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種牡馬ディープインパクトの可能性

  • 2012年09月21日(金) 12時00分
 新刊『日本最強馬〜秘められた血統』の発売の知らせを、先週の14日、当netkeiba.comのニュースで配信してもらった。すると、いきなり次のような書き込みが入った。

「この人ってディープインパクトのことを種牡馬として成功しないと言った人ですよね? そんな人に血統うんぬんと言われても説得力ないんですが(笑)」

 こちらは心外を通りこして、ただただキョトンとするばかりである。ディープインパクトが種牡馬として無限の可能性を秘めていることは、飽きるほど書いてきたつもりだ。2005年の秋、三冠馬に輝いたときから、2010年、産駒がデビューする直前まで、ギャロップ、優駿、ナンバー等の誌上、『ニッポンの名馬』(朝日新聞出版)など、さまざまな媒体に書いてきた。

 ギャロップだけでも本誌、増刊号、年鑑に4、5回は書いたように思う。引退時のギャロップ増刊号(2002年2月)には、「ディープインパクトが日本を世界最高峰の生産拠点に押し上げる可能性大」というタイトルで書いている。ために、「お前は社台(グループ)の回し者か」「広告塔か」と、何度もお叱りを受けた。しかし血統的な見地からは、そうなのだから仕方ない。

 今、ディープインパクトは確かに成功している。しかし、大きなことを言った私の期待値には届いていない。「牡馬は大したことないじゃないか」と非難されても仕方のない部分がある。

 その責任を感じて、時にグチを書いたり、注文をつけたりする。それに対する批判は甘んじて受けるが、私が「ディープインパクトは成功しないと書いた人」という誤解だけは、どうかご勘弁願いたい。そもそも私に、ディープインパクトが成功しないと公言する勇気はない。

 昨春、『血のジレンマ』を出版して以降、某所から無言の圧力がかかるようになった。それを重々承知のうえで書いたのだから一向にかまわないが、冒頭の書き込みをされた方が、純粋にディープインパクトを愛するファンであると信じたい。
日本最強馬 秘められた血統
吉沢譲治氏の新刊『日本最強馬 秘められた血統』が9/14から発売!
 netkeiba.comの人気コラム「血統が語る真実」でお馴染みの吉沢譲治氏による新書「日本最強馬 秘められた血統」が、9月14日(金)にPHP研究所から発売されました。

 圧倒的な強さで三冠を達成し、日本最強馬となったオルフェーヴル。その黄金配合として注目を集める血統「父ステイゴールド×母の父メジロマックイーン」の裏側には、かつて夢を追い求めてきたホースマンたちの思いが凝縮されている。では、日本のホースマンは、いったい何を目指し、何を夢見てきたのか。なぜ、日本馬は世界と渡り合えるようになったのか。

 本書では、海外遠征が始まったハクチカラから三冠馬オルフェーヴルまで、日本最強馬の歴史をたどりながら、日本競馬の進化とその血脈の謎を解き明かします。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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