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ドバイゴールドCレース回顧「ひょっとして俺、コース間違えた!?」

  • 2012年05月01日(火) 18時00分
マカニビスティーで参戦したドバイゴールドCでは、まさかの“仕切り直し”を経験した小牧騎手。ユーザーからもこの出来事について、数多くの質問や感想が寄せられました。そこで、少々タイムラグはありますが、改めて、当人だけが知るあの日に起こった出来事のすべてを、じ〜っくりとお聞きします!

■ ひょっとして俺、コース間違えた!?

──4月は予想通りといいますか、ドバイでのレースについて、質問が数多く寄せられました。

小牧 ああ、ドバイね(笑)。ホンマにいい経験させてもらったわ。

「俺、コースでも間違えた!?」

「俺、コースでも間違えた!?」

──では、少々タイムラグがありますが、今回はドバイでの出来事について、いろいろお聞きしていきたいと思います。まずはユーザーからの質問で多かったのが、『先頭を走っていた小牧さんは、レースが中止されたのをどのように知ったのですか?』という質問です。

小牧 最初ね、2コーナーのところで、馬に乗った係員が両手を大きく振っていてね。そのときは「あれ? ひょっとして俺、コースでも間違えた!?」 と思って。で、チラッと後ろを見たら、みんなついてきてたから、そのまま走ってたんやけど、今度は内側を走ってた車のなかから、一生懸命僕に向かって手を振ってる人がいるねん。でも、まさか止めろって言ってるとは思わないでしょ。なにせ、そんな経験したことがないから。「なんやろ? やっぱり俺、なんかしてしまったんかなぁ」ってずーっと考えながら乗ってて。そのあとも、チラッ、チラッと後ろを見ながら乗ってたら、そのうちみんながバーッと走るのを止め出してね。その瞬間、「あ〜俺、やっぱりなんかやらかしてしまったんだ…」と思ったわ(笑)。

──ご自分のせいだと思われたんですね(笑)。

小牧 そう。だから、しばらくドキドキしてた。だって、あんな経験ないからねぇ。戻るときも、ほかのジョッキーたちは英語でワーワー喋ってたけど、僕は何を話してるのかわからへんかったし。それでも頑張ってひとりのジョッキーに片言で話しかけたんやけど、彼は首をかしげるばっかりやったから、“ま、いっか”と思って(笑)。すぐにレースをやり直すと思ったから、みんなの後ろをトコトコついて行きながら、「さっきはハナに行ったけど、次はどんなレースをしようかなぁ」なんて考えたりね。

──コースに故障した馬が横たわっていたそうですが、小牧さんからは見えなかったんですね。

小牧 うん、見えんかった。でも、戻ってくる途中で見えたんだったかな。「ああ、あれだったのか」とようやくわかってね。

マカニビスティーと小牧騎手(撮影:高橋 正和)

マカニビスティーと小牧騎手(撮影:高橋 正和)

──そもそも、スタートから少し行ったところで、後ろの馬が落馬したのは気づかれたんですか?

小牧 全然気づかんかった。僕ね、先頭に行けて嬉しかったんですわ(笑)。ハナを切りたいなぁとは思ってたんやけど、マカニビスティーは逃げたことがなかったから、まぁ無理やろうなと思ってて。でもスタートも決まって、うまいこと行くことができたもんやから、“おっ、ハナ切ってもうたな”とか思いながら、ワクワクしながら乗ってたんでね。だから、後ろでアクシデントがあったのは、全然気づかんかったね。

──マカニビスティーもすごく気持ちよさそうに走っているように見えましたが、実際に手応えはいかがだったんですか?

小牧 良かったんですわ、すごく。これはひょっとするかもな…なんて思ったほど。

──ところで、逃げた経験のないマカニビスティーで、ハナに行こうと思ったのはなぜですか?

小牧 前の日にね、時間があったので、息子とふたりで馬場を走ったんですわ。そしたら、全然使っていない馬場だから、すごく状態が良くてね。しかも、4コーナーからすごい追い風になるんですわ。走っていても、すごく楽やねん。あ、これ、前に行ったら絶対に残るな…って感覚的に思ってね。ゴールドCはしょっぱなのレースだったし、逃げられたら行くだけ行ってみようと思って、レースに臨んだんですけどね。

──矢作先生にも“逃げ宣言”をされたんですか?

小牧 いや、完全にお任せやったから。先生は、まさか逃げるとは思ってなかったでしょうね。ビックリされたんちゃいますか。

「さすがに飲めんかった…(笑)」

「さすがに飲めんかった…(笑)」

──レースをやり直すって聞いたときは、正直、どう思いました?

小牧 嫌でしたね。あれだけ走ったあとだったし、僕自身、最初のレースで気持ちがすごく高ぶってたから、緊張感がいっぺんに飛んでしまってね。だって、普通考えられへんでしょ? あそこまで走って。

──そうですよね。ところで、2回目のレースまで4、5時間あったと思うんですが、何をされてたんですか?

小牧 僕自身は、レースはもうないだろうなぁと思ってたんだけど、まだ決定ではないっていう話でね。でもとりあえず、スーツに着替えました。で、家族がいるスタンドのなかのテーブルに行ってね。“早く一杯飲みたいなぁ”と思って待ってたら、しばらくして「もう一度、レースやるよ」って知らせがきて。本当は、自分のレースが終わったら、ビールやワインを飲みながら、ゆっくり観戦しようと思ってたのに、まったく段取りが狂いましたわ(笑)。時間があったとはいえ、もう一度レースをするとなったら、さすがに飲めんかった…(笑)。

【ユーザーからの質問コーナー】
■調教で「ちょっとタイムが出過ぎた」というような記事をよく見かけますが、基本的に、時計の感覚は乗っているだけでわかるのでしょうか?

小牧 だいたいわかると思う。勘ですね。僕、昔ね、園田時代にタモリさんの番組(『ジャングルTV〜タモリの法則〜』)に出たことがあってね。「今から馬に乗って、13秒で走ります」って宣言して、その通りに走るっていう企画でね。時計の感覚に関しては、昔、かなり覚えさせられましたからねぇ。それこそ、体に染み込むまで。もちろん、間違うこともあるけどね(笑)。

──では、レースでも、1000m通過が大体どれくらいかわかったり?

小牧 いや、レースはわからん(笑)。レース中は、時計を気にして走ってないから。遅いなぁとか速いなぁとかは、もちろんわかりますけどね。それも感覚ですね。 細かい時計を意識するのは、あくまでも調教だけです。

【次回の太論は?】
 ドバイ第二弾は、2度目のレース回顧から、外国人ジョッキーとの交流、ご家族との爆笑エピソードなど、プライベートも含めた小牧騎手のドバイレポートをお届けします。
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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