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トレーニングセールの申し込み頭数激減

  • 2003年02月17日(月) 12時20分
 このほど「ひだかトレーニングセール」(5月中旬実施予定、主催・ひだか東農協)への出場申し込み馬が明らかになった。今年は84頭だそうである。昨年が130頭の上場で47頭の売却に終った(売却率36.15%)ことから申し込み頭数が激減したのである。

 とはいえ、実際に2歳馬の売れ残りは、昨年以上に多い。まだまだ生産牧場には、売れる目途の立たない2歳馬が文字通り「ゴロゴロ」している。それらは、最終的にどこかの競馬場でデビューすることになるのかも知れないが、今のところは行き先すら決まっていない馬たちだ。

 昨年あたりまでは、1歳の暮れの段階で売れ残ると、年明けから育成牧場に移動し、初期調教を開始してトレーニングセール上場が一つの目標になっていた。一昨年までのトレーニングセールが、そんな売れ残り馬を「即戦力」として求める需要も高かったからである。それが昨年、一気に数字の落ち込みが著しくなり、とりわけ牝馬を中心にトレーニングセールへの期待感が薄れてきたのだ。

 一つは、1歳秋から2歳5月までの育成費用が大きな負担になることに原因がある。以前にも書いたことだが、だいたい毎月20万円から30万円の預託料で、6ヶ月から7ヶ月の期間預託するとして、合計120万円から200万円もの金額が飛ぶ。ところが牝馬の場合は、たとえ売れたとしても、牡馬に比べて価格が安くなり、育成費用を差し引くと完全に赤字にしかならない馬が多かったからだ。

 そしてもう一つは、トレーニングセールで売却された場合の価格の取り分を生産者と育成牧場とで予め調整し合い、いわばお互いにリスクを負う形でセールに挑む例や、ピンフッカーと呼ばれる、転売を目的にした育成業者が秋市場などで1歳馬を仕入れて半年間調教した後にトレーニングセールに上場する商売が、予想外の数字の落ち込みとなった昨年の結果から、成り立たなくなってしまっている事実もある。各育成牧場が、リスクを背負ったやり方に難色を示しはじめているのである。

 トレーニングセールバブルともいうべき好景気に湧いたのは、結局のところ三年前の話に溯る。その後地方競馬の需要が激減しはじめ、低価格の馬ではまったく生産原価さえ出なくなったことも手伝って、一様にトレーニングセール信仰が薄らいできている。もちろん、その裏には、即戦力とはいいながら思ったほど走る馬が多くないことも理由の一つとして挙げられるし、その年のうちにデビューできない馬も約三分の一程度に達する事実もあるだろう。

 そうした傾向を裏付けるように、早々とトレーニングセール上場に見切りをつけ、道営競馬の門別トレセンに生産馬を入厩させている人達もいる。認定競走を目指して、道営デビューに切り替えたのである。また、北海道に置いていたのでは馬主の目に触れる機会が少ないと判断し、本州の育成牧場に生産馬を預託している牧場もある。もちろん、最初に書いたように、何もせず、そのまま自分の牧場で飼育している2歳馬も多い。各自が、売れ残り馬を何とかしたいと思っている点は同じなのだがどうやらトレーニングセール神話はここにきてかなり崩れたと言って良さそうだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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