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中山2000mの極意と道悪競馬の秘密

  • 2012年04月10日(火) 18時00分
今週はいよいよ牡馬クラシック第一弾・皐月賞。残念ながら、今年、小牧騎手は騎乗されませんが、過去には5回出走し、2010年には僅差の4着(ローズキングダム)という競馬もありました。そこで今回は、皐月賞の舞台となる中山2000mについて、小牧騎手の印象を直撃。また、この春繰り返された道悪競馬についても、ジョッキーならではの苦労話を語ってくれました。

■皐月賞は、とにかく枠順に左右されるね

──今年は毎週末のように雨にたたられて、トライアルは道悪ばかりでしたね。小牧さんがクラレントで参戦された弥生賞も、稍重での競馬でした。

小牧 あのレースは馬場もあったけど、中山独特の内枠有利な流れになってしまったからね。外枠は不利でしたわ。

──中山の、とくに2000mは、難しいコースですよね。小牧さんはどんなイメージを持ってらっしゃいますか?

小牧 やっぱり内が有利やね。外はどうしても振り回されるような形になる。とにかく枠順に大きく左右されるコース。ペースもすぐに落ち着くから、前が残りやすいし。

──スプリングSの1800mと皐月賞の2000m、騎乗された感覚では、どんな違いがありますか?

小牧 ん〜、あんまり変わらんと思うけど。でもまぁ、やっぱり2000mは独特なものがあるねぇ。スタートしてからコーナーまでが長いぶん、さっきも言ったけど、すぐに落ち着いて位置取りが決まって、となると、みんな大事に乗ろうとする。その点、1800mは、みんな位置を取りに行こうとするからね。


ローズキングダム

ローズキングダムは馬群を縫って4着

──向正面からの下りで、徐々に流れが速くなる感じですか?

小牧 そうそう。だから中山は1600mとかでも、3〜4コーナーで内に入ってる馬が有利なんよ。外にいたら、どうしても振り回されるから。コーナーが多いぶん、内に入れれば息が入りやすいんだけどね。

──ローズキングダムの皐月賞も、最後が横一線だっただけに、本当に位置取りの差というか(2010年・コンマ2秒差4着)。

小牧 4コーナーを回ったときは“勝てる!”って思ったんやけどねぇ。やっぱりあれも位置取りやね。でもまぁ、しょうがないなと。

──余談ですが、今年の弥生賞では、レース後のコメントを出されませんでしたよね? 小牧さんのコメントがないのは、珍しいなぁと思ったのですが。

小牧 ただ早く帰りたかっただけ(笑)。あの日は、5時半の飛行機を予約していてね。そういえば、中山から羽田まで、タクシーで30分で着いたよ。30分だよ! なんかうれしかった(笑)。

──そうだったんですか(笑)。なにかコメントをしたくない理由があったのでは…と、深読みしてしまいました。

小牧 だいたい僕は、帰るのが早いから。レースが始まる前に、すでに帰る準備をしてんねん(笑)。あの日はレースもアカンかったし、記者の人たちが集まってくる前に、サーッと帰っちゃった(笑)。

──なるほど(笑)。では今回は、改めてこの春多かった“道悪競馬”についてお聞きしたいんですが、ジョッキーはどういったところで、馬の道悪に対する巧拙を判断されるんですか?

小牧 爪の形がどうこうとかあるんやろうけど、ジョッキーはとにかく乗った感覚やね。あとは、ダートが得意な馬は、芝の道悪もこなすことが多いかな。道悪が苦手なのは、瞬発力勝負の軽い走りをする馬。レース中、バランスを崩してばっかりの馬もいるよ。

──ちょっと変な質問ですが、人間(ジョッキー)にも道悪が得意、苦手ってあるんですか?

小牧 得意とか苦手とかっていうより、道悪はみんな嫌だと思いますよ。芝の塊がすごい勢いで飛んでくるからね。あれは本当にすごいよ! 当たったら、とにかく痛い! 脳しんとうを起こしそうになることもあるくらい。だから道悪は、ダートより芝のほうがキツイ。ダートは砂やけど、芝の塊は土やからね。


小牧太

前が見えない不良馬場は苦手

──では、芝の塊に当たらないように、位置取りに気を遣ったり?

小牧 いや、それはない。だって、どこから飛んでくるのかわからないから。馬群から離れて後ろのほうにいたとしても、前からバーン!って飛んでくることもあるし。それが見えれば避けるけど、当たって初めて気づくこともあったりね。

──そんな状況でも、みなさん姿勢を変えないように乗ってらっしゃるんですよね。

小牧 まぁ、ちょっと姿勢を低くしたりするくらいは、みんなしてると思うよ。ただ、(芝の塊に)当たることを恐れてちゃ、競馬ができないからね。

──たしかにそうですね。重と不良でも違いますか?

小牧 不良になったら、前が見えない(笑)。それが一番怖いんですわ。正直、僕は苦手です。前が見えなかったら、もうどうしようもない。だからレース前に、見えるか、見えづらいかを慎重に判断して、ゴーグルを2枚重ねるようにしています。ダートは必ず2枚するね。雨が降ってたほうが、まだいいんよ。土や砂を流してくれるから。雨が降ってない状態の不良は、芝はとくにゴーグルが真っ黒けになる。本当に見えない。

──当然、馬の目にも土や砂が入ってしまうわけですよね?

小牧 そうそう。だから、馬ってすごいなって思いますよ。人間だったら、絶対に目を開けていられへん。レースが終わったら、必ずよーく目を洗ってあげてますけどね。

【ユーザーからの質問コーナー】

■いつもパドックで、園田時代の勝負服が描かれた横断幕を見かけますが、昔からのファンの方が出しているんでしょうか?

小牧 そうそう。地方時代から、あちこち交流レースに行っても、必ず横断幕を出してくれてました。かなり昔からやね。出してくれてる人も知ってんねん。空港とかでばったり会ったら、ご飯をおごったりしてね。もともとの知り合いとかではなくて、応援してくれているうちに知り合いになった感じやね。今年の弥生賞の日、その日初めて乗った7R (3歳500万・キンシザイル)を勝ったでしょ。横断幕を出してくれている人も含め、関西のよう知った顔がズラーッと応援に来てくれていて、声援がすごかったですわ(笑)。勝った馬は、浅見厩舎の馬やったんやけど、浅見先生が「小牧くん、この勝利は、なんか特別な勝利なの?」って聞いてきたほど(笑)。うれしいね、すごく。ありがたいです。

【次回の太論は?】
 今年に入り、安藤光彰騎手、菅原勲騎手が現役を引退。小牧騎手にとっても大先輩であり、ともに地方競馬の一時代を築いたおふたりです。はたして小牧騎手は、彼らの引退をどう捉えているのでしょうか──その胸の内に迫ります。
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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