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バットを振ることが勝負強さへの第一歩

  • 2012年07月21日(土) 12時00分
 先週に続き、野球シーズン真っだだ中ということで、それにちなんだ話を書かせていただきます。今週は、「勝負強さ」がテーマです。

 野球で勝負強いバッターというと、チャンスに強くて、ここぞという時に高い確率でヒットやホームランを打てる選手、っていうことになりますよね。では、その勝負強さは、どういうところから生まれるんでしょうか。

 おそらく、打てる球を逃すこと(つまり“打ち損じ”)が少ない、というのが、勝負強さにつながると思うのです。

 これは、満塁で打席が回ってきたときの状況を考えればわかります。ピッチャーは、もうこれ以上ランナーを出すわけにはいきません。必ずストライクを取りに来ます。その球は、ストライクゾーンぎりぎりより、少々甘めに入る可能性のほうが高いはず。それを確実にヒットすれば、「勝負強いバッター」と言われるわけです。ところが、その球を見逃したり打ち損なったりしたら、打ち取られることのほうが多くなるでしょう。

 実は最近、満塁かどうかは別として、絶好のチャンスで打席に立ったバッターが、初球と2球目のやや甘いストライクのストレートをともに見逃し、結局三振に倒れたシーンを続けざまに見ました。そのうちの一度は実況を担当していた試合。解説者が野手出身者だったので、「なぜ手が出なかったんでしょう?」と聞いてみました。

 答えは「自分にもそういうことがありました。この場面でピッチャーがまともなストレートから入ってくるはずがない、初球は変化球だろうと考える。そこにストレート。で、2球目は、だから今度こそ次は変化球とさらに的を絞る。そこにまたストレート。これでツーストライクを取られたら、もうほとんどアウトですよ」。うーん、なるほど。

 でも逆に、チャンスで打っていたバッターをあらためて思い浮かべると、ほとんどが初球(または最初のストライク)に対してバットを振っていたような気がします。この“バットを振る”ということが、勝負強さへの第一歩なのでは?そうも思ったんです。

 馬券もそうでしょう?バッターがバットを振らなかったら当たらないのと一緒で、馬券も買わなきゃ当たりません。でも、逃げ馬を狙おうとしたときに「他から競りかけられたら」とか、追い込み馬を買おうとして「届かなかったら」とか考えていたら、買い目を決めきれなくなっちゃいますよね。とにかく「この馬は必ず来る」と信じて馬券を買うこと。まずはそれが肝心でしょう。

 あとは、狙った球の“打ち損じ”を少なくすること。せっかく「これだ」と思った軸馬が来たのに、馬券の買い方が悪くて的中を逃す、なんていうことをたびたびやっていては、「勝負強い人」にはなれませんよね。

 とは言うものの、なかなか思い切ってバットを振れない人がここにいるのですが。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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