半端な競馬はしたくなかったのだろう。パドックから前捌きが硬く気配ひと息。少なくとも昨春帝王賞のデキにはなかったと推測する。それでも結果を出してしまうところが、競馬(血統)の持つ不思議さ、神秘性、さらにドラマと言わざるをえない。母ロジータは平成2年、このレース圧勝を置き土産に引退した。当日川崎競馬場4万人の熱気を思い出す。フルーヴは馬体も含め雰囲気がまったく母に似ていない。淡白なレースぶり、集中力の甘さ、不満の方がむしろ大きい。が、それでいて堂々と母子制覇を果たした事実がここにある。安っぽい血統論は別にして、競馬がある意味“神々しい”と思える瞬間ではあった。

 リージェントブラフは本格派の追い込み馬。結果2着は離されすぎた不利だが、今日のところはフルーヴの気迫に負けた、その見方でいいだろう。改めてこの2頭は実力五分と感じられた。大駆けを期待したジーナフォンテン。直線入口いったん2番手に上がり、しかし最後の詰めを欠いた。確かに残念だが、「手応えが抜群だったからそこで仕掛けた。結果少し早かったかな」と張田騎手。どうしてそのチャレンジャー精神がなければ、以後も展望が暗くなる。超ハイペースをただ1頭フルーヴを負かしに動いた事実は重い。大健闘の3着だった。

 アッパレアッパレは、武豊J「強い相手とのキャリア不足…」が、そのまま結論になるだろう。いずれにせよここで1番人気は厳しかった。プリエミネンスはジーナフォンテンと前後した位置取りで直線失速。年齢も含め、そろそろ微妙な状況にさしかかっている。

       ☆     ☆     ☆

TCK女王盃(大井2月5日、サラ4歳上牝馬、別定、2000m)

◎ネームヴァリュー  (佐藤隆)
○ビーポジティブ   (武豊)
▲ナミ        (見沢)
△ラヴァリーフリッグ (石崎隆)
△キミモール     (木幡)
△オンワードセイント (勝浦)
△メイプルベガ    (内田博)

 ネームヴァリューは川崎記念にも登録。しかし相手関係などを熟慮の末ここに回った。昨秋トレード後、京成盃グランドマイラーズ、ファーストレディー賞をあっさり勝ち、前走東京大賞典も地方馬最先着を果たしている。わずか2か月の稼動で、02年NAR最優秀牝馬。地方側のふがいなさも感じるが、それはやはり個人的な偏屈というものだろう。追って味があること。あらゆる局面でたじろがないこと。ごく素直に素晴らしい牝馬と納得する。展開不問で2000mもベスト。この相手ならまず堅い中心だ。

 ビーポジティブは、昨秋船橋クイーン賞の勝ちっぷりからはホクトベガ級の期待もあった。が、福島「民友カップ」を意外な大敗。以後ぶっつけだけに計算がしづらい。ただし馬体、走法などみる限り、やはり血統通りの大物感がある。臨んでくる以上、それは背水の陣と考えたい。ナミはテン乗りの見沢騎手(的場文騎手騎乗停止)がどう捌くか。前走東京シティ盃2着、今回2000mなら本来条件は悪くない。ラヴァリーフリッグは本質的に短〜マイルベストと考えている。昨年2着オンワードセイント、順調の強みでメイプルベガという手もあるだろう。キミモールは初勝利を浦和交流戦で飾っている。きっかけをつかみ、うまく成長を遂げた典型例。前走関越Sではグラスエイコウオー、スナークレイアースを完封した。久々、初コースを割り引いても、充実度と勢いに注目できる。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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