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何とも残念なバドミントン女子ダブルス

  • 2012年08月04日(土) 12時00分
 ロンドンオリンピック、ふだん私が中継の仕事に携わっているバドミントンの女子ダブルスで、ご存知のとおり大変な事件が起きました。改めて経過をご説明しましょう。

 今大会の同種目は16ペアが参加、まずはこれを4ペアずつ4組に分け、各組上位2ペアが決勝トーナメントに進む予選リーグが行われました。あらかじめ、世界ランク上位のペアは同じグループに入らないように振り分けられたため、第1シードの中国No.1ペア=中1はA組、第2シードの中国No.2ペア=中2はD組、第3シードの韓国No.1ペア=韓1はC組に入りました。さらに、決勝トーナメントの組み合わせも以下のように決められました。準々決勝1=A組1位対C組2位、2=B組1位対D組2位、3=A組2位対C組1位、4=B組2位対D組1位。準決勝I=1勝者対2勝者、II=3勝者対4勝者。

 一大事のきっかけは、D組の中2がリーグ最終戦で敗れ2位になったこと。これにより、A組の中1は1位になると準決勝Iで中2と当たってしまう可能性が出てきました。

 で、ここからは推測。中国の目標は“金銀独占”です。そこで中1は、2位を狙って、リーグ最終戦の韓国NO2ペア(以下韓2)との全勝対決で“自滅プレー”を連発しました。ところが、中1がA組を2位、韓1がC組を1位で通過した場合、準々決勝3は中1対韓1になります。韓1にメダルの期待を寄せる韓国にとって、これは避けたいところ。両国の思惑が絡んで、中1対韓2戦は、どちらも勝ちたくない試合になったわけです。

 結局、韓2が“勝たされて”、A組は1位韓2、2位中1という順位が確定。これが今度は、C組最終戦、韓1対インドネシアペア(以下イ)の全勝対決に影響を及ぼします。勝ったほうが準々決勝3で中1と対戦する構図になってしまったからです(韓1は、負ければ準々決勝1で韓2と同士討ちになるのですが)。この試合は、イが第1ゲーム、韓1が第2、3ゲームを“取って”韓1の勝ち。C組は1位韓1、2位イとなり、イは準々決勝3での中1との対決を“回避”しました。

 この一連の“疑惑試合”に対して下された裁定は、中1、韓1、韓2、イをすべて失格にするというもの。韓1、韓2は勝ったので「わざと負けた」ことにはなりませんが、どれも“無気力試合”と判定されたようです。

 予選リーグから複数が勝ち上がり、決勝トーナメントに向かうシステムでは起こりがちな出来事。競馬にだって「ここはひと叩き。目標は次」なんていうことがありますよね。見たいのは、強豪同士が最終決戦の場でガチンコ勝負をするところ。「負けるが勝ち」の戦略が正しかったかどうかは、その結果を見ないとわかりません。今回は、手を抜いたペアの自滅ぶりがヒドすぎたので「厳罰やむなし」となったのでしょうが、世界トップクラスのプレーヤーによる頂上対決が見られなくなったのは、何とも残念だと思います。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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