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ブレない騎乗『なんせ親指やね』小牧騎手一人ほろ酔いトーク(3)

  • 2012年07月17日(火) 18時00分
美しく、ブレない騎乗に定評のある小牧騎手。今回は、ユーザーからの鐙の長さに関する質問を皮切りに、話題はそんな小牧騎手の騎乗スタイルに。独特の騎乗フォームを分析するなかで、これまで語られることがなかった小牧騎手のこだわりが明らかに!

■ブレない騎乗の秘訣は“親指”!?

──今回は、ユーザーから少々マニアックな質問がきています。『ジョッキーによって、鐙の長さが違うのはなぜですか?』という質問です。

小牧 ああ、たしかにみんな違うよね。それぞれ自分に合う長さがあるからね。


鐙の長さには気を遣う

鐙の長さには気を遣う

──短くするメリット、デメリット、長くするメリット、デメリットとは?

小牧 どうなんでしょう。僕の場合は、掛かる癖のある馬に乗るときほど短くしてます。長いと騎座がブレる。短いほうが押さえやすいね。僕はね。

──長いほうが押さえやすいというジョッキーもいるということですか?

小牧 ん〜、人それぞれでしょうね。僕は、鐙が短いほうが御しやすい。

──鐙が短いほうが、騎乗自体は難しいんですよね?

小牧 一般的にはそうでしょうね。逆に、追うのに疲れるけど(笑)。でも、掛かる馬って、気がいい馬が多いからね。逆に、ダートで全然ハミを取らない馬とかは、あんまり(鐙を)短くすると、人間側が必要以上に疲れてしまって追えなくなるんでね。そういう馬のときはちょっと伸ばしたり。馬によって短くしたり伸ばしたり、いろいろ調節するし、なんせ鐙の長さはすごく気にしてますね。

──なるほど、繊細なものなんですね。個人的に小牧さんの騎乗を見ていて思うのは、鐙が短めで、膝と膝の感覚が狭いというか、膝がきれいに揃っているのが特徴のような気がするのですが。

小牧 ああ、膝は付けてるかもしれんね。秘訣っていうわけじゃないけど、長い間乗ってきて、自然に身に付いたフォームやろうね。

──それと関係があるのかどうかわかりませんが、JRAのある調教助手さんが、『小牧さんは足首の使い方がすごい』とおっしゃってましたが、そのあたりは意識されてますか?

小牧 たしかに、道中は膝をあまり付けないで、グッグッグッと足首で乗ってます。僕は、足の親指の力が強いほうがいいと思うねん。腰を入れるときも、グッとこう親指に力を入れる。乗り方にもよるんやけど、鐙を深く履いている人いるでしょ? ああいう風には僕は絶対に乗られへん。道中でガバッと奥に入ってしまったら引っ張られへんし、一生懸命直してるもん。


馬の制御に親指は重要

馬の制御に親指は重要

──足先で乗るということですか?

小牧 そうそう。人それぞれやと思うけど、ユタカくんなんかも足先で乗ってるんちゃうかな。なんせ親指やね。親指に力を入れたら、お尻の穴にも力が入って、ブレんような気がするし。

──それがあの独特なフォームにつながるわけですね。先ほど言ったように、膝が揃っていてきれいに見えるのは、親指を意識して乗ってらっしゃるからかもしれませんね。

小牧 うん、そうかもしれんね。なんせ(鐙が)ガバッと入ってしまったら、よう乗らんもんね。重心が後ろに持っていかれて、ブレるような気がするし。

──小牧さん独自のポジショニングということですね。でも、人一倍、足の力が必要なフォームのような気が。

小牧 だからかな、最近足がよう張るわ。疲れる騎乗なのかもしれんね(笑)。なるほど。そうかそうか、初めて気が付いた(笑)。

──親指が重要というのは、どなたかに教わったことなんですか?

小牧 いや、乗っているうちに自分で気が付いた。よう考えたら、僕、親指の力が強いなぁと思って。足の指、きれいにパカッと開けるよ。だから水虫になったことないし(笑)。あとは、道中も追うときもやけど、だいたい足首で抜いてるわ。なんていうか、うまく言葉で説明できんけど。

──足首の柔らかさは重要だといいますよね。

小牧 そうやね。僕は基本的に、体は硬いほうやと思うんだけど、競馬学校のころから馬に乗ったら柔らかいって言われるねん。地上では硬いんですわ(笑)。

──そういえば以前、河内調教師が、『馬は足首で御すものだ』とおっしゃってました。

小牧 なるほど。あ、僕も今日からそういう風に言うわ(笑)。

──でも今日は、小牧さんの騎乗フォームの謎がひとつ解けた気がします。ブレない秘訣は“親指”なんですね。

小牧 うん、大事なのは親指やとはいつも言ってる。JRAの若い子にも言ったことあるよ。

──でも、教えたところで、誰もが真似できることではないですよね。

小牧 そう、言ってもわからへんと思う。『(親指で)クックックってやるんや!』って言うんやけどね(笑)。馬乗りって、手取り足取り教えたところで、言われた通りには乗れへんと思うわ。結局のところ、自分で感覚をつかむしかないねん。人それぞれ、天性のものもあるし、馬に対してどういう気持ちで接しているかでも違うからね。

【次回の太論は?】
『競馬界に小牧さんを悪く言う人はいない』と評されるほど、皆に親しまれている小牧騎手。ご本人いわく『英語はしゃべれへん』とのことですが、外国人ジョッキーとも交流があるそうです。そこで次回は、仲のいい外国人ジョッキーについて、プライベートでも親交のある武豊騎手についてなど、小牧騎手の交遊録に迫ります!
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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