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就職率100%、BTC研修修了式

  • 2012年04月18日(水) 18時00分
 去る4月13日(金)。BTCの育成調教技術者養成研修第29期生の修了式が行われた。

 昨春ここに入所し、1年間の訓練を経てこのほど晴れて修了式を迎えたのは21人。この期はついに1人も欠けることなく、全員が揃っての旅立ちとなった。ここ数年は、途中でリタイアする研修生が数名ずつ出てしまっていたのだが、なにを措いても脱落者が出なかったのはそれだけで十分誇れる。

 彼らはそれくらい辛い訓練の1年間を送る。多くが馬など触ったこともない若者たち。まして乗るなどというのは別世界の話だったはずだが、それを一から教えられ、曲がりなりにも騎乗技術者としての第一歩を踏み出せるところまで仕込まれたわけである。それぞれに感慨深い思いがあるはずだ。

修了式の騎乗供覧

修了式の騎乗供覧

これまでの成果を発揮

これまでの成果を発揮

 年間の騎乗鞍数は420鞍。ほとんど乗馬漬けの毎日である。それに学科や他の実技などが加わる。未経験者からスタートし、1年間とはいえ乗馬経験者として育つ彼らにとって、一番の晴れ舞台がこの修了式だ。

 午前10時半。BTC北に位置する800mダートコースに、教官の先導で21人が姿を現した。怪我の後遺症で常歩〜速歩のみとなる1人を除いた20人が、10人ずつのグループに分かれて輪乗りを行う。その後2列に整列して声高らかに集まった保護者や関係者の見守る中、元気よく挨拶をする。

 その後、2グループに分かれて馬場入りし、常歩から速歩へとI列縦隊で馬場を周回して行く。キャンターから徐々に速度を上げて行き、2頭併走で最終的にはハロン20秒〜18秒くらいまでスピードアップした。前夜降った雨のため、馬場はやや重のコンディション。前を行く馬が跳ね上げる水分をふくんだ砂を被りながらも、1人も落馬することなく無事に20人が供覧を終えた。

 1人ずつ馬場を出る際に「ありがとうございました」と凛々しい声で挨拶する姿を見て、涙ぐむ保護者もいた。1年間の見違えるような成長に思わず感きわまった表情の人も多かった。

29期生とご家族のみなさん

29期生とご家族のみなさん

修了証書とゼッケンが手渡される

修了証書とゼッケンが手渡される

 騎乗供覧の後、11時半からBTC診療所2階の会議室にて修了式が執り行われた。伊藤勝己・BTC理事長より修了生に修了証書とゼッケンが手渡され、29期生を代表して浅子祐貴君(25歳)が謝辞を述べた。

 浦河町長や日高振興局産業振興部長などともに祝辞を披露したJRA日高育成牧場・高松勝憲場長は「BTC教官を始め関係各位に感謝することはもちろんだが、それと同時に下手な乗り方にも耐えてくれた多くの馬たちにも感謝して頂きたい」と結んだのが印象的であった。なお、29期生も、就職率は100%で、全員が民間の育成牧場で就労することが決定している。

 今年の傾向としては、地元浦河を離れて、本州方面や胆振管内などの大手牧場に職を求める例が多く、浦河町内はわずか3人のみ。修了式にて配布された名簿を見ても、ビッグレッドファーム、社台ファーム、ノーザンファーム、下河辺牧場といった名前が並び、研修生のシビアな就職への取り組みがはっきりと表れた。

 修了生の1人は「やはり待遇面の違いがあって、地元の浦河の牧場は選ばなかった」と語った。「どうせ働くのならば、なるべくいい環境で乗りたいし、雇用条件にどうしても目が向きます」とも言う。

 人手不足の深刻な日高の育成業界だが、こうして1年間訓練を受け、調教技術者として養成されても、地元(BTC近郊)の牧場が敬遠されてしまう傾向には、なんらかの対策を講じて行かねばなるまい。

 ともあれ、ようやく彼らはスタートラインに立ったところだ。むしろこれからが本当の苦しみを味わうことになる。意のままに動かせない育成馬(1歳〜2歳の若馬)と向き合って、何度も壁を乗り越えて行かねばならない。21人の若者たちに幸多かれ、と祈らずにはいられない。

【お知らせ】
田中哲実の「生産地だより」の次回更新分は、4/26(木)公開とさせていただきます。何卒ご了承の程よろしくお願いいたします。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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