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急行「きたぐに」の定期運転終了

  • 2012年03月17日(土) 12時00分
 17日(土)、JRグループ各社のダイヤ改正が行われました。今回の目玉は、東海道・山陽新幹線定期「のぞみ」の全列車N700系化。これにより、初代「のぞみ」の300系車両が“お役御免”となりました。

 それより何より、私にとっては、急行「きたぐに」の定期運転終了のほうが大きなニュースです。

「きたぐに」は、大阪と新潟とを結ぶ夜行急行。東京の人間にはほとんど縁のない列車でしょう。でも、だからこそ、というのと、かつて一世を風びした583系の寝台特急用電車を使用、さらにA寝台(一般のB寝台より上のクラスの寝台)車を繋いでいる急行ということで、私の“乗りたい列車ランキング”の中では上位にランクされる列車でした。

 そんな「きたぐに」に初めて乗ったのは1986年(昭和61年)の春。国内の全競馬場踏破まであと2場、新潟と三条を残すのみとなっていた時です。ちょうど大阪で野球中継の仕事があり、その直後の新潟競馬開催日に休みが取れたので、「だったら『きたぐに』に乗って見に行くか」となったわけです。

 この列車がよかったのは、上にも書いたように、急行なのに寝台特急用電車を使用している(特急並みの設備なのに特急より料金が安い)こと。それに、朝8時過ぎという都合のいい時間に新潟に到着するところでした。当時は同じ区間に寝台特急「つるぎ」が走っていましたが、こちらの新潟着は朝6時過ぎ。割高な特急料金を払って寝台に乗っても、早朝に起こされてしまうんです。「きたぐに」なら、特急と同じ仕様の寝台に安い料金で乗れてゆっくり寝られるし、新潟に着いてからの時間を持て余すこともありません。大阪から新潟競馬場へ行くのには使い勝手のいい列車でした。

 その後、上山競馬から名古屋競馬に転戦するときに、「きたぐに」に乗ったこともありました。どういうルート?と思われるかもしれませんね。当初は、上山競馬を観戦した後、奥羽線〜米坂線〜羽越線〜白新線経由で新潟にまわり「きたぐに」に乗車。翌日は大阪から地下鉄でなんばに出て近鉄特急で名古屋へ、という予定でした。ところが、上山に着いたら雪で競馬が中止になっちゃったので、急きょ宇都宮競馬観戦に切り替え、その後、東北線、両毛線、上越新幹線を乗り継いで新潟へ移動。そこから当初の予定どおりのプランに戻したんです。ついでに言うと、その時に名古屋で見たのが「ゴールドウイング賞」(94年)。翌年、中央に挑戦することになる笠松のライデンリーダーが、デビュー以来の連勝を8に伸ばしたレ ースでした。

 かつては全国各地で走っていた定期の夜行急行列車。今回のダイヤ改正で、残ったのは青森と札幌とを結ぶ「はまなす」1往復だけになってしまいました。そして、583系の夜行電車の運行もついに終了。一つの時代が終わったような気がしています。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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