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3冠なるかキャメロット

  • 2012年06月09日(土) 12時00分
 先週末、イギリスのオークスとダービーが相次いで行われ、春のクラシックシーズンが終了しました。

 今シーズンのイギリス競馬に吹き荒れたのは“エイダン・オブライエン&クールモア旋風”。同調教師が管理し、クールモアグループのジョン・マグナー氏(名義は同氏の夫人)+マイケル・テイバー氏+デリック・スミス氏が共同所有している馬が、1000ギニー、オークス、2000ギニー、ダービーをすべて制してしまったのです。

 2000ギニーとダービーに勝ったのはキャメロット(父モンジュー)。09年のシーザスターズ以来となる“2冠”制覇を果たしました。同馬の通算成績は4戦4勝。昨年7月の未勝利戦でデビュー勝ちを飾った後は、10月のレーシングポストトロフィー、今年5月の2000ギニー、今回のダービーと、G1レースだけに出走し、全部勝っちゃったわけです。

 同馬の次走はどのレースになるのか? これまでの報道によると、陣営は“3冠”制覇を強く意識しているようで、秋はセントレジャー(9月15日)に向かう可能性が高そうです。でも、そこまで休養させなければならないほど消耗していない、ということで、アイリッシュダービー(6月30日)への出走が検討されているほか、キングジョージ(7月21日)への登録も行われました。

 いずれにせよ、今後もG1レースだけを走り続けることになりそうで、デビュー戦以外は全部G1勝ちで無敗の“3冠”制覇なんていう、とんでもない記録が作られるかもしれません。

 一方、1000ギニーはホームカミングクイーンが2着馬に9馬身差をつけて圧勝、オークスはワズが2着馬をクビ差で競り落として優勝しました(どちらもガリレオ産駒)。ホームカミングクイーンは単勝約25倍、ワズは約20倍の穴馬。キャメロットが圧倒的1番人気(2000ギニー=3倍、ダービー=1.8倍)で“2冠”を制したのとは対照的です。

 ちなみに、これら4つのレースの最後に行われたダービーでは、キャメロットが2着馬に5馬身差をつけて圧勝しましたが、2着馬と3着馬は“短頭”という僅差。で、その3着馬アストロジーもオブライエン&クールモアの馬でした。つまり、もうちょっとでワンツーフィニッシュするところだったわけです。そうならなかったのは、競馬の神様が「それはやりすぎ」と思ったから、でしょうか。

 なにはともあれ、今後の注目はキャメロットの動向です。本当に“3冠”に挑戦するのかどうか。もし“3冠”を制覇すれば、1970年のニジンスキー以来、42年ぶりのこととなります。ひょっとしたら、“3冠馬”誕生のシーンが見られるのはこれが最後かも。それを見たいという方、クールモアもツイッターやフェイスブックを開設しているので、「ぜひ同馬をセントレジャーに!」と書き込んで、後押ししてみてはいかがでしょう?

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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