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秋山真一郎騎手(1)『カレンブラックヒルは運動神経がいい!』

  • 2012年10月08日(月) 12時00分
今月のマンスリーゲストはカレンブラックヒルの主戦・秋山真一郎騎手。今年のNHKマイルCでついにGIジョッキーの仲間入り、GI挑戦55回目での悲願達成でした。今だから語れる「GI勝利」への思いとは。そして、最高のパートナー・カレンブラックヒルとの秋の展望を伺います。

:この春、無敗でGI馬となったカレンブラックヒルですが、管理する平田修厩舎と秋山騎手はゆかりがあるということで、新馬戦から乗られることは早くから決まっていたんですか?

秋山 :乗るのは…いつ決まったんでしたかね(笑)? 自然と決まったという感じで、それで乗せていただくことになりました。

:それくらいの間柄なんですね。最初にカレンブラックヒルを見た時の印象というのは?

おじゃ馬します!

1週前追いで「いいな」と

秋山 :ええと、、、黒い馬!

:黒い馬(笑)。

秋山 :実際に乗ってみて特に何かを感じたということは、最初はなかったんです。ただ、そのレースの1週前追い切りに乗せてもらって、その時に「ああ、いいな」と思いました。

:どのあたりでそう感じられたんですか?

秋山 :バランスです。ウッドチップコースって、状態が良くないとバランスを崩しやすいんですよ。滑ったり、のめったりすると言いますか。それが走りだしてもそういうところが一切なかったので、「ほんましっかりしてるな〜」と思いましたね。

:軽やかに脚を回していくのが上手なんですね。

秋山 :うん、たぶん運動神経がいいんでしょうね。それだけ能力を感じましたね。

:実際レースに行ってみて、レースセンスについてはどう思われましたか?

おじゃ馬します!

2戦目のこぶし賞で連勝

秋山 :1戦目も2戦目もそうなんですか、あんまり本気で走っていないような感じなのに、後続からどんどん離れていくんですよね。

:軽々と後続を離していっちゃう?

秋山 :そうそう、そういう感じです。新馬戦も、あの馬自身は力を抜いて走っていた感じなのに、まあ、2着の馬は近くにいたんですけど、その後ろが結構離れていたんです。

:突き放しているのに気が付かないくらいに速い?

秋山 :はい。なんだか勝手にスピードが出ていました。それだけ体がブレないですし、レースが終わってからもあまり“フーフー”言わないんですよね。しんどそうではないんです。

:それだけ走った後なのにですか!? 心肺能力が高いんですね。ところで、ちょっと話がそれるのですが、この新馬戦から無敗でGI制覇までつながっていくわけですが、そこに行く前にひとつの分岐点があったと伺いました。

札幌2歳Sで同じ平田厩舎のグランデッツァに騎乗されましたが、その時に須貝尚介厩舎のゴールドシップという選択もありました。どちらも新馬戦から乗ってきた馬ですし、どちらに乗るかというのは、やはり悩まれましたか?

秋山 :その時は…そうですね、悩みましたね。

:実はこのコーナーの8月に須貝調教師にご出演いただいて(インタビュアーは赤見千尋さん)、その時に須貝調教師が、秋山騎手にどちらに乗るのかを聞いたら秋山騎手が平田厩舎を選ばれたので、「その時は悔しかった」とおっしゃっていたそうです。

秋山 :あははは(笑)。そういうことです。そういうやり取りがありまして。

:でも「その平田厩舎でGIを勝てたんだから、その選択は正解だったな」ともおっしゃっていたそうです。どちらかを選ぶのは難しいことですが、今回のGIを勝つその一つのエッセンスとして、大事な選択だったんですね。

秋山 :そうですね。その時はいろんなことがありましたけど、須貝先生には本当に無理を聞いていただいて。感謝していますね。

おじゃ馬します!

前哨戦のNZTを堂々の完勝

:そうなんですね。そして、NHKマイルCの前哨戦ニュージーランドTですが、ここもゴール前で後続を突き放して圧勝。強い競馬をして、GI制覇への自信というのはかなりありましたか?

秋山 :ありましたね。デビューから2連勝した時点で、先生は「NHKマイルCが目標」っておっしゃっていたんです。でも、そのニュージーランドTで3着以内にならないと、出られるかどうか分からなかったですから、勝って一番いい形でGIに行けて良かったですね。

:そして運命のNHKマイルCを迎えるわけですが、レース直前の馬の様子はいかがでしたか?

秋山 :その前のニュージーランドTで初めて中山に行って、その時は結構イレ込んでいたんです。やっぱり、デビューから2回京都で走って初めての遠征でしたから。でも、NHKマイルCの時は、中山の時よりは落ち着いていましたね。

:状態面はいかがでしたか? 3歳の春ですし、特にここで成長したなと感じるところはありましたか?

秋山 :それはなかったです。というか、ずっと変わらないですね。新馬戦を使った時からはもちろん良くなっていると思うんですけど、乗っている感じでは特に変わってはいないです。

:ずっと淡々とした感じのタイプ?

秋山 :そうですね。調教はすごく動くんですよ。分かりやすく言ったら、出そうと思えばどんなに速い時計でも多分出せると思うんです。それで調教で走らせてきて、「いい感じやな」「いい感じだね」って、そうやってずっとここまで来ている感じです。

:何の心配もなく来られたんですか?

秋山 :ないですね。まあ、騎手は最後の競馬に乗るだけで、世話をしている厩務員さんとか調教で乗っている調教助手さんは、毎日のことですから大変だと思いますよ。

:その辺、厩舎から「今回ここが大変やった」みたいな話は聞かれますか?

秋山 :この馬に関しては特にないです。担当の方も、あまり言わないタイプの人ですね。もしかしたら並々ならぬ苦労があったのかもしれないですけど、そこは僕もあえてあまり聞かないんですよ。

:そうやって何かあっても、ちゃんと本番には安心した状態にまで持ってきてくれるということなんですね。無敗の3連勝でGIを迎えるというので、プレッシャーになった部分もあったんじゃないですか?

秋山 :いや、そういうプレッシャーはなかったですね。むしろ、今の方がプレッシャーはあります。

:今の方が負けられないという?

秋山 :それもありますけど、その当時は、同じ世代でマイル路線だったら馬の能力がだいぶ違うと思っていましたから。だから、仮に僕が少々失敗してしまったとしても、馬の能力で勝ててしまうと思っていたんです。

:それだけ信頼されていたんですか。

秋山 :そうですね。それだけ能力のある馬だから、そういう不安な要素はなかったです。(Part2へ続く)

◆次回予告
デビューから3戦無敗で臨んだGI・NHKマイルC。秋山真一郎騎手にとっては55回目のGI挑戦。1番人気で迎える負けられない戦いに、秋山騎手はどんな思いで臨んだのでしょうか。そして、GIを勝利したことで訪れた意外な変化とは。次回の公開は10/15(月)12時、お楽しみに。

◆秋山真一郎
1979年2月9日生まれ、滋賀県出身。父は秋山忠一元騎手。1997年に栗東・野村彰彦厩舎からデビュー(現在はフリー)。同期は武幸四郎、勝浦正樹ら。98年にカネトシガバナーで神戸新聞杯を制し重賞初勝利。以降、15年連続重賞勝利更新中。フェアプレー賞(関西)受賞5回。12年2月、JRA通算700勝を達成。同年のNHKマイルCをカレンブラックヒルで制し、初GI制覇を果たした。

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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